hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

森浩美『家族の言い訳』を読む

2024年05月31日 | 読書2

 

森浩美著『家族の言い訳』(双葉文庫も-12-01、2008年12月14日双葉社発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

家族に悩まされ、家族に助けられる。誰の人生だってたくさん痛み、苦しみ、そして喜びに溢れている――。作詞家・森浩美がその筆才を小説に振るい、リアルな設定の上に「大人の純粋さ」を浮かび上がらせた。「ホタルの熱」「おかあちゃんの口紅」はラジオドラマや入試問題にもなった出色の感動作。あなたの中の「いい人」にきっと出会える、まっすぐな人生小説をお届けします。

 

8編の短編集。

 

「ホタルの熱」

夫が失踪し、お金もなく、追い詰められた和香子と6歳の息子・駿。体が弱い駿は、この日も旅の途中で発熱してしまう。困る親の姿を見続けた駿は「ママ、ごめんね」と繰り返す。覚悟を決めて電車に乗ったはずなのに、……どうせもっと“遠い場所”へ連れて行ってしまうつもりだったのに……。
親切な民宿の女将さんに助けられ、布団に寝かされた駿は和香子にしがみついた。

 

「乾いた声でも」

桐原由季子の夫は、家庭を顧みない会社人間だったが、社内紛争に巻き込まれ、リストラ役の辛い仕事に異動させられ、遅くまで仕事中の会社で倒れた。一緒に働いていた部下の藤崎が病院で夫を看取ったのだ。由季子が20代後半の美人の藤崎に会うと、彼女は「あの、奥様……私のこと疑っていらっしゃいますね」という。

夫の先輩の武井が言った。「よく夫婦を戦友に例える人がいるでしょう。僕はちょっと違う意見なんだな。妻は一緒に戦ってくれなくてもいいんです、戦いは僕がしますから。だからその代わりにせめて味方でいてほしいんですよ」

 

「星空への寄り道」

会社を潰し後始末に苦労する島本は、深夜ようやく捕まえたタクシーの運転手から、女子高生だった娘・有美子が友達の家でタバコを吸って火事を出し、幼い子供が死んでしまい、自殺した。葬儀の晩、妻が「お父さん、有美子は星になったんですよね」と星空を見上げながらおいおい泣き通した。

 

「カレーの匂い」

檜山舞子は休刊が危ぶまれる30代独身女性向けの雑誌の副編集長。部下に厳しく、小さなミスを一つでも見つけると、そこを集中的に突くということで、“キツツキ”と陰口を叩かれている。母は「本当に賢い女は負けてあげられる余裕を持っているの」という。舞子は田辺と不倫しているが……。

 

「柿の代わり」

女子高の教師が結婚1年半の妻から離婚したいと言われ、万引き先から助け出した生徒には舐められる。

 

「おかあちゃんの口紅」

貴志は田舎の母の検査結果を聞きに久しぶりに妻・靖子と帰郷する。母の病気は……。金銭的に余裕ができた貴志が母に何をあげてももったいないと使わずにしまい込むだけで、イライラさせられていた。子供の頃、瓶集めで貯めたお金で、授業参観に来る母に口紅を買ったことがあった。

 

「イブのクレヨン」

正洋は5歳の誕生日でクリスマスに母・冨美子にクレヨンを買ってもらい、母の似顔絵ばかり毎日描いていた。祖父母の家に行って、朝、目が覚めると母はいなくなっていて、大切なクレヨンも行方不明になった。母はそれ以来音信不通だ。今はイラストライターをしながら、妻・里香子の連れ子のエリカと仲良く暮らしている。今年のイブのプレゼントはクレヨンだった。包装紙の中からクレヨンの箱が現れた瞬間、手だけでなく身体からすべての動きが失われた。……。

 

「粉雪のキャッチボール」

10年前、北軽井沢のホテルの支配人になった父は一人で赴任した。65歳の誕生日に退職し、息子の私に頼みがあるとの手紙が届いた。ホテルの従業員の中村は「父は子煩悩で、キャッチボールは親子の基本だとか言い張って……」と云い、私も「あるよ、一度だけ」と答えた。

 

 

この作品は2006年3月双葉社より刊行。

 

 

森浩美(もり・ひろみ)

放送作家を経て、1983年より作詞家。男性。

現在までの作品総数は700曲を超え、荻野目洋子「DanceBeatは夜明けまで」、田原俊彦「抱きしめてTONIGHT」、森川由香里{SHOWME]、スマップ「青いイナズマ」「SHAKE」「ダイナマイト」、KinkiKids「愛されるより愛したい」などの数々のヒット作を手がける。

著書に掌編小説集『推定恋愛』『推定恋愛twoーyear』『こちらの事情』など。

 

 

私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき、 最大は五つ星)

 

ともかく泣ける。お母さんはもちろん、涙もろくなったお爺さんも。どうせ読むのなら、手練れの作者の仕掛けに乗って、そうだったのかと驚いて、泣いて、楽しみましょう。

 

母子心中しようとした身体の弱い子供に、「ボクさ、……今度……生まれてくるときは元気な子に生まれてくるから……そうしたらまた……ママがボクを産んでくれる?」と言われたら貴女は………。

 

「おかあちゃんの口紅」も、「イブのクレヨン」も、良い、できた奥さんですね。まるで……。

 

 

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岡真理『ガザとは何か』を読む

2024年05月29日 | 読書2

 

岡真理著『ガザとは何か パレスチナを知るための緊急抗議』(2023年12月31日大和書房発行)を読んだ。

 

大和(だいわ)書房による紹介

【緊急出版!ガザを知るための「まず、ここから」の一冊】

2023年10月7日、ハマース主導の越境奇襲攻撃に端を発し、イスラエルによるガザ地区への攻撃が激化しました。

長年パレスチナ問題に取り組んできた、パレスチナ問題と現代アラブ文学を専門とする著者が、平易な語り口、そして強靭な言葉の力によってさまざまな疑問、その本質を明らかにします。

今起きていることは何か?
パレスチナ問題の根本は何なのか?
イスラエルはどのようにして作られた国?
シオニズムとは?
ガザは、どんな地域か?
ハマースとは、どのような組織なのか?
いま、私たちができることは何なのか?

