hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

柚月裕子『あしたの君へ』を読む

2018年07月31日 | 読書2

 

柚月裕子著『あしたの君へ』(2016年7月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

表紙裏にはこうある。

家庭裁判所調査官の仕事は、

少年事件や離婚問題の背景を調査し、解決に導くこと。

見習いの家裁調査官補は、先輩から、親しみを込めて

「カンポちゃん」と呼ばれる。

「カンポちゃん」の望月大地は、少年少女との面接、事件の調査、

離婚調停の立ち会いと、実際に案件を担当するが、

思い通りにいかずに自信を失うことばかり。

それでも日々、葛藤を繰り返しながら、一人前の家裁調査官を目指す―

 

第一話「背負う者」(17歳 友里) 窃盗犯の少女は、なぜ偽りの動機を語るのか
福森家庭裁判所調査官室には、42歳の真鍋恭子の下に、離婚や相続を扱う家事事件担当6名と、少年事件担当6名がいる。少年事件担当に代わって5年になる溝内圭祐は大地の上司。

末席の望月大地は22歳、180cm近くで、愛想のない顔なのに、家裁調査官補なので“カンポちゃん”と呼ばれる。

 

鈴川友里は17歳でコンビニのアルバイト。3週間前に小林正春28歳をラブホテルに誘って10万円近く入れた財布を盗んだ。友里の件は大地が担当とされた。ほとんど話をしない彼女の稼いだ金の使い道に、大地は疑問を持ち、自宅を訪ねる。友里の母・直子はビルの清掃員だが、ほとんど働いていなかったし、妹杏奈は中学を卒業したが、引きこもっていた。

 

第二話「抱かれる者」(16歳 潤)  ストーカー犯の少年は優等生に見えたが……
大地と同期の藤代美由紀は小柄だが沈着冷静でロジカル。同じ同期の志水貴志は付き合いが悪い。

 

星野潤は進学校に通う高2。別の高校の高1の相沢真奈へのストーカーで家裁送りになった。潤はすらすらと反省の弁を述べるのだが、……。自宅はすべてが整い過ぎていて、母親の良子はでき過ぎで、単身赴任中とはいえ父親・譲の気配はなかった。美由紀は「完璧主義の裏にあるものは、自己批判と劣等感」とつぶやく。

 

第三話「縋る者」(23歳 理沙)  幸せそうな同級生の、意外な告白
大地は駿河湾に面した折笠市の実家に正月に帰省した。結婚して二歳半の子供がいる理沙が言った。「望月君は、未熟な自分が他人の人生を左右するような仕事をしてもいいのか悩む、って言ったよね。でも、自分では問題を解決できずに、調停委員や家裁調査官という他人に、縋るしかない人間もいるの。」


第四話「責める者」(35歳 可南子)  理想的な夫と、離婚を望む妻。その真相は
大地の仕事は家事事件対応に変わり、上司は32歳の露木千賀子になった。案件は朝井可南子35歳からの、精神的虐待を理由とする夫・駿一との離婚調停だった。駿一の評判は申し分なかった。医師は言う。「モラハラの加害者は、外ではいい人を演じるんです。」「モラハラの被害者は、お前が悪い、と加害者に思い込まされるんです。」


第五話「迷う者」(10歳 悠真)  息子の親権を主張する母親の秘密とは

離婚申立人は片岡朋美35歳、夫は伸夫46歳。小5の悠馬の親権を争っている。

別居している朋美の部屋を訪ねた大地は、そこに……。

 

 初出誌:「オール読物」2014年8月号、11月号、2015年2月号、5月号、2015年11月号(迷う者「旅立つ者」から改題)

  

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

望月大地が、少年犯罪や離婚の問題の表面だけでなく、自宅を訪ねるなど実情を調べることで裏に隠れた本当の問題の根っこを探し出す。経験不足で、気が回らず、不器用な困っている者の何とか役に立ちたいという想いだけで彼が真相、そして妥当な解決策に迫っていく過程が良くかけている。

 

ダイナミックさや、ミステリー性はないし、どちらかというと暗い話は著者には適していないと思うが、でもいろいろな試みにチャレンジする態度は良しとしよう。(上から目線)

 

 

柚月裕子 経歴&既読本リスト

 

 

 

