hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

香山リカ・北原みのり『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか』を読む

2018年01月10日 | 読書2

 

 香山リカ・北原みのり著『フェミニストとオタクはなぜ相性が悪いのか 「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』(2017年11月20日イースト・プレス発行)を読んだ。

 

 

 北原さんが大学院を止めてポルノ雑誌で編集のアルバイトを始めたとき、「エロ」業界が大きな利益を生む巨大業界であるとわかり、サブカルチャーやエロに「反体制」的なことを期待しても無理と知った。

 

「性の商品化」では、女性に自己決定権があれば良いとされるのかが議論される。

 

 JKビジネスについて「自分がやりたくてやっていることは、こっちが口出す必要はないんじゃないの」と女学生なども言う。いかに酷い状況に追い込まれて、手をつかまれてしまって、女の子が嫌だと逃げられるかどうか、想像して欲しい。

 私が診察室で会ってきた性売買をしている女性たちの多くは虐待を受けたり、崩壊過程で育ったりしているが、中には優秀な頭脳を持っていて、ナンバーワンになっても、病んで病院に来たり、なかには死んでしまう女性もいた。

 

 女性はいくら性と人格を切り離そうとしても人格の欠片みたいな、性的行為をしている時に付随している人格的なものが絶対あるわけです。

 日本の男の人は、国家からも社会からも「欲望をコントロールできないのは、自然なことだ」とか言って自分を動物化しておきながら、「女の体は利用できるんだ。男とはそういう生き物なんだ」とさんざん教育で刷り込まれている。そこに女の体が巻き込まれてしまう。

 

 主婦が英会話を習っていても夫に言わない。夫から「お前なんかが英語の勉強をして何になるんだ」とか、お金のことを言われ、これまでの経験から夫との会話の2,3フレーズ先まで読めるから用件以外の会話はしない。

 

 

「性の商品化」を防ごうとすると、「表現の自由」を制約するのはいけないとの声に阻まれる。

 

 少女への暴力表現が「ある種の権力に対する挑戦」だとした時の、ある種の権力って、何なのでしょう。正直、少女への暴力が溢れている社会で、どういう文脈で反権力になるのかわからないです。

 

 

モノを言う女はモテない悩み

 

 社会に関してモノを言う女を煙たがらずに魅力を感じて、「一緒にいきて行こうよ」と言える男が極めて少ないんじゃないか。

だから、この国の男にモテるということが不名誉なことだって切り替えればいいじゃないですか。男の人が変わることを求めなければいけないけど、今の段階でモテるのは、結構です、みたいな。

 

 

 

1章 「性の商品化」で論じられてきたこと
2章 「性差別」と認知できなくなっている「問題」
3章 日本のセックスレス
4章 性売買と愛国
5章 なぜ「性の売買」は問題なのか

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

 確かに香山さんはオタク的ではあるが、オタク代表ではないので、タイトルには違和感がある。サブカル・オタクの精神科医とラジカルなフェミニストの対談集であるが、二人とも女性なので、男性社会・文化への反感では一致していて、その話が多い。オタク対フェミニストの対決議論はほとんどなく、副題にあるように『「性の商品化」と「表現の自由」を再考する』が対談の主なテーマになっている。

 

 

 

香山リカ(かやま・りか)

1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学科教授。専門は精神病理学。
学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。

おとなの男の心理学』『<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている』『雅子さまと新型うつ』『女はみんな『うつ』になる』『精神科医ですがわりと人間が苦手です』『親子という病』『弱い自分を好きになる本』『いまどきの常識』『しがみつかない生き方』『だましだまし生きるのも悪くない』『人生の法則』『できることを少しずつ』『若者のホンネ』『新型出生前診断と「命の選択」』『がちナショナリズム』『半知性主義でいこう 戦争ができる国の新しい生き方』『リベラルですが、何か?』『ノンママという生き方 ~子のない女はダメですか?~

 

北原みのり(きたはら・みのり)
1970年神奈川県生まれ。作家。津田塾大学卒。

1996年フェミニズムの視点で女性のためのセックストーイショップ「ラブピースクラブ」を設立。時事問題から普遍的テーマまでをジェンダーの観点から考察する。

著書『アンアンのセックスできれいになれた?』、『毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記』、『さよなら、韓流』、『性と国家』。共著『奥さまは愛国』。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする