近ごろの極右の方々って元気いっぱいじゃないですか。雑な論理をふりかざし、その過ちや下品さを指摘されてもびくともしない。あの神経にはおそれいる。ヘイト本の売れ行きも絶好調のようだし。
彼らの言う「サヨク」の方々は、その大声にかき消されそう。なにしろこちらは含羞というものをもっているので。
もっとイケイケなサヨクが出てこないかなあ……意外なところから出現。元銀行員でダンプの運転手に転職したイギリス人と結婚し、ブリストルで保育士をやっているというブレイディみかこ。
この本は、およそ1年間におよぶ11才の息子の子育て中に考えたことがつづられている。
タイトルは、その息子がノートの隅に落書きしていたフレーズからとられている。イエロー(日本人)であり、ホワイト(イギリス人)であり、そしてちょっとブルー(憂鬱)だと。
彼女は、あらゆる形の差別というものに敏感で、だからガーディアンのような反体制色が強い新聞でも、雑な記事には怒ったりする。冷静。日本に里帰りしたときに、日本人がやたらに「ハーフ」という言葉を使うことにも違和感も抱いている。なるほど、である。
イギリスの教育事情はまことに興味深い。私立と公立の間にある巨大な壁や、演劇が科目として成立していたり(さすがシェイクスピアとハロルド・ピンターの国だ)、シチズンシップエデュケーションなる、日本では考えられないような科目すらある。そのなかで興味深い言葉に突き当たる。
「誰かの靴を履いてみる」
これは英語の定型表現で、他人の気持ちになってみるという意味。この言葉にたどり着くまで、英国がどのようにふるまい、どのように失敗し、どのように成長したのかがうかがえる。
もっとも、EUからの離脱など、大人らしくないふるまいも目立つのが現在のイギリスなのだが。そのあたりへの考察も、ブレイディみかこは冷静なのでした。
だいたい、音楽ライター出身なので「マリアンヌ・フェイスフルのような」とか「ザ・スミスの曲のタイトルで」なんて表現がバシバシ出てくるので読んでいて楽しい。ベストセラー納得。