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柚月裕子『最後の証人』を読む

2018年07月29日 | 読書2

 

柚月裕子著『最後の証人』(角川文庫ゆ14-2、2018年6月25日KADOKAWA発行)を読んだ。

 

裏表紙にはこうある。

検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。ホテルの密室で男女の痴情のもつれが引き起こした刺殺事件。現場の状況証拠などから被告人は有罪が濃厚とされていた。それにもかかわらず、佐方は弁護を引き受けた。「面白くなりそう」だから。佐方は法廷で若手敏腕検事・真生と対峙しながら事件の裏に隠された真相を手繰り寄せていく。やがて7年前に起きたある交通事故との関連が明らかになり……。

 

プロローグ

女の手にはディナーナイフが握られている。…ナイフの切っ先は男に向けられている…「馬鹿な真似はやめろ」男が叫ぶ。…女はつぶやいた。「あの子の復讐よ」

 

佐方(さかた)は、金にならなくても面白い事件の依頼だけを受けるヤメ検の弁護士。数々の証拠から被告の有罪は間違いないだろうという事件の弁護を引き受ける。小坂千尋は弁護士を目指す事務所の熱心な事務員。

今回の事件の検察官の庄司真生(まお)は30代前半のやり手で、上司の筒井は佐方の元上司でもある。

 

高瀬光司は5年前に38歳でクリニックを開業。小学5年の卓は自転車に乗っているときに車に跳ねられて死んだ。一緒だった親友の直樹は車が赤信号を無視し、酒酔いだったと訴えたが、信用されなかった。

卓の交通事故の加害者は島津邦明、51歳、建設会社社長、県公安委員長。不起訴処分となる。

高瀬の妻の美津子は胸腺癌になっていた。

 

今回の事件の裁判長は寺本。

高瀬の隣に住む主婦・田端啓子は美津子が浮気していたと証言。

美津子と島津の経営する陶芸教室で一緒だった宮本良子は、美津子と島津が親密だったと証言。

 

途中、強姦した検事が左遷されたが、裁かれないことに抗議して佐方は筒井に辞表を出した過去が思い出される。

 

 

本書は2011年6月宝島文庫より刊行。

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

身だしなみにかまわず、こだわりの、執念の弁護士佐方像が魅力的だ。優れた事務所員なのだが、佐方には煩わしいほど真面目すぎる小坂や、いかにも経験が少ないが優秀な検察官の真生も佐方を盛り上げる。

 

子供の仇を討つために、どうするか考え抜いた計画で、その点は面白いのだが、前半、被告人とだけで誰なのか明示されないので、私には大筋がわかってしまったので、減点。

 

 

柚月裕子 経歴&既読本リスト

 

気になった言葉

佐方は言った。「誰でも過ちは犯す。しかし、一度ならば過ちだが、二度は違う。二度目に犯した過ちはその人間の生き方だ。」

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小川糸『ツバキ文具店』を読む

2018年07月27日 | 読書2

 

小川糸著『ツバキ文具店』(2016年4月20日幻冬舎発行)を読んだ。

 

鎌倉の鎌倉宮の脇を山へ向かう道の途中にある小さな一軒家に住む雨宮鳩子、通称ポッポちゃんは、先代のあとを継いで、ツバキ文具店と代書屋をを営んでいる。お悔み、離婚の報告、絶縁状、天国から妻への手紙など様々な代書の依頼が舞い込む。鳩子は、依頼人の話を聞いて、本人の奥の気持ちもくみ取って、文章を練り、紙に書きつける。依頼に最も適した筆記用具、紙、インクを選び、封筒や切手にもこだわる。

例えば透き通るような優しい心を伝えるためにガラスペン、セピア色のインクとベルギー製クリームレイドペーパーを選び、男文字に適したモンブランの「マイスターシュテュック149」と「満寿屋」の原稿用紙を選んだ。

 

最初の依頼は、全身カルピス模様のマダムカルピスからで、砂田さんのところの権之助のお悔やみ状だった。飼っていた〇だった。白い巻紙に薄墨で書いた手紙の実物写真がp27,28に掲載されている。

 

