hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

岩城けい『さようなら、オレンジ』を読む

2014年02月27日 | 読書2

岩城けい著『さようなら、オレンジ』(2013年8月筑摩書房発行)を読んだ。

アフリカから戦乱を逃れて難民としてオーストラリアに移ってきたサリマ(ナキチ)は、夫に逃げられ、精肉作業場で働きつつ二人の子どもを育てている。母語の読み書きすらままならない彼女は、職業訓練学校で英語を学びはじめる。
研究者の夫にしたがって渡豪し、生まれたばかりの娘と孤独の中にいた日本人女性「ハリネズミ」(イトウ・サユリ)と出会う。
一応話せても、細かいところは言葉が不自由な生活を三十年過ごし、結局現地人の夫に依存するイタリア人女性オリーブ(パオラ)も少しだけ登場する。

彼女たち3人が、同じ語学学校に通い始め、外国人同士が少しずつ距離を縮め、理解しあって、友情を深めていく。そして、やがて各人が各々の道へ進みだす。人種差別の中、異郷で生きるためには心が伝わる言葉を持つことが必要で、英語を身に付け、人びと交流することで初めて人間としての尊厳を取り戻すことができる。

物語は、サリマが主人公の三人称の語りと、ハリネズミが恩師のオーストラリア人に宛てた手紙が交互に現れる構成だ。そして、幼子を失った報告と、再度、出産するところは、突然、英文のメールで書かれる。

太宰治賞を受賞し、芥川賞候補になった作品。



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

しばらく五つ星がなかったので、ちょっと甘めの評価。

飾り気のない率直な文体がストレートに心に響く。女性3人は、心ならずも異郷に暮らすことになり、当初はおどおどして生活しているようにみえる。しかし、実は、女性たちはたくましく生きる力を持っていたのだ。
英語習得への格闘と、その中でのそれぞれ異なる国の女性同士の友情の芽生えが心温まる。
多少生硬な構成も、外国で、黒人女性が主人公の一人という日本の小説には珍しい設定に救われている。

筑摩書房の「PR誌ちくま」のインタビューで著者は語っている。
岩城 アイデアはいろいろあるんですけれど、なかなか形になりません。好きな作家はインド系アメリカ人のジュンパ・ラヒリです。


私も、この本を読んで、まっさきに思い浮かべたのは、アメリカでのインド人の違和感を扱った「停電の夜に」だった。


岩城けい(いわき・けい)
1971年大阪生まれ。大学卒業後、単身渡豪。社内業務翻訳業経験ののち、結婚。在豪20年。
現在オーストラリア、ヴィクトリア州在住
2013年5月、「さようなら、オレンジ」で第29回太宰治賞を受賞
2013年12月、「さようなら、オレンジ」が第150回芥川龍之介賞の候補
旧筆名はKSイワキで、顔写真は三鷹市HPにある。


コメント

シャンポールージュでランチ

2014年02月24日 | 食べ物
吉祥寺の昭和通り、いつも見るだけで通り過ぎるシャンポールージュ。



見るからに古めかしい、昔からあったかのように見える店だ。2Fがあるのだが、1Fはとても狭い。

まず、ミネストローネ。



パンは珍しく柔らかいが、美味しい。



相方のメインは、チーズハンバーグトマトソース



当方は、ハンバーグとカキフライ2個



味は相方は”ごく普通”、私めは”いいじゃない”。それぞれ、995円、1100円。

昔ながらの雰囲気の、ごく普通の店でした。








コメント

桐島洋子『人生はまだ旅の途中』を読む

2014年02月22日 | 読書2

桐島洋子著『人生はまだ旅の途中 いくつになってもお転婆ガール!』(2013年12月大和書房発行)を読んだ。

76歳になった桐島さん、まだまだ凛として、意気軒昂。骨折や、バンクーバーの自宅が半焼と大変なことが起こったのに平然と、そしてやる気をみせている。

各メディアへ書いたエッセイをまとめているので、内容はさまざま。アンティーク蒐集、美味しい料理、一番多いのが内外の旅の便り、これらの間に、おなじみのシングルマザーの子育て昔話が挟まる。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

