hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

原田ひ香『母親ウエスタン』を読む

2014年12月29日 | 読書2

 

原田ひ香著『母親ウエスタン』(2012年9月20日光文社発行)を読んだ。

 

母親を必要とする子供のいる家庭に入り込み、自然に暮らして、つかのまの母親役をつとめて、新しい母親が決まれば、潔く身を引き、どこかへ去ってゆく。さすらいの母親役をなぜかやり続ける女・広美。彼女の口癖は「おそれいりましてございます」

有り余る母性からの行動なのか? それなら何故消えるのか?

 

子供にとっては、辛い家庭環境から救いだされ、生活を立て直してくれた大切な人。中には、大人になっても彼女を忘れられない子供たちがいる。

 

大好きな祐理の謎の行動を突き止めようとする同じ大学の恋人森崎あおい。彼らの話と、さすらいの広美の話、時系列を乱して、並行して進む。広美の謎はますます深まる。

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

謎を引っ張ったまま、次々と新たな不幸な子供の家の話に入って行く。さすらいの母親ウエスタンの設定自体が気に入った。

トルストイの「アンナ・カレーニナ」の冒頭に「幸福な家庭はみな同じようだが、不幸な家庭はそれぞれ違うものだ。」というような言葉があるが、それぞれ異なる不幸な家庭の話を続けて、興味をつなぐ。

 

会話文が見事で場面、人物を具体的に想像させる。さすが、脚本家だ。

 

最後の牧瀬のプロポーズが泣かせる。本筋じゃないのに、本筋の感動をいや増してくれる。映画「幸せの黄色いハンカチ」で最後に若い二人が車の中で思わず抱き合うシーンを思いだす。さすが脚本家、お上手、お上手。

 

広美が係わった子供の多くを、本当に覚えていないような記述があるが、昨日の晩飯のことは忘れても、昔のことは良く覚えているのではないのか? 逃亡中に病気になったのときに保険証はどうしているのか? など年寄りは変なことが気になる。

 

 

原田ひ香の略歴と既読本リスト

 

 

 

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青の洞窟へ

2014年12月24日 | 行楽

中目黒の目黒川のイルミネーション、青の洞窟を見学。

明日が最終日。駅の混雑を抜けて目黒川へ。

確かに青色LEDの光量もアップしている。

人ごみがひどく、落ち着いて携帯を構えられないにで、美しさを十分お伝えできないが、まずはご覧あれ。

帰りも駅は混雑。

クリスマスイブだが、渋谷の例の交差点は、それほどの人ごみでもない。

井の頭線へのコンコース?にはお馬さんが。

JRAが有馬記念を盛り上げていた。

 

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白河三兎『角のないケシゴムは嘘を消せない』を読む

2014年12月20日 | 読書2

白河三兎著『角のないケシゴムは嘘を消せない(講談社NOVELS、Y960、2011年1月5日講談社発行)を読んだ。

 

隣を歩いていたら消失しまった彼氏を探しに東京に来た19歳の妹の有田琴里(コトリ)が頼ったのは兄信彦。しかし、彼は妻加奈子と離婚後、突然透明人間の女性と暮らしている。信彦は名前を呼ぶのを聞かれても猫と間違えるようにタマと呼ぶことにした。「MONO消し」の妹と「TOMBOW」の兄の視点で交互に展開され、透明人間の謎と消えた彼氏を探っていく。

ミステリーなので粗筋は書けないが、信彦、琴里を始め、信彦の元妻の加奈子、息子の悟、透明な女性タマ、タマを捜す謎の組織とメタボ親父・ミロ、琴里と友達になる少年白馬などが登場する。

  

白河三兎(しらかわ・みと)

2009年「プールの底に眠る」でメフィスト賞を受賞しデビュー

2011年、本書『角のないケシゴムは嘘を消せない』

2014年、本書を改題(「ケシゴムは嘘を消せない」)し、大幅に書き直し、講談社文庫化(1月 講談社ノベルス)

2012年『私を知らないで』

2013年『君のために今は回る』、『もしもし、還る。』

2014年『神様は勝たせない』、『総理大臣暗殺クラブ』

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

触れた物を透明にできる女性がいて、透明な人・物を見ることができる男がいる。なにやら複雑な仕組みで、最初に説明してくれないから、筋が分かりにくい。大幅に書き直したという講談社文庫を読む方が良い。

 