夏秋冬春と4章に分かれ、季節に合わせ、口絵にある鎌倉の地図にある実在の店で食べ、歩き、買い物し、ひと休みする。


鳩子は代書屋になるべく厳しく育てられた先代である祖母に反抗し、ヤンキーになったり、家を飛び出し外国を放浪し、祖母の最後にも間に合わなかった。しかし、周囲の人々とのふれあいを通して、次第に祖母への感謝の気持ちや後悔の念が、心の奥の方から表に出てきた。

 

鳩子は、いつも身ぎれいで明るい隣に住むバーバラ婦人や、店先のポストに投函してしまった手紙を回収したいと頼んできたスタイル抜群の小学校教師楠帆子(通称パンティー)、友人への謝絶状を依頼したダンディな着物姿の男爵や、幼い友人QPちゃんなどに助け、助けられ、次第に感情がほどけてきたのだ。

 

初出:GINGER L.18~21

2017年4月NHKで多部未華子主演でドラマ化された。

本文中にある数点の実物手紙(写真)は、菅谷恵子氏の作品。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

いつもの小川作品の心折れた女性の復活物語であるが、他の小川作品よりいっそう、ほんわか、のんびり、心温まる話になっている。

 

NHKドラマを思い出してしまい、バーバラ婦人はあの強烈な江波杏子の姿にとらわれてしまった。ドラマ、映画は印象が強烈なので、本を読んだ後で見る方がよいと思う。

 

何回も折に触れて行った鎌倉の光景、場所、店、寺などが登場して懐かしかった。例えば、私のこのブログ「鎌倉を江ノ電で」で、「ちょっと変わったスタバがあった。」と写真を載せているが、この本でこれが、漫画家の横山隆一さんの邸宅がそのまま使われているスターバックス御成町店だと知った。

 

 

小川糸(おがわ・いと)

1973年生れ。山形市出身。
2008年、『 食堂かたつむり』イタリアのバンカレッラ賞、フランスのウジェニー・ブラジエ小説賞受賞
2009年『喋々喃々(ちょうちょうなんなん)』
2009年『ファミリーツリー』
2010年『つるかめ助産院

その他、『あつあるを召し上がれ』『さよなら、私』、『にじいろガーデン』『サーカスの夜に』

エッセイ『ペンギンと暮らす』『こんな夜は』『たそがれビール』『今日の空の色』『これだけで、幸せ 小川糸の少なく暮らす29か条』

絵本『ちょうちょう』
fairlifeという音楽集団で、作詞を担当。編曲はご主人のミュージシャン水谷公生。
ホームページは「糸通信」。

 

代書屋は偽物だという鳩子に先代は言う。

「自分でお菓子を作って持って行かなくても、きちんと、お菓子屋さんで一生懸命選んで買ったお菓子にだって、気持ちは込められるんだ。」

 

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町田康『湖畔の愛』を読む

2018年07月25日 | 読書2

 

町田康著『湖畔の愛』(2018年3月20日新潮社発行)を読んだ。

 

宣伝は以下。

龍神が棲むという湖のほとりには、今日も一面、霧が立ちこめて。創業100年を迎えた老舗ホテルの雇われ支配人の新町、フロントの美女あっちゃん、雑用係スカ爺のもとにやってくるのは――。自分もなく他人もなく、生も死もなく、ただ笑いだけがそこにあった。響きわたる話芸に笑い死に寸前! 天変地異を呼びおこす笑劇恋愛小説。

 

衰退地域にある九界湖ホテルの従業員と客たちのドタバタをお笑い風に描く3編。登場人物は皆、くせ者。
数年前から経営が傾いていた創業100年の九界湖ホテル側の人物は、

オーナーは父の後を継いだが、資金繰りに苦労。吉林省育ちで、中国人風のしゃべり方をする美女、
ホテルマンとしての誇りを持つ禿げ頭の支配人の新町と、美人のフロントの圧岡(あっちゃん)いずみ、

オーナーの父親の莫逆の友(親友)で、奇行を目こぼしされている雑用係のスカ爺(須加治一郎)。

「湖畔」

やって来た初老の客・太田の話す言葉が、真摯に対応しようとする新町にも意味不明で、客は怒りはじめる。やってきたスカ爺は、なんなく彼と話しができた。太田は真心研究が高じて一般語を話せなくなったという。

 

