hiyamizu's blog

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香山リカ「精神科医ですがわりと人間が苦手です」を読む

2009年03月13日 | 読書2
香山リカ著「精神科医ですがわりと人間が苦手です」2008年3月、大和書房発行を読んだ。
初出は、2006年5月から2007年10月まで毎日新聞「こころの万華鏡」に連載されたものだ。

精神科医を20年。しかし、実はそれほど苦労した覚えもない。繊細な医者だと患者さんたちの話が理解できすぎて、しんどい。私のように少々鈍感で「へー、そんなこともあるんですか」と思えるくらいのほうがお互い気楽だ。  
精神科医は、敏しょう性より辛抱強さが必要だ。しかも、精神科の患者さんは心やさしく、「人間が苦手」な私も自然に話せる。そこで私は、駆け込み寺に駆け込む思いで精神科医になった。
 
こんな調子で、あけすけに、脱力系の香山さんは診療の実情、失敗談を語る。いくらなんでも自虐的な謙遜じゃないかと思われる語り口だ。



いくつか挙げる。

精神科は、保険診療の制約で、カウンセリングは実施できない。薬物療法プラス数分の雑談だ。

しゃっくりが止まらない子供に催眠療法を行った。ふと時間が止まったように感じ、あたりが暗くなった。自分が催眠にかかってしまった。

精神科医と言うと、恋愛心理の達人と思われ、恋愛相談を持ちかける女性がいる。趣味がテレビゲームとプロレス観戦である香山さんは、「わからない、ごめんなさい」と言うしかない。



香山リカは、1960年北海道生まれ。東京医科大学卒。学生時代から雑誌などに寄稿。その後も、臨床経験を生かして各メディアで批評などの活動を続けている。現在、立教大学現代心理学部映像身体学科の教授でもある。



私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)

仕方無しに精神科医になったとはっきり言うなど、精神科医が「それを言っちゃあお仕舞よ」が多く、精神科という忌み嫌われがちな壁を取るには良いのだろうが、あまりの脱力系ぶりにこちらも脱力してしまう。

数えるほどしかない真面目な話のうちで、なるほどを思ったのは以下だ。
事故にあった子供を冒涜するサイトを開設した小学校教師が、偏った性的嗜好の持ち主であることを自らマスコミ相手に認めたという事件があった。
教員採用のときに、メンタルチェックせよとの声がある。しかし、心に問題があるかどうかを正確にチェックすることはほとんど不可能だ。たとえ数値化しても、判定基準を決めることは難しい。しかも、現在のこころの問題を浮かび上がらせても、未来の予測はできない。
心に偏りがある人でも、誰でも程度問題で偏りを持っているのだが、理性や良心の力でそれをコントロールしている。偏りをチェックするより、理性的に自分の心をコントロールする方法を考える方が重要だ。


コメント
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