hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

香山リカ『しがみつかない生き方』を読む

2010年08月09日 | 読書2

香山リカ著『しがみつかない生き方 「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール』幻冬舎新書132、2009年7月、幻冬舎発行、を読んだ。

裏表紙にはこうある。
平凡で穏やかに暮らせる「ふつうの幸せ」こそ最大の幸福だと、今、人々はやっと気がついた。雇用、医療、介護など社会のセーフティネットは重要だけれど、自分の外に求めるだけでは、人生はいつまでも満たされない。「ふつうの幸せ」を手に入れるには、「私が私が」という自慢競争をやめること。お金、恋愛、子どもにしがみつかないこと。物事の曖昧さ、ムダ、非効率を楽しむこと。そして他人の弱さを受け入れること―脱ひとり勝ち時代の生き方のルールを精神科医が提案。


「勝間和代を目指さない。」、このオビで約30万部も売ったという本だ。
しかし、前半は、「恋愛」「つらい過去の記憶」、「夢」、「仕事」、「子ども」、「お金」にしがみついてはいけないと、当たり前といえばいえる内容をさらりと書いている。たしかに、これまであまりに前向きなメッセージばかりに囲まれていて、自分自身を追い詰めている人が多かった。しかし、草食系男子が話題になる現在ではある意味当然の考え方で、多くの人は納得するだろうが、インパクトはない。

最後の第10章「<勝間和代>を目指さない」があからさまに、今売れっ子の<勝間和代>という実名(<>付きだが)をあげて、普通の人には不可能とも思われる自己啓発メソッドを提案し、若者たちに対して「頑張れば自分も成功者になれる」という幻想をまき散らしていると非難している。

香山の診察室を訪れる人は年代により変化してきた。
2000年代以前:高望みをしてそれが入手できないことに満たされない。
2000年代: ふつうの幸せにはあるのだが、「これがいつまで続くのか」「これで満足してよいのか」と自問しているうちに、何が幸せかわからなくなってしまう。
最近:「何かあっても何とかなるだろう」という仮定が成り立たなくなっている。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

本書に書かれていることの大半は、もともとあっさり系の私には納得でき、当然と思うことだらけだ。そして、多くの若者に厳しい社会となった現在では当たり前の考え方で、わざわざ教えてもらう話ではない。ただ、まだまだ頑張っている、頑張ろうとしている人には、もう一度落ち着いて考えてみる契機にはなるかもしれない。

第9章の「生まれた意味を問わない」には、「なぜ生まれたかなどという問いにはあまり深く立ち入らない方が身のためだ。」とある。
「本当に答えが出ることはない。逆に、これだ、という答えが出たときは危険なのだ」ということは、頭の片隅にとどめながら悩むべきだ,ということはつけ加えておきたい。

これには全面的に賛成だ。カルト的宗教にとりつかれた人を、私が不気味に感じるのは、まさにその点からなのだから。

香山さんが、診察室から見ていると、「なぜこの人がこんな不幸な目にあわなければならないのか」と神に抗議したくなるような人に、毎日のように出会う。努力したくても、そもそもそうできない状況に人がいると、第10章では、勝間さんを批判する。
しかし、勝間さんは、努力できるはずの人に対して語りかけているはずで、議論はすれ違っている。

10のルールは以下。
第1章 恋愛にすべてを捧げない
第2章 自慢・自己PRをしない
第3章 すぐに白黒つけない
第4章 老・病・死で落ち込まない
第5章 すぐに水に流さない
第6章 仕事に夢をもとめない
第7章 子どもにしがみつかない
第8章 お金にしがみつかない
第9章 生まれた意味を問わない
第10章 <勝間和代>を目指さない

 
香山リカは、1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。

私が読んで、感想を書いた著書は、以下8冊だ。もう飽きた。
おとなの男の心理学』 
<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている
雅子さまと新型うつ
女はみんな『うつ』になる
精神科医ですがわりと人間が苦手です
親子という病
弱い自分を好きになる本
いまどきの常識




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