hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

吉祥寺ハーモニカ横丁で東北を応援

2011年10月30日 | 日記
朝八時過ぎに吉祥寺駅前のハーモニカ横丁へ行った。通常なら日曜日でも、このように、人影まばらなのだが、




駅前からの入口には「がんばろう福島」の旗が。



今日は6月から始まった朝市で、今回は宮城県石巻市を応援するための特産の焼きそば、海産物、野菜や、雑貨を販売している。




吉祥寺の人々を中心に、石巻市の湊町に定点を置いて被災地の応援を続ける「みなと応援村」の活動報告が貼り出されていました。



かわいい雑貨も並んでいました。



次回の朝市は11月20日朝7時から10時まで。ハーモニカ横丁限定商品販売や親子似顔絵教室など。
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と学会『トンデモ本の世界X』を読む

2011年10月29日 | 読書2
と学会『トンデモ本の世界X』2011年7月楽工社発行、を読んだ。

「トンデモ本」とは、「著者は大マジメなのに、常識からするとギャグとしか思えない本」「作者の意図とは別の意味で楽しめる本」だそうだ。例えば、「東京スカイツリーは原発よりも危険だ」「阪神淡路大震災は核爆発で起こされた人口地震だ」「日本は宇宙戦艦『大和』を建造せよ」など著者が大真面目に主張する本だ。

石原慎太郎『スパルタ教育』
「父親は夭折することが理想である」石原さんはこの本の42年後も元気だ。
「わたくしの家庭では、妻や、母親は反対するが、わたくしは子どもたちの前でヌード写真の氾濫した雑誌を隠さぬことにしている」なんだ、いいこと言ってるじゃん。

山野車輪『マンガ嫌韓流4』
「日本の性犯罪率は一万人当り0.74件だが、韓国は3.16件で、韓国は性犯罪大国」「韓国では昔から強姦が横行し、強姦も辞さない父親の粗暴な遺伝子が受継がれ」と主張する。しかし、1000人当り強姦件数は、南ア1.2件で韓国0.12件は16位、日本は0.018件で58位。犯罪が異常に少ない日本とだけ比べるのは欺瞞だ。

安部司『食品の裏側』
著者は添加物(白い粉)だけでラーメンのスープが作れると実演して見せる。しかし、そのリストにはネギやゴマだけでなく、豚骨エキスやガラエキスが入っているのだから豚骨スープができるのは当然だ。これで味噌ラーメンができたら私は驚くけど。

大川隆法『宇宙人との対話』 
「幸福の科学」主催の大川隆法氏は、古今東西の偉人の霊や宇宙人が降りてきていろいろなことを喋るという。昭和天皇は「裕仁です」と、明治天皇は「明治です」と自己紹介するという。明治は名前ではないだろう! 

こんな調子で、突っ込みどころ満点の、笑える本がズラズラ並ぶ。


と学会 
 1992年に結成された趣味人の集まり。現在の会員数は約120名。
各自のトンデモ本コレクションを持ち寄って楽しむことから活動を開始。活動の成果をまとめた『トンデモ本の世界』(洋泉社、1995)がベストセラーとなり、「トンデモ」という言葉が広まるきっかけをつくる



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

ジョークとしか思えない本がかなり出まわっていることがわかった。しかし、この本で次々紹介されるトンデモ本のおかしな点を、揚げ足取りのように笑い飛ばして読んでいるうちになんだか虚しくなってきた。社会の大きなムーブメントにならない限り、「イワシの頭も信心から」と、目くじらたてずに突き放していれば良いのだと思えてきた。


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村上春樹、安西水丸『日出る国の工場』を読む

2011年10月27日 | 読書2
村上春樹、安西水丸著『日出る国の工場』新潮文庫 む-5-7、1990年新潮社、発行を読んだ。

村上春樹が、お友達でイラストレーターの安西水丸と7つの工場を見学したレポートだ。
取材工場は、人体模型の工場、結婚式場、消しゴム工場、小岩井農場、コム・デ・ギャルソンの洋服工房、CD工場、かつら製造工場。
取材したのが1986年と工場自体はだいぶ古いのだが、工場の紹介というより、村上さんの変な妄想混じりの文章と、安西さんの脱力系イラストのゆる~い話が主体だ。

メタファー的人体標本 京都科学標本
学校の理科室でおなじみの骨格標本やどぎつい色の臓器の人体解剖模型などを作る日本で唯一の工場だ。浣腸練習用の浣腸施薬シュミュレーター25万円など誰が買うのだろうか。

工場としての結婚式場 松戸・玉姫殿
特定の新郎新婦になりきって相談カウンター担当者との会話を創作する。会話が進み、次々と段取り、値段が決まっていく。まさに流れ作業で工場のように。

消しゴム工場の秘密 ラビット
今は少数派になった合成ゴムの消しゴムのけっこう複雑な製造工程に取材チームはただうなずくだけ。
消しゴムの角を取る工程は5時間くらい機械の中で回す。硬いゴムは金網のなかで、柔らかいのは木の中で回す。
たぶん僕なんかはまわりが金網の方に放りこまれちゃうんじゃないかという気がする。5時間くらい回されて出てきたらすっかりカドがとれていて、『笑っていいとも』に出て「ワッ」なんてやってたりしてね。どうでもいいようなことですけど。


経済動物たちの午後 小岩井農場
牛は乳の量と脂肪の率から能力指数を算出され名札に付けて偏差値のように牛はこの値だけで評価される。擬牝台(ぎひんだい)というダッチワイフのようなものまでもある。牧場は工場で、牛は単純に製品として扱われている。

思想としての洋服をつくる人々 コム・デ・ギャルソン
コムデギャルソンは業界雑誌からはかなりな反撥をくらっている。
たしかに僕なんかから見ても、なんとなく生意気そうだし、つきあいも悪そうだし、自分のことしか考えていないように見えるから(僕の人間的特性と酷似している)・・・。


ハイテク・ウォーズ テクニクスCD工場


とことん明るい福音製産工場 アデランス
かつらというのは口コミがまったくない商品だ。品質が良くてもペリペリとはがして見せて他人に勧めてくれることは期待できない。
アデランスの本社地下には個室理容室がある。カツラをとって地毛を散髪し、その間にカツラのメンテをしてもらう。
日本の推定薄毛人口は約750万人、かつら使用者数は約50万人。
でも女の人の切った髪ってじっと見ていると何となく恐いですね。僕も昔、ある女の子に切ったばかりの長い髪をもらったことがあるけど・・・まあ、いいや、この話は。


この作品は1987年4月平凡社より刊行された。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

めったに見ることもない工場をのんびり、ふむふむと見学する村上さん、安西さんと編集者の3人。典型的な工場の消しゴム工場やCD工場見学は“うなずきトリオ”になって面白みがないが、式次第を決めていく工程を工場のように進め結婚式場の章や、牛を経済動物として完全に割りきって扱う牧場の章が面白い。アデランスは特殊な商品で、なるほとと思うことが多く、自分の頭を忘れて笑ってしまった。



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上野千鶴子『女ぎらい』を読む

2011年10月24日 | 読書2

上野千鶴子著『女ぎらい -ニッポンのミソジニー』2010年10月紀伊國屋書店発行、を読んだ。

ミソジニー misogynyとは、男性にとっては「女性嫌悪」(著者によれば「女性蔑視」で、女性にとっては「自己嫌悪」)だ。
最近は介護分野で活躍し、優しさをかいまみせる上野千鶴子さんが原点のフェニストの姿で、男性に怒りまくり激しく語る。日本社会にしっかり根を生やした「女性嫌悪」を、「非モテ」「皇室」「負け犬」「少年愛」「東電OL」「秋葉原事件」といったキーワードや、吉行淳之介や永井荷風、林真理子らの小説の中から読み解く。

いくつか抜き出してみる。

実際のところ、吉行を読んでも「女はわから」ない。かれの作品を読んでわかるのは、女とは何か、何者であるべきか、何者であってほしいか、について男の性幻想についてである。


(上野さんが何で今頃、過去の人とも思える吉行淳之介にこれほどこだわり、怒りをぶつけるのか理解しにくい。彼のような考えの男性が未だ多いということなのだろうが、他の例を出したほうが良いのでは。)

「女は関係を求め、男は所有を求める」と小倉千加子は喝破する。・・・女が殺される可能性の最も高い相手は、見知らぬ他人ではなく夫や恋人だ。アメリカには「配偶者とは、自分を殺す確率のもっとも高い他人である」という、笑えないジョークまである。
女の嫉妬は、男を奪ったべつの女に向かうが、男の嫉妬は自分を裏切った女に向かう。



近代家族は、「みじめな父」「いらだつ母」「ふがいない息子」「不機嫌な娘」からなる。
父は母に恥じられる「みじめな父」になり、母はその父に仕えるほか生きる道のないことで「いらだつ母」になる。・・・息子は「いらだつ母」をその窮状から救い出す期待に応えられない・・・同時に「ふがいない息子」でありつづけることが・・・母の期待に共犯的に応えることであると、・・・。
家庭のなかでもっとも弱者である娘の攻撃は、直接、強者である父や母には向かわない。弱者の攻撃はさらに弱く抵抗しない自分自身、なけなしの自分の領地、身体やセクシュアリティへの向けられる。



