hiyamizu's blog

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顔の不思議

2018年01月24日 | 個人的記録

    

 

 人間の顔とは不思議なものだ。いや、不思議なのは僅かな差しかない顔を識別できる人間の能力の方だ。例えば、大勢の人の中から見知った人の顔を見つけ出すことは誰にでもできるだろう。双子でもないかぎり、一度しっかり覚えた人の顔を見間違うことはめったに無い。顔を識別できるだけではない。目は口程に物を言うと言われるように、顔に現れる微妙な感情の変化を敏感に感じ取ることもできる。

 

 一方、コンピューターでの人間の識別は目と目の間隔などを数値化して識別するもので、人間ほど微妙な差は識別できない。ましてや、感情の揺れをくみ取ることはまだまだ初歩的な試みが行われているだけだ。

 では、人間はどのようにして人の顔を識別しているのだろうか。詳しいことは今も解っていないと思う。たとえば、見知った人の顔はどんなになっているのか、目は? 眉毛は? と言われても、大きいとか太いなどとは言えても、細かいことは具体的に表現できない。似顔絵描きでもないかぎり、絵に書くこともできない。見れば識別できるだけなのだ。それは、書くことはできないが、読むことはできる漢字に似ている。

 

 顔にはその時の感情だけでなく、今までの歴史の積み重ねも刻まれている。新聞の犯罪者の写真を見ると、すれ違ったら脇に避けたくなるような顔をしていたりする。ベテランの職人さんの顔には、いかにもその道一筋に打ち込んできた人生を感じることがある。

 

 「さて」と言ってあらためて鏡を見る。そこには、相変わらず好きになれないわが顔があるが、もはや鋭さや、嫌味な点は影を潜め、そこにはただ大過なく過ごしてきた無難な人生しか見えない。ひねくれてツッパっていた青年も、ムキになって仕事していた中年もなく、ただ静かな老年があるだけだ。

 

 

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