事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「探偵はBARにいる」 (2011 東映)

2011-09-13 | 邦画

Tanteibarimg01_2 ハードボイルドミステリの主人公は、とにかく渋くなければならない。

だってそうでしょう?およそムダとしか思えないことにこだわり、妙にやせ我慢をし、ボディにパンチを喰らいながらもへらずグチを叩く……渋くなければ単なる阿呆にすぎない。

でも日本の場合はちょっと様相がちがっていて、単なる阿呆であればあるほどハードボイルド的に愛される。それはすべて「傷だらけの天使」の萩原健一と「探偵物語」(テレビの方ね)の松田優作のおかげ。

ビギのファッションに身をつつみ、しかしやることなすことがかっこわるい「あにきぃ」(by水谷豊)の姿と、渋すぎる成田三樹夫(酒田出身です)から「工藤ちゃあん……図にのるなよ探偵。」とすごまれてヴェスパでトンズラこいちゃう私立探偵こそが、かっこ悪いがゆえにかっこよかったのである。

東直己がつくりあげた名無しの探偵は、おそらくはその直系をめざしたものだ。サイドベンツのはいったダブルのスーツを着込み(なんて趣味だ)、携帯電話も持たず、バーのカウンターで電話を待つ便利屋。なんか渋い感じだけれど、ひと皮むけばウォシュレットじゃないトイレには入れない情けなさ。

そんな名無しを大泉洋に演じさせたアイデアは秀逸。もっとも、どんな役をキャスティングしても大泉の場合は意表をつかれた感じですけど(笑)。

おまけにコンビを組む高田役が松田優作の息子である龍平なのがうれしい。大泉が名無しなので「探偵。」と呼びかけるのね!

へらずグチの応酬が意外に少ないのと、演出の切れ味がどうも今ひとつ。でも、探偵のいるBAR、ケラーオーハタが初めて映像化され、50代の人間向けのサービスもたっぷり(ちょっと太りましたねあの人)、ネタバレになるから言えないけどキャストでちょいとしたひっかけまで用意してある。意地でも警察に頼らないあたりは原作テイストを尊重してあってこれもうれしい。

東映としても収益をあげられるのが「相棒」と「仮面ライダー」だけという現状は不安だろう。大泉と松田のラストのやり取りは本音とみた。どうかこの探偵の物語がヒットしてシリーズ化されますように。年に一度くらいは、日本人も私立探偵の映画を楽しみたいじゃないですか。

ってことでめでたく第二作につづく

コメント (4)
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