「ホモソーシャル」とはイヴ・セジウィックによる概念で、男性同士の性的な関係を示す「ホモセクシュアル」と区別して男性同士の「性的でない絆」を指すために用いられる。
男たちはホモソーシャル集団を形成し、自分たちだけの世界を作り上げ「おぬし、できるな」と互いに認め合い、連帯しランク付けをする。

「モテ」とは男と女の関係性を示す概念ではなく、男同士の関係性に発したものである。男は女そのものには興味がない。興味があるのは、女を〝所有〟している自分を見る男の視線だ。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

複雑な内容を読みやすく表現、説明している。とくにびっくりすることを述べているわけではないが、薄々感じていたことをはっきり言葉にしている。

久しぶりの上野さんらしい勢い良い、怒りにまけせた語り口だ。平凡な男性である私としては、そう言われれば確かにそういう面はあるなと思い、だんだん頭が下がってしまう。

「でも、そんな男に育てたのは母である女性でしょ」と言いたくなる。もちろん怖くて、直接上野さんにそんなこと言えるわけありませんが。でも彼女も言っている。「家父長制とは、自分の股から生まれた息子を、自分自身を侮蔑すべく育てあげるシステムのことである。」




目次
1.「女好きの男」のミソジニー
ミソジニーとは何か/吉行淳之介と永井荷風/女から逃走する男たち

2.ホモソーシャル・ホモフォビア・ミソジニー
男の値打ちは何で決まるか/男の連帯の成立条件/男は性について語ってきたか

3. 性の二重基準と女の分断支配――「聖女」と「娼婦」という他者化
ジェンダー・人種・階級/「聖女」と「娼婦」の分断支配/性の二重基準のディレンマ

4.「非モテ」のミソジニー 
「性的弱者」論の罠/性の自由市場/秋葉原事件と「非モテ」/格差婚の末路/「男性保護法」の反動性/「男になる」ための条件

5.児童性虐待者のミソジニー
「欲望問題」/公的セックス・私的セックス/児童性虐待者たち/ミソジニーとホモフォビア

6.皇室のミソジニー
男児誕生/皇室はいつからミソジニーになったか/記紀の神話論理学/皇族と人権

7.春画のミソジニー
暴力・権力・金力/快楽による支配/ファロセントリズム/春画研究ことはじめ/男根フェティシズム/男無用の快楽?

8.近代のミソジニー
「母」の文化理想/「ふがいない息子」と「不機嫌な娘」/「自責する娘」の登場/近代が生んだ女のミソジニー/自己嫌悪としてのミソジニー

9.母と娘のミソジニー
反面教師としての母/母の代償/母は娘の幸せを喜ぶか/母の嫉妬/母と娘の和解

10.「父の娘」のミソジニー
家父長制の代理人としての母/「父の娘」/「誘惑者」としての娘/日本の「父の娘」/「父」への復讐/「父の娘」でも「母の娘」でもなく

9.母と娘のミソジニー
反面教師としての母/母の代償/母は娘の幸せを喜ぶか/母の嫉妬/母と娘の和解

10.「父の娘」のミソジニー
家父長制の代理人としての母/「父の娘」/「誘惑者」としての娘/日本の「父の娘」/「父」への復讐/「父の娘」でも「母の娘」でもなく

11.女子校文化とミソジニー 
男の死角/女子校の値打ち再発見/女子校文化のダブルスタンダード/「姥皮」という生存戦略/ネタとベタ

12.東電OLのミソジニー
メディアの「発情」/東電OLの心の闇/男たちの解釈/二つの価値に引き裂かれる女たち/娼婦になりたい女/女が男につけた値段/「性的承認」という「動機の語彙」/売買春というビジネス/女の存在価値/女の分裂・男の背理

13.女のミソジニー/ミソジニーの女
ふたつの「例外」戦略/林真理子の立ち位置/女と女のライバル関係/コスプレする「女」/女と女の友情

14.権力のエロス化
夫婦関係のエロス化/プライヴァシーの成立/性的満足の義務?/サディコ・マゾヒズムの誕生/セクシュアリティの脱自然化/身体化された生活習慣

15. ミソジニーは超えられるか
ミソジニーの理論装置/欲望の三角形/ホモソーシャル・ホモフォビア・ミソジニー/セクシュアリティの近代/ミソジニーを超えて/男の自己嫌悪