今を知るための最良の案内でありながら、「これから私たちが何を学び、何をすべきか」
その足掛かりともなる、いま、まず手に取りたい一冊です。

本書は、10月20日京都大学、10月23日早稲田大学で開催された緊急セミナーに加筆修正を加えたものです。

 

岡真理(おか・まり)

1960年生まれ。東京外国語大学大学院修士課程修了。

在モロッコ日本国大使館専門調査員、大阪女子大学人文社会学部講師、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を経て、早稲田大学文学学術院教授。

専攻は現代アラブ文学・第三世界フェミニズム思想。

 

 

「はじめに」はこう始まり、著者の立場をはっきりさせている。

2023年10月7日の、ハマース主導のガザのパレスチナ人戦闘員による越境奇襲攻撃に対して、イスラエルによる未曽有のジェノサイド攻撃が始まりました。攻撃開始からわずか二週間で、ガザのパレスチナ人の死者は4000人を越えました。うち半分近くが子供です。

 

1947年、人口的に1/3、数%の土地しか持っていなかったユダヤ人に、パレスチナ人の土地を与えるという国連の分割案が決定され、ホロコーストには何の責任もないパレスチナ人が代償を支払わされた。

しかもその後、ことあるごとにイスラエルは領土を拡大し、域内の民族浄化でパレスチナ人を難民として追い出した。

これに対し、1957年アラファト議長率いる「ファタハ」が誕生し、1987年の第一次インティファーダで「ハマース」が誕生する。

 

今回の2023年10月7日の、ハマース主導の奇襲攻撃は、占領軍であるイスラエル軍に対する抵抗として国際法上認められる抵抗権の行使です。狙ったのはガザ周辺のイスラエル軍基地ですが、民間人を殺したのは戦争犯罪です。

 

以下、イスラエルがガザで行っている残忍な行動について語られる。例えば、汚水処理施設が破壊されて飲み水がない、経済基盤が破壊され失業率は46%、住民の8割が国際的人道援助に依存等々。イスラエルによって、ガザの若者はテロに走らされている。

ガザは「天井のない世界最大の野外監獄」ではなく、「世界最大の絶滅収容所」だ。

この辺りは読んでいて、辛い。

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

若いころからパレスチナに心を寄せる者の義務として、この本を読んだ。おおよその内容は承知していたが、読んであらためて確認すると、辛い。

 

ハマスでなく、より穏健なパレスチナ政府が統治するヨルダン川西岸地区でも、その60%はイスラエル軍が行政権、軍事権共に実権を握り、ユダヤ人入植地は増え続けていると知って、これではパレスチナ人に希望はないと改めて思った。

 

この著者の主張に異論はないが、理由、根拠を明らかにした上であるにしても、「ジェノサイド」「虐殺」とか強い言葉は控えた方が良いと思う。レッテル貼りの応酬になってしまう。

 

著者が本当に言いたかったことは、パレスチナへの世界の無関心こそがこの暴力の応酬の大きな原因だということではないかと思った。
この本の中に、耳に痛い言葉があった。

「地獄とは、人々が苦しんでいるところのことではない。人が苦しんでいるのを誰も見ようとしないところのことだ」 イスラーム中世思想家マンスール・アル=ハッラージュの言葉

 

 

目次

■第1部 ガザとは何か
4つの要点/イスラエルによるジェノサイド/繰り返されるガザへの攻撃/イスラエルの情報戦/ガザとは何か/イスラエルはどう建国されたか/シオニズムの誕生/シオニズムは人気がなかった/なぜパレスチナだったのか/パレスチナの分割案/パレスチナを襲った民族浄化「ナクバ」/イスラエル国内での動き/ガザはどれほど人口過密か/ハマースの誕生/オスロ合意からの7年間/民主的選挙で勝利したハマース/抵抗権の行使としての攻撃/「封鎖」とはどういうことか/ガザで起きていること/生きながらの死/帰還の大行進/ガザで増加する自殺/「国際法を適用してくれるだけでいい」

■第2部 ガザ、人間の恥としての
今、目の前で起きている/何度も繰り返されてきた/忘却の集積の果てに/不均衡な攻撃/平和的デモへの攻撃/恥知らずの忘却/巨大な実験場/ガザの動物園/世界は何もしない/言葉とヒューマニティ/「憎しみの連鎖」で語ってはいけない/西岸で起きていること/10月7日の攻撃が意味するもの/明らかになってきた事実/問うべきは「イスラエルとは何か」/シオニズムとパレスチナ分割案/イスラエルのアパルトヘイト/人道問題ではなく、政治的問題

■質疑応答
ガザに対して、今私たちができることは?/無関心な人にはどう働きかければいい?/パレスチナ問題をどう学んでいけばいい?/アメリカはなぜイスラエルを支援し続けるのか?/BDS運動とは何?

■付録
もっと知るためのガイド(書籍、映画・ドキュメンタリー、ニュース・情報サイト)
パレスチナ問題 関連年表

 

 

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包丁と私

2024年05月27日 | 個人的記録

 

島崎藤村の「初恋」は、「まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき 前にさしたる花櫛の 花ある君と思ひけり」で始まり、「やさしく白き手をのべて 林檎をわれにあたへしは…」と続く。

私もりんごは女性にむいてもらう方が勿論好きなのだが、りんごの皮むきは嫌いではない。皮をつなげたままどこまでむけるかゲームのようなところもあり、小学生のときから一人でチャレンジしていた。もちろん、ギネス記録の53メートルには遠く、遠く及ばないのだが。

記録を狙う人は、りんごを回しながら、皮にカッターでらせん状に刻みを入れていく。その時、可能な限り線と線の間隔が狭い幅になるようにする。上からはじめて下まで刻み終わったら、細い紐のようになる皮をむいていくのだ。極度の集中力を必要とする作業で、想像するに、むき終わったらもはや、りんごを食べる元気はなくなっているだろう。

 

