事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「バットマン ビギンズ」Batman Begins('05 ワーナー)

2008-04-22 | 洋画

Batmanbegins  結婚してからしばらく子どもができなかったわたしたち夫婦は、知人の薦めもあって医師の診断を受けることになった。山形大学医学部。一応何度か妊娠はしているのだし、男のわたしの方は付き添い程度の算段だったのに、いざ現場に行ったら看護婦に渡されたのはシャーレ。「とってきて」と言うのだ。何を(笑)。

 まあそれはともかく、気重な二人は時間ができたので映画でも観ようという話になる。それが、前シリーズ「バットマン」第一作。ティム・バートンが監督し、テーマソングはプリンス。悪役ジョーカーをジャック・ニコルソンが気持ちよさそうに演じた一種の祝祭のような映画だった。ここまでバカな映画があっていいのか(ほめ言葉)と驚き、そしてしあわせな気分になったことをおぼえている。憂鬱なヨーロッパ映画好きな妻でさえ、「面白かったわー」と喜んでいたぐらいだ。

 あのバットマンの、いわばアーリーデイズを映画化した今作は、当然ティム・バートンのものとは違うコンセプトで作られている。変なコスチュームを身にまとい、化け物のようなクルマでゴッサム・シティの悪に対峙するブルース・スウェインを、単なる金持ちの復讐鬼に感じさせない繊細さが脚本にあるのだ。おそらくは何人もの脚本家が知恵を絞ったのだろうが、これはこれで面白い。マイケル・ケインやモーガン・フリーマン、そして今回もいい人役ゲイリー・オールドマンなどキャストがちょっと驚くくらい豪華だし、鈍色が基調の画面も美しい。クリストファー・ノーランの演出はクールだし、主演のクリスチャン・ベールは“清潔”だ。ハリウッド大作のいい面が出ていてお得な一本。

 変な東洋人として登場するらしいので心配していた渡辺謙だったが、まともな扱いを受けていたのでホッとする。単に憎々しい悪役に過ぎなかったルトガー・ハウアー(ブレードランナーの、あのレプリカントです)より、はるかにマシなキャラだったし。だいたいさあ、日本の映画興行収入はアメリカに次いで世界第2位。フランスやイギリスの2倍はあろうかという大市場。言葉やルックスの壁があるとはいえ、もっと日本の俳優をハリウッドは起用すべきだろう。とりあえず「SAYURI」。日本には桃井かおりという核弾頭があることを知ってもらえてうれしい(笑)。

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「半島を出よ」 村上龍著 幻冬舎文庫

2008-04-22 | 本と雑誌

Hantohwodeyo 北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。その後、北朝鮮中枢の策略により、12万人の反乱軍が福岡に迫る。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟とは……。

かつて村上が激情を叩きつけるように書いた「コインロッカーベイビーズ」(傑作)「愛と幻想のファシズム」(大傑作)「五分後の世界」(それなりに読ませる)の系譜に属するポリティカルフィクション。このジャンルにおいて村上を超える作品を生み出すことはもう難しい。それは村上自身にとっても同様なはず。

「半島を出よ」(魅力的なタイトルだ)は、しかし北朝鮮という素材の奇矯さとあいまって、かなり読ませる。確かに欠点は多い。読者からはこんなメールも。

Mail03c 核となる主人公が不在の上、やたらと多い登場人物に感情移入しにくいことや、せっかくこれだけ取材・参考文献を収集したんだから全部作品に盛り込んだぞ、みたいな情報びっしり描写にはやや閉口ぎみ。

……当たってます。未消化であると同時に、危機管理がおざなりで、目前の破綻を意識しながらも改革できず、問題を先送りし続ける日本への糾弾も弱い。政治とは多数派のためだけのものなのか、という現実への怒りもどこか他人事だ。

 しかしわたしはこうも考える。北朝鮮軍部の【反乱】(こう名乗ることで日本は手も足も出なくなってしまう)に振り回され、政治的イニシアティブはいつものように米中に握られてしまい、この作品における内閣はほとんど何もできない。しかし、“それもまた日本なのだ”という一種の諦念すらうかがえるのだ。かつて「昭和歌謡大全集」で調布の街を吹っ飛ばしたイシハラ(映画では松田龍平が演じてます)たちの気狂いじみた行動によってこの事変はフロック的解決をみるわけだが、それが村上の皮肉である以上に、日本という国は、日本人は、そんなみっともない姿でこの世紀を生き延びてゆくのが運命なのではないかという……うーんこれは明らかにわたしの誤読なのかもしれない。あるいは、村上ではなくて、読者であるわたしの方が老いたのか。

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「戦国自衛隊1549」を罵倒する!