シングルマザー時代の破天荒な行動力話が何回も登場するが、自慢ではなく思い出話としてあっさり書かれているので、うんざりはしない。さすがに昔通りではないが、外国へも良く行っているようで、活躍ぶりには勇気をもらう。

各メディアへ書いたエッセイを集めたためだろうが、すべての話をさらりと流していて、物足りない。確固とした信条を持つ桐島さんなのだから、いくつかのテーマについては、もっと突っ込んで書き込んで欲しかった。

私には拒否感のある“スピリチュアル“にも、桐島さんははまっているというより、面白がっているような余裕がある。真剣に対応するが、距離感も忘れないという桐島さんの姿勢には好感がもてる。

ルビがふってあるが、普段使われない漢字が出てくる。意識的にそうしているのだろうが、「そういえば、こんな漢字あったな」と思う。
犇(ひし)めく、怯(ひるまず)、漲(みなぎ)る、儚(はかな)さ、坩堝(るつぼ)、逼塞(ひっそく)、



桐島洋子(きりしま・ようこ)
1937年東京生まれ。作家。
1972年『淋しいアメリカ人』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
以来著作・テレビ・講演などで活躍しながら、かれん(モデル)、ノエル(エッセイスト)、ローランド(カメラマン)の3児を育て上げる。
50代で子育てを了えてからは、“林住期”を宣言。仕事を絞り、年の数カ月はカナダで人生の成熟の秋を穏やかに愉しむ。
70代からは日本で、マスコミよりミニコミを選び、東京の自宅にオトナの寺子屋「森羅塾」を主催している(桐島洋子の森羅塾へ)。
その他、『マザー・グースと三匹の子豚たち』『ガールイエスタデイ -わたしはこんな少女だった-』(絶版)『わたしが家族について語るなら』『バンクーバーに恋する林住期ノート』、『刻(とき)のしずく 続・林住期ノート』と、『林住期を愉しむ 水のように風のように』
林住期が始まる』『聡明な女たちへ』『 50歳からのこだわらない生き方



コメント

植松三十里『おばさん四十八歳小説家になりました』を読む

2014年02月20日 | 読書2
植松三十里(みどり)著『おばさん四十八歳小説家になりました』(2013年2月東京堂出版発行)を読んだ。

42歳で作家修業をはじめ、48歳で小説家デビューした、おばさんの奮闘記。

新人賞に44回も応募した6年間。デビュー後も2冊目がなかなか出ない。書き上げた小説を編集者からダメ出しされ、何回もやりとりし、300枚の作品を思い切って捨て、別の作品を書き始める。・・・

一説に、文学賞を取ってから、小説家としてやっていかれるのは、二十人にひとりという。

中高一貫の女子高出身者というのは、ある種の共通性がある。まず、気取り屋が少ない。六年もの間、女ばかりの環境にいると、たかいに遠慮がなくなり、あっけらかんとした人間関係になる。女性は裏を読むのが得意だから、気取っていても、化けの皮を六年間もキープできないのだ。


ファッション雑誌の編集をして、寿退社で渡米。可愛い2人の娘に恵まれて、帰国後はアートっぽい建築事務所へ勤務。そして元イケメン亭主は大学教授、と勝ち組人生に、突然、娘の登校拒否・・・。 

小説家と呼べるようになってからも、心労、不安は続く。
新田次郎文学賞受賞後、やっとのたどり着いた場所も、忘れ去られずに次の小説を出版してもらうために、立ち止まることが出来ない不安定な場所。しかし、やっと小説家になれたおばさん小説家は毎日書く。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

テーマが一貫していないので、印象が散漫になる。
中年になってからデビューするまでの話、デビュー後、なかなか編集者に受け入れてもらえない話、勝ち組だったのに娘で苦労させられた私生活、何冊も本を出してからも毎回苦労する話、そしてこれらの間に、出版済の小説の解説、執筆意図・経過などが挟まる。