小学校の遠足の時だったと思うが、女の子の前でりんごをむくことになった。いつものようにスルスルとむかず、わざと鉛筆を削るように皮を削り取っていった。見ていた女の子は「何してるの! しょうがないわね」と言って、笑いながらりんごとナイフを取り上げてむいてくれた。俺とどっこいどっこいだなと思ったが、感心したように見ていた。小学生にして、あざとく母性本能を刺激して、女性の関心のひき方を習得した私だが、その後は生来のひねくれ根性とこの顔のせいで、技を磨けず、錆びつかせたままで終わりを迎えている。

 

食い意地はっていた青年期はともかく量さえあれば良いと、料理に全く関心が無く、包丁にも縁がなかった。結婚しても、親父の見様見真似で魚を三枚におろすときと、研ぐとき以外は包丁を持つこともなかった。

 

数十年前のことだが、正月に職場の長の家に何十人もおじゃましてご馳走になる慣習がわが職場にあった。上司の奥様は家で料理を教えている方で、手伝いに行った女房がいろいろ教えていただいた。その技のひとつに玉ねぎのみじん切りの仕方がある。どの程度普及している方法なのか知らないのだが、以下ざっと説明したい。

まず皮をむいた玉ねぎを縦半分にし、根の所は取らないでおく。玉ねぎは根元を向こう側にしてお椀のように伏せ、繊維方向、つまり縦方向に沿って薄く切り込みを入れていく。この時、刃先側で玉ねぎの上端を切り離さないようにする。
次に、玉ねぎを反時計方向に90度回し、包丁を横にして、まな板に対し水平に2,3箇所切れ目を入れる。最後に、玉ねぎを右端から細かく刻んでいけば、みじん切りの出来上がりだ。

玉ねぎで眼が痛くなるからと苦手の女房に代わり、この技を習得させられた私が、上司の奥様の技の継承者で孫弟子となっている。そして、こんなはずではなかったと思いながら、平和を愛する私は幸せをかみしめ、みじん切りに涙を流すのだ。

 

定年になって女房に「私に定年はないの?」と問われて、そうか、これからは家事も手伝わなくてはいけないのかと初めて気が付き、徐々に、洗い物と、食材の下ごしらえだけは手伝うようになった。と言っても、レタスは手で千切るし、包丁を使うのは、キャベツ、トマト位だろうか。最近では調理済みの食材も多いし。

 

あくまでお手伝いの立場はわきまえていたのだが、気が付くといつのまにか昼飯は私の担当になっていた。といっても、外出すると、ランチは外食していまうことが多く、私の出番は毎日ではない。また、昼飯を家で食べるときも、せいぜい、卵焼きを作ったり、豆腐を切って削り節を載せる程度で、あとは前日の夜の残り物や、いつも冷蔵庫にある副食品をテーブルに並べるだけのことが多い。要するに正直言えば、ほぼ配膳係に過ぎない。

 

そうそう、ここ10年以上、ぬか漬けを担当していることを忘れていた。キュウリ、カブ、ダイコン、ニンジンなど適当な大きさに包丁で切って、漬けて、取り出して刻んで、毎日の食卓に漬物を欠かしたことがない。

 

こう書きだしてくると、僕ってけっこうやってるじゃない! もう、昭和男子とは呼ばせない。令和はちょっと言い過ぎだが、平成男子ぐらいには言われても良いはずだ、と相方に聞こえないように小さな声で言っておきます。

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台湾屋台飯の祥福堂でランチ

2024年05月25日 | 食べ物

 

井の頭通り沿い、井の頭南病院の向かい側にある小さな「台湾屋台飯・小吃 招福堂」だ。

「屋台」とあるように、基本持ち帰りの店で、壁際に座れるようになっていて、小さなテーブルで食べることもできる。

 

 

この店、昨年3月にオープンしたのだが、なかなかチャンスがなくて、今回が初めて。

営業時間

 

パラパラと持ち帰りのお客が訪れる中、我々は、お客さんが注文する後ろに座って食べることに。

私は牛肉麺。

「パクチーを載せますか?」と聞かれて、やせ我慢して「お願いします」と答えて、ちょっと鼻についた。

 

 

相方は、やさしい味でもちもちの「油飯(台湾おこわ)」

見た目はいまいちだが、もっちりとし、色々入っていて、美味しい。半分回ってきたが、イケる。

 

それぞれ、¥800、¥600とお手軽。簡単に食べられるので、持ち帰るより、狭くてもここで食べてしまった方がいいかな。

 

 

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彼と私とボランティア

2024年05月23日 | 個人的記録

 

高校で知り合った親友は、正義感が強く、常に弱きものの味方だった。特にボランティアに熱心で、大学は違ったのに何かというと私を熱心に誘った。

 

ためらう私を強引に日本点字図書館の点訳講座に参加させた。私は講座をようやく卒業したのだが、あまりにも地味な作業で、最初の一冊の本の点訳途中で挫折した。なんで、ポツポツと点を打っていく機械でも出来そうな作業を、美徳であるかのごとく、じっと我慢して人がやらなければいけないのか疑問を持ってしまった。彼は、私には特に言わなかったが、その後も点訳を続けていた。

 

グローブが足りないという茨城の小学校の新聞記事を読んで、いやがる私を連れて、グローブやお菓子を買い、わざわざ小学校まで行って渡したこともあった。

 

私と違って努力家で優秀な彼は東大に合格したが、何事にも真面目な彼は党活動を始めた。私を裏街道に引き込むのをためらったか、私が大の組織嫌いと知ってか、この時だけは私を誘わなかった。彼は就職した会社でも組合活動し、地味な裏方の部署に配転された。それでも逢った時には、仕事の話を熱っぽく語っていた。しかし、結局、管理職にはならずに定年になった。彼の父親も東大を出て平のままで退職という同じコースだった。彼からは、父親が嬉しいが複雑な思いらしいと聞いた。

 

学生時代、彼に誘われて千葉県館山の施設建設のボランティアへ参加した。これはいつもとは逆で、私の方が熱を入れて何年も続けた。彼はエネルギーを政治活動の方に振り向けるようになり、二人は年に何回か逢うだけになっていった。