2008-04-22 | 邦画

20070620032813  頭がクラクラしてきた。今オレの目の前で2時間以上も展開されたこれはいったい何だったのだ。久しぶりに言いたくなった。
「金返せーっ!」
あまりに腹が立ったのでネタにして少しでも元を取ろう。

「戦国自衛隊」をリメイクする、というアイデア自体は悪くないと思う。その原案を福井晴敏に書かせ、ゴジラシリーズでいいところを見せた手塚昌明に監督させるチョイスも正解だと思っていた。どうも評判が芳しくないらしいことは伝わっていたが、それは手塚が「やっとゴジラ以外の映画を撮れます」なんて不用意な発言をしたせいでオタクたちが反発しているせいだろうと好意的に解釈していたのだ。

ところが。

なーんじゃこれは!いったいどうやったらこんなつまらない映画にできるんだ?
現代の自衛隊が戦国時代にタイムスリップする、こんな魅力的だけれど荒唐無稽な設定を生かすためには、観客をねじふせるだけの歴史や火器に関する綿密な考証が必要なはず。それがほとんど感じられない上、命の危険もかえりみず戦国時代へ自衛隊が“飛ぶ”動機づけが弱い弱い。なにより、敵失でしか勝負がつかない展開は工夫がなさすぎる。

しかも、役者の演技がみんな学芸会並み。北村一輝以外はしどころもなく、腰元たちの所作にしてもまるでバカ殿のコントかと思った。Nakaok01

特にこいつ!→

このガキが出てくるたんびにドラマが一気に停滞するのだ。誰だこいつ。だいたいさー、平成と戦国に生きる人間たちの相克を描くなら、それなりのカルチャーギャップを(些細なことでいいから)挿入するだけでドラマに深みがでるはず。自衛隊がシニカルだったり、平成の平和に対して戦国人が疑義を呈したりでもいいじゃないか。でも登場人物たちはどちらものべつまくなしにギャーギャー騒ぎ立てるだけ。CMに使われた、戦闘ヘリが物見櫓に激突して炎上するシーンにしても、ドラマ的になんの意味もないため、はーそうですか、と思うしかないのだ。なにやってんだか。

福井はできあがった映画を観て、本音のところはどう思ったのだろう。おそらく彼はつくづく感じたと思う。平和ニッポンは、このタイプの映画でも韓国に大きく水をあけられてしまったなあと。スタッフロールにわたしはガンを飛ばしていた。責任者出てこい!

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「宇宙戦争」War of the World

2008-04-22 | 洋画

Waroftheworld 「で、どうだったんですか?『宇宙戦争』。」前日に観てきたことを知っている事務補助はお昼時にきいてくる。
「うーん」答えるのがこれほど難しい映画もめずらしい。
「面白くなかったんですか?」
「そんなことはないよ。面白いことは面白いんだ。でも……」

ただひとつ確実に言えるのは、この映画、子どもにはあまりお薦めできないな、と。人類よりもはるかに知能がまさっている生命体が、ある事情(これが子どもに見せたくない理由のトップ)のために地球に侵略してくる……どう戦っても勝てない戦争であることを考えると要するにこれは天災。で、その天災を、こうまで金をかけて徹底的にリアルに描くと、どうしても救いのない暗ぁい話になってしまうのである。またしてもイヤミなくらいうまいダコタ・ファニング(もう彼女を子役と呼ぶのはやめよう)が、恐怖のためにパニくるシーンなど、小学生ぐらいだと同調して息苦しく感じられるのではないか。

 スティーブン・スピルバーグが『世界でいちばん面白い映画をつくる監督』であることに異論がある人は少ないだろう。それどころか「シンドラーのリスト」や「カラーパープル」で文句なく巨匠扱い。それなのに、いまだに「不在の父親に対するコンプレックス」で作品を解読されているのは、あまりにも若くしてスター監督になったからだろうか。まあ、今回はトム・クルーズの意向もあってか「そこまでやるかー!」ってぐらい父権をテーマにしていましたが。

 スピルバーグの“異常さ”を倍加しているのが、いつものヤヌス・カミンスキーの画像であることに異を唱える人はいないだろう。今回は、あの美しさが効果的にはたらいている。

 宇宙人を撃退できた(でもないんだが)理由はオリジナルの方が意外性があってよかった気がする。ちょっとネタバレになるけど、今回はダコタ・ファニングの手にくいこんだ“”がヒントになっているのでお見逃しなきよう。

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