登場人物のキャラは良く書けている。何事にも冷静で距離を置く加奈子が面白い。

 

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窪美澄『ふがいない僕は空を見た』を読む

2014年12月17日 | 読書2

 

 

窪美澄著『ふがいない僕は空を見た』(新潮文庫、く-44-1、2012年10月1日新潮社発行)を読んだ。

 

主婦と週に何度かセックスする高一の斉藤くん。姑に不妊治療をせまられる女性。ぼけた祖母と二人で暮らす高校生。助産院を営みながら、女手一つで息子を育てる母親。全5編を通じ、斉藤君の「コスプレ・不倫」事件を共通の背景として、5編とも異なる主人公が抱える痛みと喜びを描く連作短編。R‐18文学賞大賞、山本周五郎賞W受賞作。

 

 

「ミクマリ」

高一の斉藤卓巳は、主婦・あんずの自宅で、アニメのコスプレをつけて、あんずの書いた台本どおりに動き、喋り、交わる。かねてから思いを寄せていた同じ高校の松永七菜(なな)から告白され、あんずに「もうここには来ない」と告げる。しかし、ベビー用品売場であんずを見かけ、その日から卓己に頭の中はあんずのことでいっぱいになった。・・・卓巳は助産院である自宅へ戻り、いつものように出産を手伝う。

おふくろが、へその緒がついたままの赤んぼうを仰向けに寝た女の人の胸元にのせたとき、小さな体の割にはでかく見えるちんこが見えた。おまえ、やっかいなものをくっつけて生まれてきたね。

 

「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」

夫・慶一郎は、そして私も「ぼくら二人のいじめられっ子のDNAを受け継いだ子どもなんて、この世の中で生き残れるはずがない」と言っているのだが、義母・マチコさんにしつこく言われ里美(あんず)は不妊治療に通う。ストーカー気質の夫は、妻の様子がおかしいと思い・・・。

 

「2035年のオーガズム」

斎藤くんに告白した松永七菜の父は東北へ単身赴任、母は更年期で体調不良、T大理科3類に受かった兄はカルト的団体に入ってしまう。そして、彼女は友達のあくつちゃんから、流出している斎藤くんのコスプレ+不倫写真を見せられる。

大雨で洪水となり七菜の家も危なくなる。ママは仁王立ちになって言う。「この家で絶対に死なせないわよ。パパが建てた家なのよ。優介と七菜を守るために、パパが死ぬ気で働いて建てたのよ」

「日本で次の皆既日食が観測できるのは、2035年」という声が聞こえてきた。2035年にあたしは・・・

 

「セイタカアワダチソウの空」

クラスで一番背の高い福田良太のあだなはセイタカだ。彼が生まれてすぐ、父親は借金を苦にして自殺した。良太は、貧乏人ばかりの団地に住み、朝新聞配達し、夜はコンビニでバイトして、家を出ていった母に代わり家計を支え、高校に通い、そして育ててくれたが今はぼけて徘徊する祖母の介護をする。

実質、コンビニを仕切る田岡さんは、良太に勉強を教え、なにかと親切にしてくれる。「なんだってこんなにぼくを助けてくれるんですか?」という質問に、田岡さんは言う。「おれは、本当にとんでもないやつだから、それ以外のところでは、とんでもなくいいやつにならないとだめなんだ」

 

「花粉・受粉」

斉藤くんの母親の助産院での出産のいくつかが語られる。多くの妊婦は「病院で生みたくない。自然に生みたい」という。自然に産む覚悟をすることは、自然淘汰されてしまう命の存在をを認めることだと思うのだが。

中学・高校時代は殺人以外の悪い事はひととおりやったという助産師のみっちゃんが、斎藤くんに関する悪質メールを見て、言う。「ばかな恋愛したことない人なんて、この世にいるんすかねー」

 

 

初出:昨年第8回R-18文学賞大賞受賞の「ミクマリ」に、「新潮ケータイ文庫」掲載の3篇+書き下ろしの1篇を加えた連作集。2010年7月新潮社より刊行。「本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第一位、2011年本屋大賞第2位、2011年山本周五郎賞受賞

 

 

窪美澄の略歴と既読本リスト

窪さんの「作家の読書道」

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

この本の最初の「ミクマリ」を読み始めて、えげつないポルノ小説と思い、喰わず嫌いではなく、食べ過ぎ気味なので(?)、そのままツンドクしてしまった。読む本がなくなって、真ん中あたりを開いて斜めに読むと、「ウッん! これは?」と思い、最初から読み直した。新人らしからぬ文章の滑らかさ、筋運びの巧みさにスラスラと読み終えてしまった。