館山の施設でのボランティアは肉体労働で、私の性に合っていた。山の太い木を切り倒し、崖をコンクリートで固め、山に道を作り、ブロックで家を建てた。泊まる所は戦時中に東京湾に入って来る米艦を砲撃するために掘られた洞窟で、若さゆえに厳しい環境も、逆に楽しめた。
ボランティア・グループの半数以上は女性で、クリスチャンの人が多く、和気あいあいの雰囲気だった。若者の政治活動の時代となってからは、物足りない人は疎遠になり、時として我々もデモなどに参加するようになっていった。そして政治の季節が終わり、若い人の参加がなくなってからは、昔からのメンバーで年末に館山で餅つきを行う行事を同窓会と称して細々と何十年も続けた。

 

10年以上前に、彼の奥様から手紙をもらい、彼の突然の死を知った。信じられなかった。なぜしばらく会わなかったのか悔やんだ。彼は相変わらず点字を続けていたという。そういう奴なのだ。

 

しばらくして、窓から空を見上げた時、青空を一直線に飛行機雲が伸びていた。突如、初めての俳句もどきが浮かんだ。

 「畏友逝き 空を切り裂く 飛行機雲」

 

 

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田中聡『施設に入らずに「自宅」を終の住処にする方法』を読む

2024年05月21日 | 読書2

 

田中聡著『施設に入らずに「自宅」を終の住処にする方法』(詩想社新書36、2021年8月28日詩想社発行)を読んだ。

 

詩想社による内容紹介

病院、施設、それとも自宅か、
あなたは大切な人をどこで看取るか
そして、自分はどこで逝くのか・・・

よりよく生きたいと思えば
「よりよい最期」を求めることは当然のことだ。
しかし現在、人の最期においては、
医療、介護の関係者がかかわるだけで、
居心地のよさを追求する住環境の専門家の視点はほとんど加味されていない。
病院や施設などの自由が制限されるなかで、
その他、多くの人たちと一律に扱われて亡くなっていくことが、
はたしてその人らしい最期と言えるのだろうか。

一級建築士でありながら、自身で設計した介護施設の施設長も務めた著者は、
人間がその人らしい最期を迎えることができるのは、自宅しかないと考える。
要介護となっても、穏やかで上質な時間を過ごし、
尊厳ある最期を迎えることのできる終の住処のつくり方を説く。
安心老後住宅にするための戸建て住宅、マンションのリフォーム法や、
最期まで暮らせる新築住宅を提案。
さらには、介護施設長だった経験から、
よい介護施設、悪い介護施設の見分け方についても施設運営の裏事情とともに明かし、
理想的な「最期の居場所」を考察する。

 

  • 2017年の死亡者134万人のうち、最後の居場所は、
    病院が約100万人(75%)、自宅約17万人(13%)、老人ホーム訳10万人(7.5%)
  • 2012年の希望(意識調査) 病院(28%)、自宅(55%)、施設(9%)
  • ホスピスの一般的な入居条件は、末期がんなどで余命宣告をされていること。
    日本ではホスピスは絶対量が少なく、質よりも量も必要な段階。
  • 病院で働く9割の医師や看護師は、人が自然に穏やかに亡くなる過程を一度も見たことがないと言われている。

  • 入居者の平均介護度が高い順
    特養(要介護3以上)、介護老人保健施設(老健)、グループホーム、介護付有料老人ホーム(介護付有老)、サ高住、住宅型有料老人ホーム、ケアハウス
  • 利用料が高い順    介護付有老、サ高住、グループホーム、特養、ケアハウス
  • 特養は社会福祉法人が運営主体で補助金も潤沢で、内部留保が数億円の特養が多いことが問題になった。入居者はなるべく手間のかからない人を優先する殿様商売傾向が疑われる。

  • サ高住は自立度が高い人を想定した制度で、サービスとは介護せずに見守るだけの安否確認サービスである。実際には特色づくりに頑張っているサ高住も増えているが、単にハコモノだけのものもそれ以上に増えている。

  • オープン後2年以上なのに常時空室のところは見学に行くだけ無駄。
    常時満室のところは、地域最安値か、入居者のためのサービスを充実させているところだ。

  • 老健は、2~3カ月のリハビリをして自宅へ戻るという在宅復帰支援のための介護施設。

 

  • 介護施設、老人ホームへの入居を迷うくらいならやめた方がよい。入るのは簡単だが、新たな行き場所がなく、金銭負担も大きく、出るのは難しい。

  • 自宅介護の心得
    ・家族は介護のために仕事を辞めてはだめ。できる範囲での介護をする。
    ・介護のための同居は避ける。簡単ではないが、寝たきりになってもできる。
    ・仕事に向かうように介護に取り組むと、「敗戦」への直行ルート。介護はあきらめる撤退戦。

 

  • 介護ヘルパーのタイプ
    ・「上から目線型」赤ちゃん言葉で話しかけ、命令口調で指示
    ・「ダメダメ型」やることなすことダメ出し
    ・「職務優先型」食べ残しは悪で、完食を絶対とする
    ・「新人類型」介護には興味がない。携帯ゲームし放題な夜勤大好き
    ・「優等生型」親の介護経験ありか、お年寄り好きな若い女性

  • 介護現場でも「サシミの法則」3割は良く働き、4割は普通で、残り3割はあまり働かない

 

  • 50件中2~3件の良い施設の見つけ方
    ・1カ月程度の体験入居をしないと本当のところは分からない。
    ・老人ホーム紹介業は、複数の候補選定に留める
    ・口コミサイトは信用しない

  • 入居施設から退去するか迷ったら
    ・その施設に自分を理解してくれ、本音で相談できるスタッフがいれば急いで退去しなくてよい
    ・良い施設は簡単に見つからないし、長期間良い状態であり続ける可能性は低い
    ・要介護3以上の方には退去を強くは勧めない
    ・要介護2以下の方は自宅エリア担当の親身になってくれるケアマネを探して、自宅で生活するべき
    ・自宅介護が難しくても、本人が望むなら、せめて最期の2~3週間だけでも自宅での生活を検討したら

 

  • よいケアマネと在宅医の見つけ方

・ケアマネには在宅看取り積極派と各論反対の消極派がいるので、面談して前者を選ぶ
・在宅医はケアマネから紹介してもらうのがベスト。厳しくても現実的なことを云う医師がよい。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