確かに、歴史小説は取材準備・調査が大変であることは分かった。



植松 三十里さん (うえまつ みどり) さん プロフィール
1954年生まれ。静岡県出身。 東京女子大学史学科卒業後、婦人画報社入社。1980年、退社。
7年間の在米生活、建築都市デザイン事務所勤務などを経て、歴史時代小説家に。
2003年、『桑港(サンフランシスコ)にて』で第27回歴史文学賞受賞。
2009年、『群青 日本海軍の礎を築いた男』で第28回新田次郎文学賞受賞。
その他、『辛夷開花』『唐人さんがやって来る』『黒鉄の志士たち』など

コメント

三上延『ビブリア古書堂の事件手帖 4 』を読む

2014年02月17日 | 読書2
三上延著『ビブリア古書堂の事件手帖 4 ~栞子さんと二つの顔~ 』(メディアワークス文庫2013年2月 アスキー・メディアワークス発行)を読んだ。

シリーズ累計550万部というベストセラー(既に第5巻が1月に発売)。主人公は古本屋店主・篠川栞子(しおりこ)25歳。古書にやたら詳しいが、極度の人見知りで、おきまりの美貌。客持ち込みの古書の謎解きに、アルバイトの五浦大輔とのもどかしい恋が絡む。作中で扱われる古書は実在。
公式サイト」に人物紹介などがある。

「珍しい古書に関係する、特別な相談がある」との依頼を受け、ビブリア古書堂の二人は鎌倉の雪ノ下の古い館へ向かう。古い顧客名簿を調べると、依頼者の名は、鹿山明の住所の欄に「来城(きしろ)慶子様方」とあった。
訪問宅の離れには江戸川乱歩のほぼ全作品という膨大なコレクションがあり、それを譲る代わりに、鹿山明が残した鍵と暗号で守られる金庫を開けてほしいとの依頼だった。
栞子と確執のある母・篠川智恵子の謎解き合戦が始まる。
これまでのシリーズでは、一話ごとに異なる作家の小説を扱っていたが、第4巻は初めての長編で、しかもすべてが乱歩の小説に伴う謎。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

ライトノベルでミステリー。私には両方とも縁が薄いが、一気に読めた。確かに読みやすい。
シリーズを読んできた人は、くせのある母親の篠川智恵子が新登場(たぶん)だし、栞子と大輔の関係も多少進展するので、面白いかも。

しかし、主人公の栞子のキャラは立っているが、謎めいて魅力的というほどではない。相方の語り手・大輔はただぼーとしているだけだし、二人の関係もまどろっこしくはあっても、ドキドキするほどではない。大部分は江戸川乱歩に関するマニアックさを競う話題が続き、子供時代に少し読んだだけの私にはかったるい。乱歩に、はまった人が読むべき本だ。



三上延(みかみ・えん)
1971年横浜市生まれ。藤沢市育ち。武蔵大学人文学部卒業。中古レコード店、古書店勤務
2002年『ダーク・バイオレッツ』でデビュー
2011年発表の古書ミステリー『ビブリア古書堂の事件手帖』が人気作
2012年同作は本屋大賞にノミネート
他に『シャドウテイカー』『偽りのドラグーン』など


コメント

ototo で dinner

2014年02月15日 | 食べ物
昨年の暮れ、久しぶりに夕食を外で。

吉祥寺の末広通の駐輪場を南にちょっと入ったところ。



イタリアンのototo。派手な看板が並び、前から気になっていた。小さなお店で10人も入ればいっぱい。

まず、注文したのが、カルパッチョ3点盛り。

スズキ(三崎)、赤ヤガラ、黒ソイ



美味しかったのだが、30分くらいまたされた。お酒飲む人は良いが、下戸の我々は時間を持て余す。

イタリア風ブイヤベース「スパ ディ ベッシェ」
(トマト&魚介スープ)