上野千鶴子の略歴と既読本リスト





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有川浩『阪急電車』を読む

2011年10月22日 | 読書2

有川浩著『阪急電車』2008年1月幻冬舎発行、を読んだ。

大阪と神戸の中間あたりにありながら、ほのぼの和やかな阪急今津線の北線の8駅が舞台。それぞれの話が互いに関連し合う連作短編。

会話文が多いので、本を読む感覚はさくさく進んでいくと思います。心理描写は多少多く、風景描写が控え目。内容がソフトでも、陰険な重い内容でも、すべてさわやかに

小学生1,2年の女の子が意地悪される話が出てくる。
意地悪しようと、〇〇ちゃんを隠している少女たちがクスクス笑っている。その笑い方が幼いくせに既に女の卑しさを含んでいる。実際には隠しているのに意地悪リーダーの女の子が言う。「〇〇ちゃんだったら先に帰ったって言ってるでしょう」
意地悪された??ちゃんは凛として言い返す。「きいてないのに教えてくれてありがとう」
ぎゅっと唇を噛んで黙々と目元を拭きはじめた誇り高い??ちゃんに、友達を寝取られて復讐した女性が言う。「あなたみたいな女の子は、きっとこれからいっぱい損をするわ。だけど、見ている人も絶対いるから。あなたのことをカッコいいと思う人もいっぱいいるから。私みたいに」


この作品は「パピルス」11号~16号に掲載されたものに「折り返し分」を書き下ろしたもの。



私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)

若いというか、幼いに近い女性のおとなしい恋の話が大部分だ。まあ今でも実際には、女性の多くは淡い思いにドキドキし、オドオドし、なんとか付き合い始めるのだろう。若い女性には胸キューンで人気があるようだ。
ベタな恋愛小説にはもはやついて行けない私には遠い話だ。しょせんおじいさんの読む小説ではなかった。

片道20分ほどの通勤電車の中で読み、2日ほどで終了。簡単に読めるが、まあこんなものかという感じだ。

女子高生と付き合うバカな社会人男性の話が7ページに渡って書かれていて、私には退屈だった。この話、電車で実際に聞いたままに近いと有川さんはあとがきに書いている。事実は小説より奇なりというが、事実をほぼそのまま小説として書いても、面白くないということなのだろうか。



有川浩(ありかわ・ひろ)の略歴と既読本リスト


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万城目学『プリンセス・トヨトミ』を読む

2011年10月19日 | 読書2
万城目学著『プリンセス・トヨトミ』2009年3月文藝春秋発行、を読んだ。

空堀商店街の息子に、その幼馴染の女子。彼らが、大阪人に連綿と引き継がれてきた、秘密の扉を開けてしまうのだった……。

会計検査院からやってきた個性豊かな調査官3人。卓越した能力で徹底的に相手を追求するがアイスクリーム中毒の“鬼の松平”、冴えない外観でうっかり者だが無意識に重大な問題を発見してしまう“ミラクル鳥居”、ハーバード出身でモデル体型だが、実はガチガチの大阪人の美女、旭・ゲーンズブール。彼ら次々と調査を完遂するのだが、社団法人OJOだけが活動内容も含め謎のまま残る。

一方、大阪城近くの空堀商店街にあるお好み焼屋の中学生真田大輔には、幼い頃から“女の子になりたい”という願いがあった。ある日決意して、幼なじみの橋場茶子と一緒にセーラー服で学校に行く。以来、大輔は厳しいイジメにあう。

そして、5月末日の木曜日、大阪が完全に止まる。

初出:「別冊文藝春秋」2008年1月号~2009年1月号



万城目学(まきめ まなぶ)
1976年生まれ。大阪府出身。京都大学法学部卒。化学繊維会社で経理を担当しながら小説を書く。
2006年『鴨川ホルモー』でボイルドエッグズ賞受賞しデビュー、2009年映画化、舞台化
2007年『鹿男あをによし』で直木賞候補、2008年TVドラマ化
2009年本書『プリンセス・トヨトミ』で直木賞候補、2010年映画化
2010年『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』で直木賞候補



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

出だしからキャラが鮮やかな会計検査院の3人組みが読ませる。少し間延びし始めた頃、男女二人の中学生が登場するが、少年の男性としての違和感に乗れないし、ストーリー上の必然性にも疑問がある。
荒唐無稽な話にも面白く付いて行ったのだが、後半の異常な盛り上がりにはちょっと置いていかれてしまった。

「なぜこんな御伽噺のような世界を信じることができるのか?」という問いへの答えはこうだ。
「それは父の言葉だからだ、・・・」「あのトンネルを二人だけで歩く。ゆっくりと、父親の歩調に合わせて。行きと帰りで、一時間から二時間はかかる。・・・あなたは大人になってから、一時間でも、父親と二人だけの空間で話し合ったことがあるか?・・・そう――男は普通、そんな時間を一生持たない。・・・」


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川上未映子『ぜんぶの後に残るもの』を読む

2011年10月17日 | 読書2

川上未映子著『ぜんぶの後に残るもの』2011年8月新潮社発行、を読んだ。

新潮社の宣伝文句はこうだ。
津波にも地震にも奪いきれないものが、わたしたちのなかにはある!