著者は元サ高住の施設長なので介護現場の実状が分かり、なるほどと思う点が多い。ただし、全体状況ではなく、個々の実例に基づく話の羅列だが。

 

自宅介護のための方策はあまりなく、なんとかなると言うばかり。一方で、施設の問題点は、あれもこれもと指摘する。

 

 

田中聡(たなか・さとし)

1966年生まれ。一級建築士、介護福祉士。東京理科大学大学院修了後、大手ハウスメーカー等で設計、営業に携わり、「家づくり」一筋約30年。

サービス付き高齢者向け住宅を企画設計し、自身で施設長も務める。

現在は、「終の住処コンサルタント」として活動。たとえ要介護になっても穏やかな老後生活を送り、尊厳ある最期を迎えることができる住宅の企画提案、情報発信をしている。
「終の住処 設計企画 」 banfoo@nifty.com

 

 

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齋藤孝『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い人」』を読む

2024年05月19日 | 読書2

 

齋藤孝著『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い人」 「あの人は深い」と言われる話し方』(詩想社新書38、2023年2月21日詩想社発行)を読んだ。

 

表紙裏の説明を以下に示す

私たちのまわりにあふれる「浅い話」

      • 当たり前のことばかり述べる話
      • ポイントを押さえていない掘り下げ方の甘い話
      • 具体性がなく、終始、漠然とした話
      • 思い込みが強くて視野の狭い話
      • ものを知らない、知識のない人の話
      • 思いつきだけで、思考の形跡がない話
      • 人生観のない話
      • 普遍的視点がない話

……これら「浅い話」の問題点を解き明かし、「深い話」をする技術を説く。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

ひねくれ者の私は、もともとハウツー本が嫌いだ。自分なりのやり方を工夫する中で確立したやり方が、はじめてしっかり身につくのだ。教わるのは基本中の基本だけで、それ以上を教わっても効率的だが、少なくとも自分のものではなく、我が流儀ではない。

 

というわけで、かっての愛読書『声に出して読みたい日本語』の著者である齋藤さんの本であり、人気だそうだから読んでみたが、内容に異論はないが、とくに読む必要があるとも思えない。具体例が今一つ深くない(話が浅く?)。

話が浅い例はいくらでも例示できるが、深い例は、状況によって異なるので、一般論で語るのは無理があり、例示するのも難しいだろう。

 

日ごろ惰性に流れがちな自分の情報取得方法を見直し、考え方がワンパターンになってないかをチェックするには、この本はチェックリストとして有効だろうと思う。

 

今時、悪の権化のように言われる(?)「教養」書が売れているとは? まだまだ、私のように「教養がないと思われることを何より恐れる」人が残っているということなのか?

 

 

齋藤孝(さいとう・たかし)

1960年静岡県生まれ。東京大学法学部、大学院教育学博士課程等を経て、明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。

著書に、『声に出して読みたい日本語』、『1分音読「万葉集」』、『齋藤孝のざっくり! 万葉集 -歴史から味わい方まで「すごいよ!ポイント」でよくわかる』、『雑談力が上がる話し方』、『読書する人だけがたどり着ける場所』、『「文系力」こそ武器である』、『いつも「話が浅い」人、なぜか「話が深い人」』など。

 

 

70行とあまりにも長い詩想社の内容紹介がネットに出ているので、そのまま紹介して、私の内容紹介は省略。

<目次>
まえがき◎あなたのまわりの「浅い人」
第1章 話の「浅い人」、「深い人」の違いはここだ
「深い話」をするために必要な3つの能力
「展開力」があると話は深くなる
「練られたもの」が深さである
深い人は「感覚の変容」体験がある
受け売りの誤情報に飛びつく「浅さ」
・・・など
第2章 本質がわかっている人は、やっぱり深い
普遍的な部分にまで思考できる人は深い
深さとは「具体的かつ本質的」なものだ
「本質」は斬新なものより「一見、平凡なもの」にある
「深さの感覚」を養う練習
細部に着目すると本質が見えてくる
・・・など
第3章 深い人は「エピソード」をもっている
具体化する力が話を深くする
話を深くするエピソードとは何か
実は誰もが、深いエピソードをもっている
見えないところで考えている深さ
「判断力」をキーワードにすると深いエピソードが見つかる
・・・など
第4章 「あの人は深い」と言われる話し方の技術
なぜか「深い人」の口癖
「スリーステップ論法」が話を深くする
会議で「あの人の意見は深い」と一目置かれる発言
逆質問に深さが出る
面接試験で深い受け答えをするには
・・・など

 

 

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5月(1)の花

2024年05月17日 | リタイヤ生活

 

5月6日に届いた花

 

 

赤いカーネーション6本、ベニバナ4本と、

ピンクと白紫の八重のナデシコ(ダイアンサス)、一番左手の白のデルフィニュウム。

 

2日後

 

5日後

 

ーネーションのシワシワ

 

ベニハナ(紅花)。既に黄色からオレンジに色が変化している

 

(スプレー)デルフィニウム

デルフィニウムは、つぼみの形がイルカに似ていることから、ギリシャ語でイルカを意味するDelphisという名が付けられた。青系の花色が多い。花屋さんによくあるのが、スプレーデルフィニウムと呼ばれるシネンセ系。その他、花穂を直線に伸ばし、「一本立ちデルフィニウム」とも呼ばれる下の写真のエラータム系がある。

 

 

ダイアンサス(ナデシコ)

ナデシコの仲間であるダイアンサス属は、世界に約300種が分布している。カーネーションもダイアンサス属に含まるが、通常はカーネーションを除いたものを総称して「ダイアンサス」と呼ぶ。 

 

 

ダイアンサス(ナデシコ)

 

 

ダイアンサス(ナデシコ)を横から見ると、

 

カーネーションとよく似ている。同じダイアンサス属だと納得。

 

普段の居場所で落ち着く花々

 

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プレゼントされた花

2024年05月16日 | リタイヤ生活

 

5月12日にプレゼントされたアレンジメント

 

プリザーブドフラワーかと思ったら、下の説明を読むと、生花だった!

 

全体が淡い色合いで優しく、空色が映える

 

豆知識:砂糖や、ましてや漂白剤、氷を入れるなど考えられないのだが?