味は良いのだが、これで二人分。少食の二人だが、物足りない。追加注文するとまた30分待たされるので我慢。

「ブイヤベースの残ったスープで、リゾットorカッペリーニを作ります」とあったので、リゾットを。



二人で約4500円といやに安かったし、味も良しだが、待たされるのには閉口した。おまけに、隣に座ったおじさん達が酒飲みながら良くしゃべること。

気楽に入る店ですね。ただし、シェフが二人いるのを確かめてから。






コメント

三浦しをん『まほろ駅前狂騒曲』を読む

2014年02月13日 | 読書2
三浦しをん著『まほろ駅前狂騒曲』(2013年10月文藝春秋発行)を読んだ。

まほろ駅前シリーズ、『まほろ駅前多田便利軒』、『まほろ駅前番外地』に次ぐ第三弾。
まほろ市で便利屋を営む多田と、助手で居候の高校の同級生・行天のドタバタととぼけたやり取り。

多田は行天の元妻から夏の間だけ4歳の女の子を預ることになる。無農薬野菜をうたい、まほろ駅前(町田とは書いてない)で活動するあやしげな団体と対決するはめになり、横浜中央交通、略して横中(神奈中とは書いてない)のバスが相変わらず間引きされていると信じ込んでいる偏屈な老人の依頼を受ける。

子供を失い離婚した多田に訪れた久々の恋。かつて虐待されていた行天が係わっていたらしい新興宗教。
心の傷を抱えた多田と行天は、様々な事件と葛藤の中で、他者と関わりつつ再生していく。

「怖いものなんかあるのか?」多田の質問に、行天が答える。「あるよ。記憶」

悩む行天は導きだす。「正しいと感じることをしろ。正しいと感じる自分が正しいのか、いつも疑え」

まだらボケのばあちゃんが聞く。「あの世ってあるんだろうかねえ」
言葉に詰まる多田に代わり行天が言う。「あの世なんてないよ」「でも、俺はあんたのこと、なるべく覚えているようにする。あんたが死んじゃっても。俺が死ぬまで。それじゃだめ?」

初出は週刊文春の2010年10月28日号から2011年9月15日号



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

大部だが面白く読める。しかし、直木賞受賞作のシリーズ最初の時の衝撃に比べると、どうしても驚きはなく、気楽に読めてしまう。しかし、行天や多田の過去がはっきりするので、前作二冊を読んでいる人には必ず手にとってほしい一冊だ。

あらためて思う。このシリーズの主人公は行天だ。



「注意一秒、怪我一生」という懐かしい交通安全のフレーズが出て来て、ジョークを思い出した。本当は「注意一生、怪我一瞬」だというのだ。もっともだ、もっともだ。



三浦しをん
1976年9月東京生れ。女性
1999年早稲田大学第一文学部卒。
2000年『 格闘する者に◯』でデビュー。
2005年『私が語りはじめた彼は』で山本周五郎賞候補、『むかしのはなし』で直木賞候補
2006年『まほろ駅前多田便利軒』で直木賞受賞
2010年『木暮荘物語
2012年『舟を編む』本屋大賞受賞
2008年から太宰治賞、2009年から手塚治虫文化賞の選考委員。
その他、『まほろ駅前番外地』、『天国旅行』、『風が強く吹いている』、 ビロウな話で恐縮です日記
お友だちからお願いします』、書評などの「三四郎はそれから門を出た」。





コメント

高田郁『ふるさと銀河線』を読む

2014年02月10日 | 読書2
高田郁著『ふるさと銀河線 軌道春秋』(双葉文庫 た-39-01、2013年11月双葉社発行)を読んだ。

苦難のなかで真の生き方を追い求める人びとの姿を、美しい列車の風景を織りこみながら描いた珠玉の短編集。

お弁当ふたつ
塩分2.5mg以下、熱量600キロカロリー、工夫しながら夫・板倉潤一の弁当を作る妻・佐和。「こんな不味いもん食わされて、何が楽しくて生きてんの?あのヒト」大学生の長男は言い放つ。平凡ではあるが、平和な家庭が続くと信じていたが、夫は・・・。内房線館山駅を過ぎて向かい合わせに座った二人は、今日だけ特別に味を濃くした弁当を食べる。