R-18文学賞受賞というと、私のように偏見のある者から女性のドロドロが一杯と色眼鏡で見られてしまいそうだが、もっと深い小説だ。冒頭のセックスシーンはない方がよいとさえ思った。

 

明るく楽しい話ではないし、感動ものでも、驚きが一杯でもない。しかし、バカなことやってしまって、傷つき、自分を持て余す者に寄り添う、いや、上から目線ではなく、ただ黙って横に並んで鎮まるのを待つような小説だと思った。そして、5編読み終えて、けして幸せな結末ではないが、遠くになにか明かりのようなものが見えるような気がして救われる。

 

 

 

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懐鮮食堂

2014年12月14日 | 食べ物

 

今日、といっても1週間以上前、は記念日。久しぶりにディナーした。

おいしいと思ったフランス懐石の「懐鮮食堂」。
このブログを検索したら、ランチを食べたのが約1年前

吉祥寺駅から線路際を新宿方面へ約5分。
場所が分かりにくい上に2階だ。

テーブルが7、8 ほどの小さな店だ。

吉祥寺で1、2を争う美味しい店だと思う。魚介メインで、フランス料理風の少量。なによりシェフ(たぶんオーナー)がすべてを自分の気に入るようにしているのが良い。

お店にカードには、
「シェフ自ら築地に足を運び、早朝水揚げされた最高の鮮度の魚介類と伊勢海老、お肉料理等をお箸と和食器にてお楽しみ頂けます」
とある。

夜の懐石膳コース 4700円

前菜(自家製生ハムなど5品)

スープは底の深い皿に入ったキノコとジャガイモで、深くおいしい味。

私のメインは、何種類かの海老。大きな大根付き。

相方のメインは、スズキと貝。

スズキが大きかったといって私にまわってきたつぼ焼きの中は貝柱など。

デザートにコーヒーが付く。


店内は一杯で、予約は必至。

帰りがけ、シェフに、「30日までやって、正月も2日からとはすごいですね」というと、「頑張ります」だって。

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高野秀行『謎の独立国家ソマリランド』を読む

2014年12月12日 | 読書2

 

高野秀行著『謎の独立国家ソマリランド  そして海賊国家プントランドと戦国ソマリア』(2013年2月20日本の雑誌社発行)を読んだ。

 

 多くの武装勢力による激しい内戦が続き無政府状態にあり、世界を悩ます海賊が野放しになっている崩壊国家アフリカ東部のソマリア。冒険家・高野秀行が世界一危険なエリアに飛び込み、人々の中に潜入し、実状を報告する。

 

崩壊国家ソマリアには、

・10数年も平和で安全な独立国家の体裁を誇るソマリランド

・海賊の拠点となっている氏族連邦プントランド

・凶悪なイスラム原理主義集団アル・シャバーブや各種武将たちの戦場になっている南部ソマリア

の3地域(実質3か国)がある。

著者は3地域を巡り、指導者に会い、国の歴史を知り、人々と語って実状を把握する。ソマリアに入れ込んでしまった著者は、今や世界的にもまれなソマリア専門家になっていた。

 

 

国連や米国に和平仲介は逆効果

ソマリランドは国際社会の無視にもかかわらず自力で和平と民主主義を打ちたてた。というか、無視されていたから和平と民主主義が実現できた。国連が政府を作った南ソマリアは戦国時代のままだ。

 

氏族間の戦闘回避策

へサーブ:人が殺されたら、殺した側は一人当たりラクダ100頭を遺族に渡す。どちらか悪いかとか、原因は問わない。

 

「殺人の血潮は分娩の羊水で洗い流す」:加害者の一族から美しい娘を選び、被害者の家に嫁がせる。娘は最初辛い思いをするが、両方にとって孫となる子供が生まれると変わる。北部ではそれぞれが娘20人を差し出し紛争は収まった。南部ソマリアでは米軍が上陸し、捕まり殺された米兵が裸で引き回され、米軍は撤退した。

 