 

ちなみに、プリザーブドフラワーだったら寿命はどのくらいか検索してみた。
ヨーロッパでは約10年だが、湿度の高い日本では保管場所によっては約1〜2年で劣化する場合もあるという。
10年はともかく、1年も変化なく存在しても目に入らなくなるし、2週間ほどで萎れていく過程を共にできる生花でよかった。

 

 

また、昨年のアジサイの鉢も、切り詰めて、丹念に水やりして、元気に葉がたくさん出てきました。花芽がまだ見当たらないのが心配ですが。そのうちご報告しましょう。

 

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東川篤哉『博士はオカルトを信じない』を読む

2024年05月15日 | 読書2

 

東川篤哉著『博士はオカルトを信じない』(2024年2月19日ポプラ社発行)を読んだ

 

ポプラ社による書籍の内容紹介

中2男子×アラサー女博士コンビがオカルト事件に挑む!『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、連作短編ミステリー。中学2年生のオカルト好きな探偵の息子
×
自称・天才発明家のアラサー女博士

異色の凸凹コンビが町のオカルト事件に挑む、連作短編ミステリー小説!

丘晴人は、君立市君乃町に住む中学2年生。両親が「有限会社オカリナ探偵局」という私立探偵事務所を営んでいるため、町の有象無象の面倒事や困りごとや事件が舞い込む。
両親の手伝いで事件に立ち会う中で、晴人が目にした数々の不思議な事件。
これって、幽霊がやったとしか考えられない――。
事件解決の糸口を見いだせない晴人がひょんなことから出会ったのは、廃墟に住む、白衣を着た女博士。「ひらめき研究所」の看板を掲げながら、謎の発明に日夜没頭する博士に事件を相談するのだが――。
その事件の犯人は、幽霊? それとも人間?

 

「天才博士とあの世からの声」

主人公である平凡な中二の丘晴人(おか・はると、オカルト好き)は、探偵事務所のNo.2である父・40歳(No.1は母・理奈)と、お金持ちの宮国年雄さんのお宅に、娘・美和子さんの病気見舞いに行く。あやしげな祈祷師・雅江や、年雄さんの後釜を狙う家政婦・花岡吉乃、主治医の高木先生が登場し、寝ている美和子さんが変な声で「あの女、花岡吉乃は悪魔じゃ」と叫ぶ。この声がどこから生じているかが謎。

母に頼まれて街外れに行った晴人は、廃墟とまごう『ひらめき研究所』へ迷い込み、所長兼研究員で、自称・天才発明家・天才博士の暁ヒカル29歳に出会う。

以下、ヒカルが推理し、晴人はついていくだけ。

 

「天才博士と赤いワンピースの女」

父・登はテナントビルの屋上から道路向いのを3階を覗き、張り込んでいた。そこへ、赤いワンピースの女が家に入っていく。塚本武志の依頼で妻・典子の浮気調査だった。

 

「天才博士と幽体離脱の殺人」、「天才博士と昭和の幽霊」、「天才博士と靴跡のアリバイ」 略

 

 

この作品は、「季刊asta」VOL. 1~8で連載された「ひらめき研究所の天才的な日常」を改題・加筆訂正した。

 

 

東川篤哉(ひがしかわ・とくや)

1968年広島県尾道市生まれ。岡山大学法学部卒。ガラス瓶メーカー経理部門勤務。26歳で退社。

2002年、『密室の鍵貸します』で作家デビュー

2011年、『謎解きはディナーのあとで』で第8回本屋大賞受賞。シリーズ累計320万部を突破

その他、『交換殺人には向かない夜』、『放課後はミステリーとともに』、『探偵少女アリサの事件簿』、『仕掛島』、『君に読ませたいミステリがあるんだ』など。

著者はインターネットや携帯電話は使ったことがなく、今後も使う予定はないという(by ウィキペディア)今時めずらしい中年の男性だ。

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

ウィキペディアには「著者は脱力系ユーモア本格ミステリの気鋭として知られる」とあるし、赤川次郎氏を思い出させる面もあるが、これまでで最も低年齢層の中学生を対象としたかに見える本作では、ユーモアにひねりがなく、くすりと笑うにはくどすぎて、悪ふざけの領域になっている。

 

また、謎解きも、単純で強引さが目立ち、冴えがない。

 

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5月(2)の散歩

2024年05月14日 | 散歩

 

5月3日、三鷹台駅南の神田川に翻る鯉のぼり「神田川鯉のぼり」

 

散歩途中で見かけた住宅街の小さな工場の解体現場。強力な顎を持つ恐竜が鉄骨に噛みつき、

 

引き倒す

 

身体を曲げて、下から食いつく嫌な奴

 

こちらは、立教女学院正門そばで見つけたそば屋。例によって、ここで昼飯を済ませてしまおうと入った「そば処 やぶ」。

 

テーブルの上の可愛い生花

 

私は、「冷やしむじな」¥850。

「むじな(貉)」はアナグマ、タヌキやハクビシンの俗称。ということで、具は、油揚げ、揚げ玉、昆布、玉子焼き、キュウリ、蒲鉾と、様々。

 

相方は、とろろそば¥920

 

井の頭線久我山駅近辺を散歩中に、久我山駅南東で見つけた「東京都太田記念館」。ジャーナリストの太田宇之助が自宅敷地を寄贈し、東京都が建物を建てた。元々、中国の北京市からの留学生宿舎だったが、2012年からアジア諸国出身の留学生も受け入れている。

丸く大きな門の中に見える丸い玄関。

 

特養(特別養護老人ホーム)の入口に掛かっていた武者絵のぼり。戦国時代の「幟旗(のぼりばた)」や「指物(さしもの)」が起源だという。5人の武者が描かれている。

 

吉祥寺駅南口で見かけた2階の猫カフェ「カピねこカフェ」

 

5月10日10時の、久しぶりに見えた富士山。まだ雪が残っている。

 

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井戸川射子『共に明るい』を読む

2024年05月13日 | 読書2

 

井戸川射子著『共に明るい』(2023年11月7日講談社発行)を読んだ。

 