車窓家族
大阪と神戸を結ぶ私鉄の車窓から、「文化住宅」のカーテン空け放した老夫婦の部屋が見える。イラつくことも多い車内からつい視線を送る様々な人達。

ムシヤシナイ
JR大阪環状線のT駅のホームにある立ち食い蕎麦屋。東京の高校生の孫が突然訪ねてくる。ちゃんとした料理でない立ち食い蕎麦を出して虚しくないかと孫がたずねる。祖父は、「虫養い、という言葉が大阪にはあるんや」「軽うに何か食べて、腹の虫を宥めてとく、という意味や」と教える。厳しい父に、包丁が怖くなったという孫は・・・。

ふるさと銀河線
道東の第三セクターの運転手の兄とふたりで暮らす中3の少女。演劇の才能を認められる彼女は、帯広の高校受験を勧められるが、彼女の心はふるさと陸別への思い、夢との間で揺れ動く。「故郷って心棒だ。・・・心棒があるからこそ羽ばたける。・・・ぼくたちは何処までだって行ける切符を持っているんだ」

返信
3年前に他界した息子が旅したふるさと銀河線。老夫婦は「幸福の黄色いハンカチ」にちらりと写った懐かしい木造の駅舎を見ようと陸別駅を訪れる。しかし、駅は白亜の近代的建物に変わっていた。「何も無いけど、そこが良い」という陸別で、二人が見たものは・・・。

雨を聞く午後
学生時代に住んでいた安アパートを、客から悪しざまに言われ続ける株屋の営業になった男が訪れる。彼は叫びたかった。「みっともなくて何が悪い、生身の人間がみっともなく生きることの何が悪い、と。」

あなたへの伝言
アルコール依存を直すために、夫と離れて安アパートに一人住む女性。「ダイジョーブ」と叫ぶセキセイインコ。「もしかしたら、真紀さんのように、明日は飲んでしまうかも知れない。でも、今日は決して飲まない。そんな「今日」を積み重ねて、いつか、あなたとの人生を取り戻したい。

晩夏光
介護した認知症の義母、そして夫も2年前に逝き、一人住まいの老婦人。関西から息子が立ち寄った翌日、何か微かな違和感を感じ、総合病院へ行く。そして、けして介護せずに病院か施設に入れてくださいとノートに書く。晩夏光(ばんかこう)とはと聞かれて、「真夏のギラギラした陽射しに比べて、柔らかで、まろみのある光でしょう?まるで今の私みたい」と答える。

幸福が遠すぎたら
新潟で酒造会社を継いだ女性に、16年前のタイムカプセル郵便が届く。大学の同級生2人から、京福の嵐山駅で集合の誘いだった。3人ともぎりぎりの地点に立っていて・・・。



著者は、時代小説デビュー前に川富士立夏の筆名で漫画原作を書いていた。その中で、原作を小説にして欲しいとリクエストが多かったのが「軌道春秋」という短編連作だったという。集英社「YOU」に28回連作の中から8編を選んで小説に書き改めた。さらに、陸別町の文芸誌への寄稿を加筆訂正した「返信」を加えている。

なお、北海道ちほく高原鉄道ふるさと銀河線は2006年に廃止され、観光鉄道「ふるさと銀河線りくべつ鉄道」として陸別駅周辺で約1kmのみ運転・乗車体験できる。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

辛い現実の中、かすかな灯りが見え、辛い分、灯りの温かさが身に染みる。高田さんの文章はしつこいところがなく、さわやかで、ほっこりする。漫画の原作からスタートしたからだろうか、私なりの映像イメージが浮かんでくる。



高田郁(たかだ・かおる)は兵庫県宝塚市生れ。中央大学法学部卒。
1993年、川富士立夏の名前で漫画原作者としてデビュー。
2006年、短編「志乃の桜」
2007年、短編「出世花」
『みをつくし料理帖』シリーズ
2009年~2010年、『第1弾「八朔の雪」第2弾「花散らしの雨」第3弾「想い雲」
2010年『 第4弾「今朝の春」
2011年『 第5弾「小夜しぐれ」』『 第6弾「心星ひとつ」
2012年『 第7弾「夏天の虹」』『残月
その他、『銀二貫』『あい』『みをつくし献立帖