記憶。あの日、南三陸町で見た母子の輝き、買い物に行くだけで幸せだった子ども時代、上京したてで一人ぼっちだった頃、×××に怒り狂った帰り道、原稿が書けず胃が痛む今。震災下の厳しい日々も、ちょっと昔の笑いあった日々も、いつしか一つに混じり溶けあっていく――。心に響くエッセイ集。たいせつなものはたいせつに!



震災に関するエッセイが最初に8編。週刊誌に連載されたものなので、震災直後の動揺の中で書かれているのだが、著者の芯がしっかりしているのに感心した。若いし、ミュージシャン、女優でもあり才能はあるが、軽いのりの人と思っていたが。

大部分(多分48編)は、著者の身の回りで起こったこと、ネットで知ったことなどについてのエッセイ集。

いくつか、ご紹介。

やがて起きてしまうであろう悲しい出来事に備えて(近親者の死とか色々)あらん限りの想像力を駆使して予行演習を行って悲しみ身を先取りしておく。そうするといわゆる「本番」がやってきたときに、悲しみや苦しみの諸々がちょっとはマシになるのじゃないか、・・・



困った人がクレームの電話を編集部にかけてくる。受話器をそのまま置いて別の仕事をして7時間後に思い出して耳にあてるとまだ同じテンションで話を続けていた。断ったのにそちらに伺いますと言ってやってくる。玄関で追い返したら、「行くところがありません」という。ではと、ライバル社の編集部の地図を渡すと、「あのわたし、いま、ここから来たんですけど・・・」ライバル社がこちらの地図を渡していたのだった。



初出:週刊新潮「オモロマンティック・ボム!」2010年4月22日号~5月12日号、日本経済新聞「プロムナード」2010年3月31日から4月28日



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

日常のささいな話が多いので、男性には受けないかもしれない。しかし、細かな感情のあやが、ユーモアやちょっとした驚きと共に独特の文体でつづられている。

絨毯を見に行って50万円と聞いてそのまま帰ってくる。子供の頃、母と絨毯を買いに行ったことを思い出す。8千円と1万2千円でさんざん迷い、結局高い方を買い、担いで帰る。畳の上に広げて、家族で照れ笑いし、本当に幸せな気持ちになった。・・・

「物を買うとき反射的にスーパー勤めの母親の時給を考える。・・・母の千円とわたしの千円はある点では同じだけれど、本質的には違うのに。」



結婚式も挙げてすぐにした大げんかで写真を全部捨てたので1枚たりとも残っていなくてそれで別に支障がない。



川上未映子の略歴と既読本リスト


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『献体-遺体を捧げる現場で何が行われているのか-』を読む

2011年10月15日 | 読書2
坂井建雄著『献体-遺体を捧げる現場で何が行われているのか-』2011年7月技術評論社発行、を読んだ。

医療従事者の教育のために,解剖体として遺体を捧げる「献体」。この献体を希望する人が増加している。
この本は、献体をするにはどうするのか、遺体はどう扱われ,どのような状態で戻ってくるかなど、献体に関する疑問に答え、献体したい人に具体的手順を示す実際的な本だ。さらに、世界の献体事情、日本と世界の解剖の歴史が教科書風に語られる。献体をまともに取り上げた初めての本だそうだ。



献体を希望する人は、住所地に近い大学の医学部、歯学部の解剖教室に連絡する。献体で金銭的メリットや病院での特典がないこと、家族の同意が必要なことなどが説明され、申込書が送られる。

献体者が亡くなり登録大学に連絡する。役所に死亡届を提出し火葬(埋葬)許可証を受取る。遺体の引取りは、病院で、自宅で一晩過ごしてから、告別式後など、遺族の希望に合わせる。ただし、遺体を大学に引き取った後は遺体に面会することはできない。解剖後、遺骨として返還するのは2~3年後になる。このあたりの具体的手順、注意事項はかなり細かく記述されている。

大学での遺体の処理は、まず腐敗を抑えるため血管に10%ホルマリン液を数リットル注入する。1~2日後にホルマリンが浸透しにくい脳を摘出してホルマリン液に浸す。その後、遺体をアルコール溶液に数ヶ月浸し、有害なホルマリンを減らしてから、ビニール製の袋に密閉し専用ロッカーに保管して解剖を待つ。
私には興味津々な解剖の手順などの記述もあるが、ここでは省略。解剖実習は3ヶ月かかる。