講談社BOOK倶楽部の内容紹介

\『この世の喜びよ』で芥川賞受賞、待望の受賞後第一作!/

その瞬間、語られないものたちがあふれ出す。

早朝のバス、公園の端の野鳥園、つきあってまもない恋人の家、島への修学旅行、バイト先の工場の作業部屋――。
誰もが抱える痛みや不満、不安、葛藤。
目に見えない心の内に触れたとき、「他人」という存在が、つながりたい「他者」に変容する。
待望の芥川賞受賞後第一作、心ふるわす傑作小説集。


「共に明るい」早朝のバス、女は過去を語り出す。

「野鳥園」産後の女性と少年が過ごす、仮初のひととき。

「素晴らしく幸福で豊かな」出会って一ヵ月、恋人と過ごす不安定な日常。

「風雨」台風で足止めをくらった修学旅行生たちの三日間。

「池の中の」電池の検品バイトでの会話、起こる揺れ。

 

5編の短編集だが、全部で132頁と薄い。

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?  最大は五つ星)

 

詩人としてデビューした著者だが、詩のような文章ではない。まちがいなく物を語っている小説の形なのだが、書き手の心は詩人のままだと思う。ついつい筋を追ってしまう私には面白くない、合わない小説だった。

 

少し前まで赤の他人だったけれど、言葉を交わし、輪郭が浮かび上がる。井戸川さんは「人が触れ合ったときに生まれる、輝く瞬間を描きたかった」と語っている。

「共に明るい」で、主語は「誰か」になっている。性別も人数も不詳のまま、「誰かは思った」とつづる。「映画や演劇では『誰か』という主語は難しいけれど、小説にはできる。小説だけにできることをしてみたい。自分にとって新しいことをしたいと思って書き始めています」。(好書好日より

結局、女性なのだが、なんでこんなことするの??

 

「野鳥園」では、初めて出会った2人の会話が続く。会話の内容から次第に、幼い子供がいる女性と少年が話しているとわかる。「風雨」では、生徒と教師の思いが混じり合い、いま読んでいるのは誰の視点なのか、わからなくなる。

 同時に、それでいいのだと思える。誰かがそこにいて、心を動かし、生きている。そのことがわかれば十分ではないか、その空気にただ身を委ねればいいのだ、と文章が伝えてくる。「誰が何を言っていてもいい。どっちのセリフでもいいなと思って書いています。だから、どっちでもいいやと思ってもらえるのがうれしいですね」(好書好日より

 

こんな小説、楽しくない!

 

井戸川射子(いどがわ・いこ)

1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。

2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行
2019 年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。
2021年に小説集『ここはとても速い川』で第43回野間文芸新人賞受賞

2022年に『この世の喜びよ』で第168回芥川龍之介賞を受賞。

他の著作に、詩集『遠景』がある。

 

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香山リカ『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地」のお医者さんはじめました』を読む

2024年05月11日 | 読書2

 

香山リカ著『61歳で大学教授やめて、北海道で「へき地」のお医者さんはじめました』(2024年2月29日集英社発行)を読んだ。

 

集英社の内容紹介

精神科医として知られる著者は、2022年春、北海道南部のむかわ町穂別にある「へき地診療所」で総合診療医としてデビューした。
この大転換をひっそり決意したのは50代半ば。そこからの転職活動はハードルの連続! 年下の医師から学ぶ総合診療医研修、35年ぶりの自動車運転免許再取得、はじめてのクルマ購入、転職先探しとオンライン面接、大学教授職辞職、慣れ親しんだ東京から北海道への引っ越し……。
そこまでして「むかわ町穂別」に就職した理由は……え、「恐竜」って、何それ、なんで!?
定年が見えた年齢からの一大決心。その発端を少女時代まで遡り、心のままに突き進んだ慌ただしくも魅力的な“人生大転換ストーリー”!

 

小学生のときは、科学が好き、中学生では古生物学や天文学に夢中、高校で上京し東大理学部を受験するも不合格、浪人後も東大不合格となり、併願していた東京医科大学に入学し、はからずも医者への道に。在学中はポストモダンに熱中し、香山リカの筆名でコラムやエッセイを書くようになった。

 

中村哲さんに憧れ、同級生に刺激されて僻地医療にチャレンジしようと、香山さんが、まずやったのは免許取得?? 昔、仮免試験を6回落ちて、やっと取った免許を、事故って更新しなかった香山さんが35年ぶりにチャレンジし、免許取得。はじめて車は買ったが、動かせない。

 

精神科専門だった香山さんは、僻地医療のために、50代も半ば過ぎて総合診療科で研修し直し。多くの大学に面前払いされたあげくに、受け入れてくれたのは卒業後30年以上ご無沙汰した母校・東京医大だった。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで、最大は五つ星)

 

精神科専門の医師が、僻地医療の医師になる苦労は良く分かったが、「だから、何?」っていう内容。

香山リカの作り方はよくわかる。

 

安倍首相に「香山氏は論外」と切り捨てられた香山リカの、私はファンだから、どんな曲がり道を経て医者になったのか、また何を血迷って僻地医療なのかに興味をもって、馬鹿にしながら、面白く読んだのだが、貴女は?

 

 

香山リカの略歴と既読本リスト

 

 

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東急プラザ銀座、銀座三越へ

2024年05月10日 | 日記

 

5月3日の「憲法記念日」、所用で「東急プラザ銀座」へ出かけた。

 

いつも休日は、若い人の邪魔になってはいけないと、近場か、家で過ごすのに、久しぶりにお出かけ。休日の10時頃とあって、電車の中に年寄りがほとんどいない! 若者が多く、派手な格好に目ぱちくり。

 

人波をスイスイ抜けていく、遠い昔の丸の内ガールの後を必死について行く。

東急プラザ銀座に着くと、開店の11時前なので長蛇の列。営業時間は、なぜか11:00~21:00 or 23:00

 

 

東急プラザ銀座の施設コンセプトは、「伝統工芸である江戸切子をモチーフに取り入れた外観デザイン」とあり、歩道の端から上を向いてパチリ。

近すぎるせいだろうか、どう見ても江戸切子には見えない。

 

3つある各エレベーターに長い列ができている。9階、8階の免税店専用エレベーターへの行列に並ぶ。

 

ようやく開店となり、うたい文句「都内最大の市中空港型免税店」へ入る。誰もいない、あれだけ並んでいた人は?