以下、本書からの引用

唐の「勧酒」という詩の中の一句「人生足別離」を井伏鱒二は「『サヨナラ』ダケガ人生ダ」と訳した。これに対し、寺山修司は「幸福が遠すぎたら」を歌った。

さよならだけが
人生ならば
 また来る春はなんだろう。
 はるかなはるかな地の果てに
 咲いてる野の百合なんだろう

さよならだけが
人生ならば
 めぐりあう日は何だろう
 やさしいやさしい夕焼けと
 ふたりの愛は何だろう

さよならだけが
人生ならば
 建てたわが家は何だろう
 さみしいさみしい平原に
 ともす灯りは何だろう

さよならだけが
人生ならば
人生なんか いりません


コメント

NHKスペシャル取材班『老人漂流社会』を読む

2014年02月08日 | 読書2

NHKスペシャル取材班著『老人漂流社会 他人事ではない“老後の現実”』(2013年12月主婦と生活社)を読んだ。

菊池寛賞受賞『無縁社会』から3年後のニッポンはいま―。反響を呼んだNHKスペシャル待望の書籍化!歳をとるのは罪ですか? 高齢者が体調を崩して自宅にいられなくなっても、病院や介護施設は満床で入れない。短期間だけ入れる施設を転々とし、そのうち貯金は底をつき、行きつく先は生活保護。それでも安住の地は簡単には見つからない…。住まいを追われ、“死に場所”を求めて漂流する高齢者が、いまあふれ出している。(「BOOK」データベースより)


豊かとは言えないまでも普通の生活をしていたOさんが、急に奥さんが亡くなり、生きる張り合いを無くし、体が弱り、引きこもりになる。自治体のスタッフから声をかけられても、世話をしてもらうことには抵抗があり、「大丈夫、ちゃんとやっていますよ」と答えてしまう。熱中症で倒れ、入院、寝たきりになり、自宅での生活は困難になる。病院から退院を督促する電話を受けた基幹地域包括支援センター担当者は、身内などの身元保証人がおらず、入所費用の支払いが困難なOさんを、短期でも受け入れてくれる施設探しに苦労する。

親身になる身内がなく、金もない老人が、終の棲家もなく短期宿泊施設や精神病院を転々と漂流する。

「普通に生きてきて、最後、何でこんな人生になったんだろうね・・・」
・・・
「社会に必要とされたい。どんなささいなことでも、必要とされる居場所(=つながり)が欲しい」・・・「迷惑をかけるだけの自分」を受け入れがたく思っているようだった。


Yさんがいつもベッドの上に大切に置いている一枚の小さなメモ。そこには娘と息子の携帯電話の番号が書かれていた。子供たちを心配させたくない、迷惑をかけたくないと結局電話できなかった。何度も開いたり、たたんだりしてくしゃくしゃになったメモ用紙。脳梗塞で入院している息子、がんで闘病している娘のことが気がかりなのだが。

NHKスペシャル「終の住処はどこに 老人漂流社会」2013年1月20日放送



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

久しぶりの四つ星だ。五つ星にしたいが、あまりにも悲惨な報告であり、しかも現実なので四つ星にとどめた。
この本は最後に、良心的経営者による高齢者共同住宅「ぽらりす」を紹介して希望をつなごうとしているが,いかにも危く、一般化できると思えない。

序章のタイトル「歳をとることは罪なのか」という問いかけは重い。長年地道に努力し、我慢してきた、真面目な人ほどつらい目に合う。こんな国が「美しい日本」であるわけがない。

資産もあり、年金もたっぷりもらって、余裕のある年寄りも確かにいる。しかし、単身世帯の公的年金受給額が年間100万円未満(月8万3千円)の人は42%。特に都市部ではこの年金だけで終の住処を見つけるのは容易でない。

結局、「金は十分貯めとけ」ということになる。なんたる結論か。



第1章 “終の住処"を選べない時代
第2章 死に場所さえ持てない!
第3章 「漂流死」する高齢者たち
第4章 知られざる「認知症漂流」
第5章 どうすれば老後の安心は得られるのか
第6章 “老人漂流"を食い止めるために


