事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「卵をめぐる祖父の戦争」 デイビッド・ベニオフ著 ハヤカワミステリ

2011-09-08 | ミステリ

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卵をめぐる祖父の戦争 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ 1838)
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2010-08-06
「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」作家のデイヴィッドは、祖父のレフが戦時下に体験した冒険を取材していた。ときは一九四二年、十七歳の祖父はナチスドイツ包囲下のレニングラードに暮らしていた。軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令された彼は、饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索に従事することに。だが、この飢餓の最中、一体どこに卵なんて?

去年のミステリベストテンを眺めて、どう考えてもオレ向きだと根拠もなく確信していたので購入。当たってました。大傑作。戦時下のレニングラードにおける、飢餓と戦闘が“祖父の物語”(つまり大過去)というフィルターをとおして語られるものだから、なんか残虐で悲惨である以上にユーモラス。並の筆力じゃないな。

妙な自信家で、美男であると同時にひたすらおしゃべりなコーリャと、皮肉屋で世間知らずのユダヤ人レフ(もちろん童貞)が、なんの因果か卵をさがす羽目になり、ぶつくさいいながらドイツ軍の陣地に突入するあたり、笑いと涙が同時に襲ってくる。ドイツ軍に身を売ることで命を長らえている少女たちとの交流など、およそ平時であれば考えられないエロとグロの同居。

そして、こう来るかっ!と唸らせられるラスト。ストーリーがすばらしいのはもちろんだが、語り口のうまさが心地いい。っていうか、この激しく厳しいストーリーは、こう語るしかありえなかっただろう。

原題はCity of Thieves(泥棒の町)。その泥棒が、主人公ふたりと“国家”というもののダブルミーニングになっている仕掛けにもうなる。ネタバレだけど、実は○○の戦争でもあったというオチもふくめて、マイベスト2011確定です。

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「チャイナタウン」がわからないPART5

2011-09-08 | 洋画

Chinatownmoviestill05 PART4はこちら

イブリンがホリスの“愛人”を監禁していると考えたジェイクは、イブリンを難詰する。

「あの子は……わたしの妹なのよ」

「だからどうした」

妹に夫をとられたぐらい、と。

「あたしの、娘なのよ」

ジェイクはイブリンを平手打ちする。

「妹で、娘なのよ!」

観客はしばし呆然。どういうこと?ジェイクも同様に困惑し、そして観客とほぼ同時にその意味に気づく。

「お父さんと……無理矢理にそういうことになったのか」

イブリンは否定する。この闇は深い。作中、一度もイブリンの母、ノアの妻のことが語られていないことにようやくみんな納得。

15才のときに父親とそんな関係になったイブリンは、メキシコに家出。帰ってきても、娘であり、妹であるキャサリンと接することはできなかった。そんなイブリンとキャサリンのすべてを受け入れたのがホリスだったのである。すると、ホリスを殺したのは誰なのか。

「そのメガネは、夫のものじゃないわ」

とイブリンはつぶやく。

「だってあの人は老眼じゃないもの」

老眼鏡だったのである。とすると真犯人は

・ダム建設によって利益を得て

・ホリスとイブリンの自宅にいても不自然ではなく

・老眼

の条件をみたす人物ということになる。

しかし、その人物は金に困っているわけではない。まして娘ふたり、というか娘ひとりと孫ひとり(ややこし)を庇護してくれていた人物を殺す理由が……以下次号

Chinatown1mg06

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