商品は、これで最大! しかも、化粧品ばかり。

ぐるぐると歩き回って、獲物が見つからなかったようで、Customer Roomで一休みしてから、ランチ処を探して10F、11Fへ。

 

驚くことにどのレストランも満員。とくに、11F「回転寿司 根室花まる」は長蛇の列。 10F「つるとんたん UDON NOOD…」は何と35組待ちでロビーに一杯の人。「つるとんたん」には一度入ったことがある。ロイヤルハワイアンセンター内だ。他より行列が短い免税店専用エレベーターに並んでいた人は、どうも9Fで降りてすぐ10Fに上がり、人気レストランに並んだのに違いない。

 

結局、ほぼ唯一並ばないで入れる11Fの「鳥と手打ち蕎麦 とり数寄」にした。年寄りらしくやっぱ蕎麦でしょう。

 

店内は空いていて、若者の姿は見えず。高い所好きな私はさっそく窓際に行ってパチリパチリ。

眼下には、右に行くとまもなく「西銀座通り」に変わる「外堀通り」。

 

この先で、「みゆき通り」と交差する。

 

右手前に「東京海上日動銀座ビル」(会社名が長すぎる!「東海動」にしろ)、左手外れが「Tokyo Downtown Ginza Scramble Crossing」。右に走る通りが「晴海通り」で、見えてない右からの「ソニー通り」がぶつかる細かい縞のあるビルが「みずほ銀行銀座中央支店」。

その手前にかってあった「ソニービル」は、白い覆いを被って改装中。2024年に完成予定の新・Ginza Sony Parkになる。

 

さすが高級そば店。箸に「とり数寄、GINZA TORISUKI」刻印。

 

私は「つけ京鴨蕎麦」。温かい蕎麦は中止とのことで、つけ汁だけが暖かく、蕎麦の上には小さな氷が乗っていた。しっかりした鴨肉が5切れも入っていて、味もよかったが、蕎麦の腰があるというより、硬く感じた。

 

相方は「天麩羅せいろ蕎麦」。蕎麦は天ぷらの下にある。蕎麦は固かったが、天麩羅はごく美味しかったとのことで、お下がりはなし。

 

二人で4,400円。まあまあの値段で結構でした。

 

 

一階に巨大なバッグ。アート? ディスプレイ?

 

外へ出て銀座三越へ、晴海通りを歩いて行くと、中央通りとの交差点の前方の信号が消えている。歩行者天国だった。久しぶり過ぎて、ポカンと眺めていた。

当時の美濃部都知事(懐かしい! あの長い顔、思いだす)の提唱で「歩行者天国」が初めて実施されたのは、1970年8月のこの銀座など東京の4か所だった。私は最初、当時激しかった交通事故で歩行者が亡くなって天国へ行くことかと思った(冗談です)。

 

 

ライオン像(重要文化財)の入口から入って、三越をウロウロ。B2の、温度管理のためにガラスで区切られたチョコレートの「JEAN-PAUL HEVINジャン=ポール・エヴァン」に入る。

 

名前を忘れてしまったが、マロングラッセに成る前の状態という栗菓子があったのだが、一個500円と高くて、それでも一個だけ購入。帰宅してすぐ写真も撮らずに食べてしまった、残念!

 

焼き菓子も3つだけ購入。上がオレンジ、下左がピスタチオ、右がハチミツ。

 

さらに、HOLLANDISCHE KAKAO-STUBE (ホレンディッシェ カカオシュトゥーベ) で有名なバウムクーヘンを購入。

この箱のマークを見た人も多いと思う。

 

ドイツには「モノづくり」の基準があって、中でもバウムクーヘンは、「油脂には必ずバターを使い、ベーキングパウダーは使わない」という伝統をホレンディッシェ カカオシュトゥーベは守っているという。

 

これもさっそく食べてしまった。

通常のバウムクーヘンとは味が違うことは私にもわかった。

 

 

結局、この日は11,000歩。渋谷駅内と、銀座線からの銀座駅内でたっぷり歩かされた気がした。

 

 

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5月(1)の散歩

2024年05月09日 | 散歩

 

秋には柿の実が鈴なりのままで気になってしょうがないこの柿木も、今は若葉がまぶしい

 

牧野富太郎博士や昭和天皇に怒られるが、私にとっては「雑草」だが、この季節、雑草までも輝いている。

 

おお! こちらも鮮やかな若葉がみっちりの塀。

と思ったら、プラスチックで、保育園児覗き防止対策だった。

Goole Lens判定してみると、「ポトス」と出て、ほくそ笑むと、その下にグリーンフェンスとの正解も。

 

 

秋には一面にまっかな実がなるピラカンサに白い花が。 

 

 

ピラカンサは総称で、これはトキワサンザシ(常盤山査子)だと思う。他に、黄色い実のタチバナモドキや、赤い実のカザンデマリがある。

 

 

ツツジ?

 

ツツジに似ているのに、サツキ、アザレア、シャクナゲがあり、開花時期などに違いがある。

ツツジ:よく見かける「オオムラサキツツジ」のことを指す場合が多い。

サツキ:日本では、皐月(旧暦の5月)に花が咲くのでサツキ。

アザレア:ツツジ科ツツジ属の植物の総称は本来「Azalea(アザレア)」。海外で「ベルギー・アザレア」と呼ばれているものが日本の「アザレア」。

シャクナゲ:日本では「ホンシャクナゲ」の仲間だけを指す。

 

これは?

 

覆いかぶさってくるようなアザレア?

 

ラン科ではなく、ヒガンバナ科のクンシラン(君子蘭)

 

左にシャクヤク、右にガーベラ

 

ポピーと、シベリアヒナゲシ(ハナビシソウ)?

 

お屋敷の上に聳える雲のような白い花を咲かせた巨木

 

こりゃ何じゃ? ナンジャモンジャ(ヒトツバタゴ)じゃ! 左手前はハナミズキ。

 

綿のような白い花が一杯

 

世の中には、いや身の回りにも、びっくりすることがゴロゴロしている。
まあ、知らなくても支障はないのだが。

 

 

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