コメント

犬塚弘『最後のクレイジー 犬塚弘』を読む

2014年02月06日 | 読書2

犬塚弘・佐藤利明『最後のクレイジー 犬塚弘 ホンダラ一代ここにあり』(2013年6月講談社発行)を読んだ。

1960年代のニッポンで、TV、映画で、世代を超えて、笑いと底抜けの明るさをもたらした“ハナ肇とクレイジー・キャッツ”。一流のジャズバンドで、一流のコミック・バンド。ハチャメチャでおかしかったのだが、今思うとちょっと粋で、どこか上品だった。娯楽映画研究家の佐藤利明氏が、今はその唯一のメンバーとなってしまった84歳の犬塚弘氏へロングインタビューし、この本が生まれた。

本書では昭和20年代のジャズ・ブーム、昭和30年のクレイジー結成、約4年間の質屋通い、TV「おとなの漫画」でブレイクし、伝説の「シャボン玉ホリデー」、これらの舞台裏が語られる。いずれも一流のジャズ・ミュージシャンだったクレイジーのメンバーが、ジャズをコミカルに演奏することから、テレビでコントを演じ、そして迷い、悩みながらもコミック・バンドとして、TVコバラエティの黄金時代を築いていく。1980年代からは、メンバーそれぞれが個別に活動した。各メンバー、そして犬塚氏が縁あった渥美清、三木のり兵、勝新や諸監督について、エピソードとともに実像が語られている。

2013年1月から3月まで、東京新聞夕刊に連載された『この道/犬塚弘 最後のクレイジー』に、大幅に加筆。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

正直言って期待した面白さには程遠い。あのクレイジーキャッツだからと、期待が大きすぎたのかもしれない。やたらとTV番組名、映画タイトル、役者名、簡単な説明がずらずら続く。デープなファンならいざしらず、そういえばよく見たな程度のファンにはもっと話題を絞って、深味をついたエピソードが欲しい。語り口も、犬塚氏の人柄どおりに真面目で盛り上げがない。話す内容が同じでももっと劇的におもろく話す人はいる。

もちろん、読めば、一時代を築いたクレイジーの個性的メンバーが目に浮かび、ちょっとしゃれて、粋なチームだったなと懐かしく思い出す。ハチャメチャをやっていても、メンバー全員が良き家庭人、社会人で、それが限界だったのかもしれないが、好感はもてる。後から出て来たドリフターズよりはかなり上品なグループだった。
犬塚氏の各メンバーの評価は、ほめてばかりで面白くないが、唯一、ハナ肇の強引さに犬塚氏の反感が感じられた。また、谷啓が極端な人見知りだったとは知らなかった。
7人のうちたった一人残った犬塚氏には長く元気でいてほしい。



犬塚弘(いぬづか・ひろし)
1929年東京市大森生まれ。
父親が三井物産で海外赴任していたので、幼少時からジャズ、ハワイアン等の音楽に親しむ。
文化学院卒業後IBMに就職したが、2年半で退社。兄のバンドで背が高かったのでベースを担当。
1955年、ハナ肇の誘いでクレイジー・キャッツの前身のキューバン・キャッツに参加。

佐藤利明(さとう・としあき)
1963年東京出身。娯楽映画研究家。




コメント

宮下奈都『太陽のパスタ、豆のスープ』を読む

2014年02月04日 | 読書2

宮下奈都著『太陽のパスタ、豆のスープ』(集英社文庫2013年1月発行)を読んだ。

式場も予約し、友達にも知らせたのに、突然、婚約を破棄された“あすわ(明日羽)”。彼女が周囲の人々の距離を置いた助けで、少しづつ前に進んで行くというシンプルな物語。
叔母のロッカ(六花)さんは、溺れる者が掴むワラのごとき、ドリフターズ・リスト(漂流者のリスト)を作ることを勧める。何んでもいいからやりたいことを書いて、それをひとつずつ実現させるリストだ。まず、あすわが書いたのは、「食べたいものを好きなだけ食べる。髪を切る。ひっこし。おみこし。たまのこし」

