その1はこちら。
フォード社の代表としてフェラーリを訪れたのはアイアコッカ。わたしの世代にとってはクライスラーのトップとして知られていたけれど、そうかその頃はフォードにいたんだ。演じていたのはジョン・バーンサル。どっかで見た役者だなあ、と思ったら「ベイビー・ドライバー」の強盗役でした。
この映画は彼だけでなく端役にいたるまでいい役者をそろえていて
「こんなにいい女優がいたんだねえ」ケンの奥さん役に。
「あの頃とは印象が違ったわよね」妻はしみじみ。
「あの頃?」
「ブリジット・ジョーンズの日記とか」
「……違うよっ、彼女はレニー・ゼルウィガーじゃないよっ」
「そんなはずないわっ、確かに整形したらしいけど」
カトリーナ・バルフという女優です(笑)。知りませんでした。
レースの迫力もすごい。いったいどうやって撮ったんだろうというシーン続出。この迫力があったからこそ、ドラマに厚みが出たのだろう。撮影中に誰か死んでないか。
クルマ好きじゃなくても全然だいじょうぶ。わたしなんかレーシングカーに乗ったらクラッチすらつなげないはず。近所のクルマ狂いにダートロードに連れ出され、助手席で笑っちゃうほど怖かったおぼえがあるので、シェルビーの高速運転にヘンリー・フォード二世が泣き笑いする気持ちはわかったなあ。
心臓を病んだためにレーサーとして引退しなければならなかった男、他人とうまく付き合えないためにさまざまなことを犠牲にしてきた男、先代の栄光にコンプレックスを抱き、屈辱に耐える男。彼らの意地が最後に……隣では妻が号泣。わたしも泣きました。
前言撤回。マンゴールドの映画は、男だけでなく、女も泣かせる。
主役ふたりの演技はすごい。特にクリスチャン・ベイルがフランスでバスに乗っている陰鬱な表情は絶品。今年、これ以上の映画に出会えるかなあ。