「で、どうだったんですか?『宇宙戦争』。」前日に観てきたことを知っている事務補助はお昼時にきいてくる。
「うーん」答えるのがこれほど難しい映画もめずらしい。
「面白くなかったんですか?」
「そんなことはないよ。面白いことは面白いんだ。でも……」
ただひとつ確実に言えるのは、この映画、子どもにはあまりお薦めできないな、と。人類よりもはるかに知能がまさっている生命体が、ある事情(これが子どもに見せたくない理由のトップ)のために地球に侵略してくる……どう戦っても勝てない戦争であることを考えると要するにこれは天災。で、その天災を、こうまで金をかけて徹底的にリアルに描くと、どうしても救いのない暗ぁい話になってしまうのである。またしてもイヤミなくらいうまいダコタ・ファニング(もう彼女を子役と呼ぶのはやめよう)が、恐怖のためにパニくるシーンなど、小学生ぐらいだと同調して息苦しく感じられるのではないか。
スティーブン・スピルバーグが『世界でいちばん面白い映画をつくる監督』であることに異論がある人は少ないだろう。それどころか「シンドラーのリスト」や「カラーパープル」で文句なく巨匠扱い。それなのに、いまだに「不在の父親に対するコンプレックス」で作品を解読されているのは、あまりにも若くしてスター監督になったからだろうか。まあ、今回はトム・クルーズの意向もあってか「そこまでやるかー!」ってぐらい父権をテーマにしていましたが。
スピルバーグの“異常さ”を倍加しているのが、いつものヤヌス・カミンスキーの画像であることに異を唱える人はいないだろう。今回は、あの美しさが効果的にはたらいている。
宇宙人を撃退できた(でもないんだが)理由はオリジナルの方が意外性があってよかった気がする。ちょっとネタバレになるけど、今回はダコタ・ファニングの手にくいこんだ“棘”がヒントになっているのでお見逃しなきよう。
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