幼馴染の京(京介、戸籍は男性)、美貌のエスティシャン桜井恵、会社の同僚で、同時に豆スープを作って売る郁ちゃん、おみやげに3百円のアイスが喜ばれるとは思いもせず100円のアイスを3個買う父、「毎日のご飯があなたを助ける」と語る母。

初出:2010年1月単行本で発行



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

極めて単純な失恋からの回復、成長物語で、丁寧な語り口、日常の些細なことをくみ取る点はなかなか良いのだが、もう少し起伏とか、突っ走る流れなどが欲しかった。中盤、ちょっとダレ気味でもある。

気遣いできる気の良い人ばかりで、全体にまったり、ぬるめ。

この著者の、日常のディテールをくみ取る力には優れたものがある。食べ物の描写はさすがだ。
あすわは、母がイタリアに興味を持っていたことなど知りもせず、考えもしなかったとの記述がある。たとえ娘であっても、多くの子どもにとっては、母は母でしかない。



宮下奈都(みやした・なつ)
1967年福井県生れ。 上智大学文学部哲学科卒。
2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に入選、デビュー。
2007年『スコーレNo.4
2009年『遠くの声に耳を澄ませて』、『よろこびの歌』
2010年本書『太陽のパスタ、豆のスープ』、『田舎の紳士服店のモデルの妻』
2011年『 メロディ・フェア』、『 誰かが足りない
2012年『窓の向こうのガーシュウィン』

参考「作家の読書道



コメント

井の頭公園池のかいぼり(2)

2014年02月02日 | 日記
池のかいぼりを眺めてから、「アートマーケッツ」をぶらぶら。
相変わらず元気な、というか久しぶりに多くの観客に張り切るおじさんを眺め。




高田純次の昔々の知り合いという顔面紙芝居のおじさんが、子供相手に飛び上るのを横目で見て、



かいぼり隊ののぼりのかかるテントを覗こうとするが、



とても近づけない。一番端の隙間から覗くと、



TV,新聞の効果だろう、今日はいつになく人が多い。



神田川沿いのブランコ、鉄棒のある公園へ通りかかると、丘に上がったボートの置き場になっていた。



井の頭線のガードをくぐり、三角公園わきにかかると、川の中に白い服を着た髪の長い女性が立っている。



おそるおそる前に回ると、



顔を青く塗っている。(メガネは私がかけさせてもらいました)



写真撮影のモデルさんでした。

のどから鳥たちを見ながら帰途へ。



図書館へ寄ったりして、今日は9600歩。

























コメント

井の頭公園池のかいぼり(1)

2014年02月01日 | 日記
TVや新聞で見た方も多いだろう。井の頭公園の外来魚を駆逐し、水質を改良するために、池の水を抜いて、池をかいぼりしている。

土曜日の午後、でかけると、いつにない人ごみだ。4月の花見シーズンかとまごうばかりだ。



かいぼり作業の予定で張り出されていた。



ボート池、ひょうたん池、お茶の水池、弁天池と池には 4区画あるが、今回は弁天池は護岸が崩れる可能性があるのでパスし、他の池はすべてかいぼりするという。
そして、この間、在来生物は、弁天池エリアと自然文化園ないのいけすで保護し、かいぼり終了後に再放流される。

ひょうたん池の端から、



水が汲み出されていて、橋の下に放流され、



これまで通り、神田川の水源になる。



かいぼり作業は、募集したボランティアが活躍だ。



太ももまで泥につかり、網で魚を救い上げる。ご苦労様。



帰り際にもう一度見たら、かなりの人数になっていた。



完全に水を抜いたところは、干上がっていた。このまま日に当てると、有害な藻が発生しにくくなるらしい。



池の周囲を回る道は囲いができて入れなくなっている。



七井橋は鈴なりの人。



弁天池だけが水をはっていて、



広いボート池も一面の泥。



200台以上引き上げたという自転車もまだ残っている。



西側も泥。



長くなったので、帰り道は明日。


































 
コメント