昔は献体が足りなかったが、最近は献体希望者も増えてきており、大学によっては登録申込みをお断りしているところもあるという。2009年度中に献体実行数は3402人。



坂井建雄(さかい・たつお)
順天堂大学医学部教授(解剖学・生体構造科学)。1953年大阪府生まれ。1978年東京大学医学部医学科卒業。ハイデルベルク大学研究員,東京大学医学部解剖学助教授を経て,1990年から現職。
おもな研究・活動領域は,解剖学,腎臓と血管系の細胞生物学,献体と解剖学の普及,医学と解剖学の歴史。著書多数。



私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

「お好みで」と評価したが、怖いもの見たさの人がいるかも知れない。確かに、解剖の具体的手順などの記述もあるのだが、著者には、興味をかきたてようとする気はまったくなく、淡々と語るだけだ。献体に関する取扱説明書と献体・解剖に関する教科書といった真面目一方な本だ。その方が私には面白かったのだが、一般的ではないだろう。

私は、以前、解剖標本を展示する「人体の不思議展」を見たことがあった。プラスティネーションという技術による標本で、人体の水分を取り除きプラスチックに置換えるもので、人体のスライス標本が展示されていて、センセーショナルなものだった。この本によれば、非合法に遺体を輸入しているなどとの疑惑があるようである。




目次
第一章 献体をすること
献体登録はどのように行うのか? /自分の意志を尊重してもらうには/

第二章 献体者を見送る側――遺族の立場
献体者がお亡くなりになると/会員の確認と代表者の決定/死亡届の提出/遺体の引き渡し,その後/

第三章 献体者を受け入れる側――大学側の実務
/遺体の保存処置/解剖実習における学生の指導/遺体の火葬/遺骨の返還

第四章 遺体の扱い――解剖実習と学生
/正常解剖とその他の解剖との違い/遺体の保存処置/ホルマリンの注入/

第五章 献体運動はどのように行われているのか

第六章 世界と日本の献体事情

第七章 日本における人体解剖と献体の歴史

第八章 世界における人体解剖の歴史



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伊集院静『なぎさホテル』を読む

2011年10月12日 | 読書2
伊集院静著『なぎさホテル』2011年7月小学館発行、を読んだ。

伊集院氏が作家としてデビューするまでの日々を描いた自伝的エッセイ。

28歳の伊集院さんは、最初の奥さんとの離婚慰謝料などで生活が荒れていた。故郷に帰る途中でふらりと逗子の海岸に立ち寄る。「逗子なぎさホテル」の支配人に偶然出会い、「出世払いでいいですよ」と言われて、結局7年あまりもこの湘南伝説の名門クラシックホテルで暮らすことになる。
それからの伊集院さんは、温かく見守る支配人、そしてホテルの従業員や、地元の人たちとふれあい、海を見ながら多くの本を読む。やがて、CMの仕事や、舞台プロデュース、作詞を書くようになり、さらに苦労して小説を書き始める。
最後に少しだけ触れているが、CMの仕事で知り合った新人女優のM子(夏目雅子)と鎌倉で暮らすことになりこのホテルを出ていく。数カ月後に彼女は発病し、200日余りの闘病生活ののち他界する。
なぎさホテルは平成元年に取り壊されて、今はない。取り壊し直前のなぎさホテルを宮澤正明氏が撮影した写真が数枚挿入されている。



この小説は電子書籍としても販売されている。
伊集院氏の提言もあって新しく設立された電子書籍レーベルは、第1弾として電子書籍の「なぎさホテル」を販売した。写真家の宮澤正明氏が撮影した写真を提供。さらに、井上陽水氏が作品の主題歌「TWIN SHADOW」を提供し、活字と音楽、写真、インタビュー映像などを融合させている。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

最後の無頼派作家といわれる伊集院さんがかなりあくどいこともせざるを得ないどん底から、懐深く温かい人々に救われ、作家としてデビューするまでを描いている。

東京での暮らしに破綻をきたし、つくづく自分という者の気質(たち)の悪さや品のなさにあきれ果てていた私は、それでも生きることに抗い、酒を飲んでは酔の中に、わずかな望みを見ようとしていた。

アルコール依存症で膨大な借金を抱え、用心棒をする伊集院さんが本人が語るように単なるワルだったら誰も助けようとしないだろう。何か隠れた光るものが感じられたのだろう。そして、幸せにホテルを出た後も、最悪の事態に陥った伊集院さんは、温情に応え見事にしみじみとした小説、エッセイを書く作家になる。

子供の頃から夏に毎年のように行っていた鎌倉・由比ガ浜、葉山が舞台になっていて懐かしい場所ばかり登場する。そして、私は15年ほど横須賀に住んでいて実家のあった東京へ行く時に渚橋を過ぎると、道路際にシャレた洋館があり、なんだろうと気になっていた。これが「なぎさホテル」だった。まさか、あそこに伊集院さんが居たとは。