政府は小さい方が良い

プントランドと南部ソマリアは、中央政府が20年もないのに、電話会社もテレビ局も航空会社もあり、普通の国にあるものはたいていある。ないのは中央政府くらいだ。

中央銀行がなくなってから物価は安定した。旧紙幣のみで中央銀行が新しいお札を刷らなくなったからだ。

 

ソマリア(南部ソマリア)の首都モガディッショ

「建物はそこら中、銃弾の跡だらけで、砲弾で崩壊している建物も珍しくなかったが、道端にはオレンジや・・・の露店が出ているし、通行人の数も多く、・・・活気に満ちている。・・・インターネットカフェ、旅行代理店、・・・レンタル・ビデオ店・・・・・・。」

「肩から自動小銃を下げた人がそこら中にいる。あまりに普通に見かけるので、だんだん「現地で流行っているユニークな肩掛け鞄」みたいに見えてきたくらいだ」

「自動小銃を掲げた民兵が二人、立ち乗りしているバスが向こうから走ってきたのだが、バスの正面には大きくひらがなで「ようちえん」と書かれていて、そのシュールさに・・・」

 

戦争の実態

携帯会社と送金会社だけは襲われなかった。戦闘集団もこれらが必要だったから。政府の規制がないので、携帯通話料金は異常に安い。また、外国へ出国した人からの送金はソマリア経済を支えている。

 

元遊牧民であるソマリア人の特色

超速、せっかち、質問に即答、直ちに処理。時間はきちんと守る。「ソマリ人を20分おとなしく座らせておくのは、犬を20分おとなしく座らせておくのと同じくらい難しい。」「会話に切れ目というものが全然ない」

別れる時は挨拶しない。電話は唐突に切れる。人の話は聞かない。

物は何でも投げる。大切な携帯以外は。

 

 

初出:WEB本の雑誌(第1章、第2章)、その他書下ろし

 

高野秀行 略歴と既読本リスト

 

 

私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

502頁の大部だが、読みやすく、「それで、それで、どうしたの?」とすらすら読み進められる。

 

高野さんの行動力、取材力にあらためてびっくり。親戚から借金しながらのわずかな資金、友人たちのつてを頼って、マスメディアも入り込めないソマリア潜入。そして、〇〇ハーブを噛み乍ら、現地の人に溶け込む。

記述はいつもの高野節で、ちょっととぼけて、ユルく、「いいね!」

 

 

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原田ひ香『東京ロンダリング』を読む

2014年12月03日 | 読書2

 

原田ひ香著『東京ロンダリング』(集英社文庫、2013年12月20日集英社発行)を読んだ。

 

住人が部屋で自殺/病死するなどした「事故物件」の賃貸物件は、不動産屋が次の入居者に事情を説明することが義務付けられていて、安くしてもなかなか借り手が現れなくなる。次の次の入居者には説明しなくてよいのだが。

そこで事故物件に短期間だけ住んで「ロンダリング」して、次に住む人に対する「事故物件の告知義務」をなくす仕事が生まれた。これが、主人公内田りさ子、32歳の仕事である。

 

りさ子は自分の不貞で離婚をし、実家にも戻れず、事故物件に住むロンダリングを仕事にした。次々に事件事故のあった部屋に住む。何事もなく一か月ほど過ごせれば、仕事は無事完了する。しかし、男性が突然死したことを知らず、突然連絡が絶えてしまって狂乱した恋人が飛び込んできたり、前の住人の借金取りが怒鳴りこんだりする。

「いつもにこやかに愛想よく、でも深入りはせず、礼儀正しく、清潔で、目立たないように。」これが、ロンダリングの鉄則だ。

 

やがて、りさ子は、台東区谷中の乙女アパート201号室に住むことになる。すべてを捨てさったりさ子は、距離を置こうとするのに、大家の真鍋夫人、定食屋「富士屋」の藤本との付き合いに引込まれていく。

 

初出:2011年7月集英社より刊行

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

面白く、スラスラ読める。不動産物件のロンダリングという仕組みを知らなかったので、これも面白かった。

 

四つ星にするか、迷ったのだが、物足りないところがあるので、三ツ星にした。

幽霊が出てきたり、自殺後のドロドロが尾を引いたりするのかと思ったが、盛り上がりもなく、すべてはさらりと流れて行く。

32歳の女性の再生の物語なのだが、著者の突き放したような書き方のせいか、あまりにスルッと進み、後に残るものがなく物足りない。ただし、面白く読める。

 

 

原田ひ香の略歴と既読本リスト

 

 

 

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