hiyamizu's blog

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香山リカ「<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている」を読む

2009年11月26日 | 読書2

香山リカ著「<雅子さま>はあなたと一緒に泣いている」ちくま文庫2009年5月、筑摩書房発行を読んだ。

宣伝文句は、こうだ。
責任ある仕事、理解のある夫、かわいい子ども…すべてを手に入れたのに、苦しいのはなぜ? 雇用機会均等法第一世代、いわゆる“雅子さま世代”の女性たちが今ぶつかっている壁と、それを乗り越えるための7つのアドバイス。


雅子さまの問題は、公表された内容だけから状況、原因を推測するしかない。したがって、あくまで一つの例を精神科医として分析しているだけで、主題は、同世代の女性の「生きにくさ」の背景を「親との関係」を中心にヒモどいてみせている。
香山さんの結論は、「他人の目を意識し、それに自分の言動をあわせるのは、まったく勘定に合わないことなのだ。」と言うことだ。そして、雅子さまには、他人の目は気にせずに「65点の自分を自分で認め、受け入れる」ことを薦めている。



香山リカは、1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。精神科医。立教大学現代心理学部映像身体学科教授。学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして、新聞、雑誌などの各メディアで、社会批評、文化批評、書評など幅広く活躍。
私が読んで、感想を書いた著書は、「女はみんな『うつ』になる」、「精神科医ですがわりと人間が苦手です」「親子という病」、「弱い自分を好きになる本」「いまどきの常識」「雅子さまと新型うつ」だ。何しろ奥様がファンなもので。



私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

仕事、恋愛、夫、実家、出産、育児、姑と、こう並べてくると、女性も大変だと思う。これらの女性の悩みを、この本がもちろん解決してくれるわけではないが、ひも解いてくれる。ただし、香山さんはまだ若い?ので、濡れ落ち葉亭主問題など老年の女性問題には触れていない。

それにしても、私は、雅子さまの問題を例にあげるというのは、あまりに特殊なケースすぎるのではないかと思う。著者の雅子さまに対する温かい目は理解でき、その多くの推測は妥当なものだと感じたのだが。精神科医が、公の人とはいえ、無断でここまで推測、推察結果を公表してよいものだろうか。雅子さんの場合はとくに、反論できる手段はほとんどないのだから。少なくとも題名に「<雅子さま>」と入れるのは、出版社の意向だろうが、売らんかなの意図があからさまだ。
もちろん、著者の意図は、興味が持たれやすい雅子さんの問題と取り上げることで、自分自身の問題を考えてもらいたいというところにあり、私の場合でさえ、著者の意図に乗ってしまったのだが。

蛇足として、いろいろ配慮しすぎてあれこれ迷うこと多い女性と、問題から逃げてばかりの男性に、香山さんからのひと言は、
夫婦であっても、阿吽の呼吸ばかりでものごとが運ぶはずはない。逆に夫婦だからこそ、きちんと言葉を使ってコミュニケーションしなければ理解が進まないことも多い。そして夫に気持ちを伝えるときは、「・・・“すべてはあなたまかせ”ではなくて、「自分はどうしたいのか。それでだめなら次はこれ」とある程度、意思を固めておくことも必要。」




以下、何点か抽出。

雅子さまは、父親の歩みと同調した道を進んでいた。“父親そっくりの娘”は緒方貞子、田中真紀子、藤山寛美の娘藤山直美などがいるが、この世代は、「私生活より仕事」「自分の気持ちをおさえても立場を優先すべき」という考えで、小渕優子の世代になると、あっさり私生活を優先する。雅子さんは、両者に挟まれた世代。

性別に関係なく誰にでも限りなく可能性があるとして教育を受けた30代のシングル女性には、「夫のサポートが自分の誇り」とすんなりとは思えないだろう。これが、美智子皇后と雅子さんの違いだ。

いつまでも両親に依存する娘と、結婚しても戻ってくるなとは言わない親。
「こんなひどいことされた」という形のトラウマではなく、「こうしてくれてもよかったのに、してくれなかった」という陰性トラウマも見られる。親が子供に指示や助言を行うと、子どもはプレッシャーだと反発する。「好きに決めなさい」といえば、後になってから「もっとケアしてくれてもよかったはずなのに」と言う。


「子どもは『親を喜ばせたい、ほめられたい』という気持ちからは永遠に解放されず、気がつくとつい“理想の娘”の路線に乗ってしまっていることもある。・・・親の問題を引きずりすぎても、何の得もないし、究極の解決が訪れる日も来ないのだ。」


知的な女性同士だからといって、嫁姑問題がないわけではない。
「知的であったり生活水準が高かったりする母親ほど、“感情丸出し”になることに対して罪悪感を抱きがちなので、自らの内部の矛盾によけいに深刻にならざるを得ない。」


まじめな女性は、少しでも他者から批判されたり苦言を呈されたりすると、「余計なお世話よ」と思えずに、「私が頑張らないからだ」とひどく傷つく。・・・すべてを完璧にこなしても「ふつうにはできるんだな」くらいにしか評価してもらえない・・・。能力が高く成績がよい女性ほど批判に弱く・・・」




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