伊集院静(いじゅういん・しずか)
1950年山口県防府市生れ。韓国系日本人2世。立教大学文学部卒。
CMディレクター、作詞家などとして活躍
1981年「小説現代」に『皐月』を発表し、文壇レビュー
1991年『乳房』で吉川英治文学新人賞受賞
1992年『受け月』で直木賞受賞、女優篠ひろ子と再婚
1994年『機関車先生』で柴田錬三郎賞受賞
2001年『ごろごろ』で吉川英治文学賞受賞
その他『駅までの道をおしえて』など。
二番目の妻が夏目雅子、現妻は篠ひろ子。




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打海文三『裸者と裸者』を読む

2011年10月10日 | 読書2
打海文三著『裸者と裸者 上 孤児部隊の世界永久戦争』『裸者と裸者 下 邪悪な許しがたい異端の』角川文庫14956、14957、2007年12月角川書店発行、を読んだ。

上巻の裏表紙にはこうある。
応化二年二月十一日未明、“救国”をかかげる佐官グループが第1空挺団と第32歩兵連隊を率いて首都を制圧。同日正午、首都の反乱軍は“救国臨時政府樹立”を宣言。国軍は政府軍と反乱軍に二分した。内乱勃発の年の春にすべての公立学校は休校となった。そして、両親を亡くした七歳と十一ヶ月の佐々木海人は、妹の恵と、まだ二歳になったばかりの弟の隆を守るために、手段を選ばず生きていくことを選択した―。


日本で内乱が起こり、米軍介入後も諸勢力が分裂して地方軍閥化し、地方都市には悪がはびこる。
7歳の海人は捕われて反乱軍の少年兵となる。訓練に耐え優秀な兵隊になるが、逃亡する。
弟妹を養う為に給料がもらえる政府軍の孤児部隊に入り、部隊のなかで出世し孤児部隊を掌握していく。

下巻
両親の離婚後、(双子の)月田姉妹は烏山のママの実家に引越し、屈託なく暮らした。そして応化九年の残酷な夏をむかえる。東から侵攻してきた武装勢力に、おじいちゃんとおばあちゃんとママを殺されたのだ。十四歳の姉妹は、偶然出会った脱走兵の佐々木海人の案内で、命からがら常陸市へ逃げ出した。そして――戦争を継続させているシステムを破壊するため、女性だけのマフィア、パンプキン・ガールズをつくり世界の混沌に身を投じた――。


本書は2004年9月刊行の単行本の文庫化。


打海文三(うちうみ・ぶんぞう)
1948年生まれ。2007年59歳で死去。
早稲田大学政治経済学部卒業後、映画助監督、農業に従事しながら執筆。
1992年『灰姫 鏡の国のスパイ』横溝正史賞優秀作を受賞しデビュー
1993年『時には懺悔を』
2003年『ハルピン・カフェ』で大藪春彦賞受賞
他に、『ぼくが愛したゴウスト』『されど修羅行く君は』『愛と悔恨のカーニバル』『Rの家』、『愚者と愚者』、『覇者と覇者』(未完のまま刊行)



私の評価としては、★★★★★(五つ星:是非読みたい)(最大は五つ星)

ともかく従来の日本にはないダイナミックでスケールの大きな小説だ。日本がまるでイラクのような分裂、混乱した社会になっている。世界各国からの大量の移民が入って来て、カネ目当ての傭兵も集まって、軍閥間の陰謀、裏切りの激しい。そんな中で、孤児や女性というマイノリティーが部隊を作り活躍する。
今の日本の閉塞状況、政治状況のなかで、そんな馬鹿なと笑い飛ばせないのが情けない。

戦争はビジネスでもある。兵器補充はもちろん、陣を進め大人数の兵隊を動かすには、大量の金が必要となる。金の確保の是非が戦況を支配する。地方軍閥ともなれば、そこのところがあからさまになる。この本は、戦闘そのもののシーンよりもシステムとしての、ビジネスとしての戦争が描かれている。

上巻は孤児の海人が新米の少年兵から小隊長まで上り詰める話がメインで、下巻は悪事も平然と行う双子の月田姉妹がもう一つの中心となる。双子の姉妹の話はアゴタ・クリストフの三部作を思わせるが、あの凄さの印象が強すぎて、いまひとつ迫力にかける。

細かい話だが、海人のセリフでところどころ漢字がひらがなになっているのも気になる。青年になった後でもまともな教育を受けていないことを示すためだろうが、わざわざひらがなにするのは違和感がある。

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『池上彰の学べるニュース(4)』を読む

2011年10月08日 | 読書2
池上彰+「そうだったのか!池上彰の学べるニュース」スタッフ著『池上彰の学べるニュース(4)-社会人の基礎知識&一般常識編』2011年3月海竜社発行、を読んだ。

テレビ朝日系全国ネットで水曜よる8時に放送した番組の参考書第四弾と銘打っている。
内容は新聞、TVで良く出てきて、大体の意味は理解しているつもりだが、という言葉を要領よく解説している。基本的で重要な知識が多いが、話題に使えるだけの豆知識も散見する。

例えば、冒頭の「日本銀行」については、
・日本銀行の読みはお札のローマ字にあったように「にっぽんぎんこう」に統一された。
・日銀は、国のものでも、民間のものでもなく、認可法人で、働いている人は見なし公務員。
・日銀は政府の金庫の役割。税金、公共事業などの入金、出金は日銀が行う。
・民間銀行から国債を買ってお札を銀行に渡すが(通貨を発行する)、この国債の利子が日銀の収入の大部分。
・日本銀行の株(出資証券)がJASDAQに上場されていて買うことができる(1株5万3300円で100株単位)
・その他、日銀が行う景気対策の仕組み、日銀短観とは、など。

その他、
「株式用語」、「持ち株会社と格付け会社」、「日本の貿易」、「世界の大統領と首相の違い」、「日本の法人」、「日本の警察」、「海上保安庁」、「日本の天気」、「地デジ化」

付録:池上さん、劇団ひとり、土田晃之さんの新人時代のエピソード(特別インタビュー)と、「池上版・ニュース用語解説」



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

漫画チックな絵がたくさん入ってわかりやすい。この種の解説本はイメージだけ伝えて、なんとなく解ったつもりにならせるだけの本が多いが、この本は、内容を基本的なことに絞っていることもあって、きちんと根本的なことまで、最低限の事柄は説明している。

「この程度のことは知っているよ」という人も、びっくりすることはないだろうが、頭の整理のために、一度読んでみる価値はある。



池上彰(いけがみ・あきら)
1950年長野県松本市生まれ。慶応大学経済学部卒後、NHKへ記者として入局。
1994年から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役。
2005年NHK退職し、フリーのジャーナリストに。


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森絵都『この女』を読む

2011年10月02日 | 読書2
森絵都著『この女』2011年5月筑摩書房発行、を読んだ。

舞台は1995年前後の大阪、神戸。阪神大震災の直前。大阪・釜ヶ崎で日雇い労働者をしている20代の若者、甲坂礼司が書いた『ある女』というタイトルの小説、作中作で始まる。

礼司がホテルチェーン社長夫人二谷結子の生い立ちを小説として書くことを300万円で依頼される。彼と数歳の歳の差しかない結子は、乱れた生活をし、生い立ちに関し嘘ばかりつき、一筋縄ではいかない。しかし、それらの嘘の話からは、現在の結子の絶望と孤独と、ある種のたくましさがにじみ出てくる。

彼女は「一回寝たら、もうそれだけで家族になれた気がするやんか」と多くの男とセックスするが、同じ男とは二度しない。なぜなら「家族には欲情せえへん」からだという。

気まぐれで、しっかりしているようで頼りなく、冷たいようで、ときにやさしい結子に、そのまま惹かれていく礼司は、彼女を描ききりたくて必死に小説を完了させようとする。やがて、小説依頼の背景に釜ケ谷地区をめぐる土地買収の巨大な陰謀が見えてくる。



森絵都(もり・えと)
1968年東京生まれ。女性。
日本児童教育専門学校卒業後、アニメーションのシナリオ作成。早稲田大学第二文学部卒。
1990年『リズム』で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。翌年椋鳩十児童文学賞受賞。その後も数々の作品で多数の文学賞を受賞している。
1999年『カラフル』は産経児童出版文化賞受賞、映画化
2003年『DIVE!!』小学館児童出版文化賞受賞、映画化
2006年『風に舞いあがるビニールシート』で直木賞受賞。
他に『永遠の出口』『ラン』『架空の球を追う』など。



私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

面白く引きこまれて読み進めた。徐々に明らかになる結子という女性の正体、謎解きと魅力に引きこまれて行く礼司。
しかし、礼司と結子の話にいろいろな小テーマがいりまじり、枝葉が多い。新興宗教にはまったお坊ちゃん大学生、釜ヶ崎改造計画など、中途半端に終わってしまう。阪神大震災を暗示するだけでなく、何が絶たれてしまったのか明示して欲しかった。

「作中作」という構成になっているが、冒頭で、礼司が関西の大震災で行方不明になっていることが明かされてしまう。この構成もわかりにくく、逆に主人公、礼司の結末が早々に解ってしまうのはどうかと思う。


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