「雨女」

嬉しくなると激しい雨を降らしてしまう雨女の超美人・船越恵子が来たせいで、ホテルは陸の孤島になってしまう。建築デザイナーの吉良鶴人は恵子が好きなのだが……。そこに人気女性雑誌VOREGYAの取材チーム。編集者の山野百兵衛、カメラマンの大馬、可愛子ぶるライターの赤岩などが登場してハチャメチャ。龍神まで登場し、スカ爺の活躍の場が……。

「湖畔の愛」

ホテルの経営者が代わり、オーナーと太田は首になり、会計士の資格をもつ綿部が新支配人になった。新町と圧岡はフロントに留まった。湖に落ちて死んだスカ爺の後釜は鶴岡老人。

立脚大学演劇研究会の合宿中に、3人の美女が加わる。なかでも絶世の美女・気島淺は、あきらかに才能が無い男を才能あると勘違いする悪癖があり、辺見チャン一郎に夢中になり、ある日突然目覚めて決別したのだった。研究会の岡崎奔一郎を見て電流が走り、研究会に入会し、ホテルにやってきた。遅れていたその岡崎と、大野ホセアがホテルに到着し、気島をめぐる恋のさや当てが始まり、鶴岡老人を追いかける元暴力団組長のソニア商会の白藤たちがやってきて、複数の騒動が起こる。

 

 

初出:「新潮」(湖畔2013年5月号、雨女2014年6月号、湖畔の愛2017年9月号)

 

 

私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読むの?)(最大は五つ星)

 

いくらなんでもこのドタバタはないでしょう。ナンセンスギャグも笑いを取ってなんぼなのに、おもろない。良いのは話のテンポだけ。それでいて読み終えてしまったのが、くやしく、残念。

町田さんは才能あるのだから、突っ走らずに、もう少し抑え気味にして欲しい。

 

 

町田康(まちだ・こう)

1962年大阪府生まれ。パンク歌手、詩人、俳優で、作家。

1996年に発表の処女小説「くっすん大黒」でドゥマゴ文学賞、野間文芸新人賞

2000年「きれぎれ」で芥川賞

2001年「土間の四十八滝」で萩原朔太郎賞

2002年「権現の踊り子」で川端康成文学賞

2005年「告白」で谷崎潤一郎賞

2008年『宿屋めぐり』で野間文芸賞を受賞

その他、『夫婦茶碗』『パンク侍、斬られて候』『人間小唄』『ゴランノスポン』『ギケイキ 千年の流転』『ホサナ』『生の肯定』『猫にかまけて』シリーズ、『スピンク日記』シリーズエッセイ『破滅の石だたみ

 

このブログの今村夏子のこちらあみ子」に書いたのだが、「こちらあみ子」の

太宰賞受賞会見で、ある記者からの「特異なケースの人の話で自分たちとは関係ないと思う人もいるのではないか」との質問に、選考委員の町田康さん(本書(こちらあみ子)の解説を書いている)は「こわれたトランシーバーで交信しようとする姿はまさにぼくたちの姿じゃないのですかッ!?」と答えたそうだ。

町田康はパンク歌手で、無頼者の作家としか思わなかったが、これを知って好きになった。

 

 

使いたくなった表現を一つ。

「おほほ、って感じよね。まるで吐瀉物だったわね。田舎は駄目ね。…人間として遺伝子を組み換えた方がいいわね。…」

 

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湯川豊『須賀敦子エッセンス 1』を読む

2018年07月23日 | 読書2

 

湯川豊編『須賀敦子エッセンス 1 仲間たち、そして家族』(河出書房新社2018年5月30日発行)を読んだ。

 

イタリア文学者でエッセイの名手だった須賀敦子のかっての担当編集者・湯川豊が、須賀敦子没後20年を記念して全集から厳選、編纂した短編集。
「須賀の文学世界の入り口でもあり、同時に核心でもある諸篇」

 

ミラノ 霧の風景』より

「ガッティの背中」:ガッティが死んだで始まる。個性豊かなガッティとの出会い、才気にあふれ、冗談好きなガッティのダイナミックな活動期、疑い深くなって加速度的な下降期、キャンディーを嬉しそうに頬張る心を病んだホームでの最後の出会い。

 

「遠い霧の匂い」「アントニオの大聖堂」

 

コルシア書店の仲間たち』より

「入口そばの椅子」:コルシア書店の大切なパトロンで、ミラノの名家のツィア・テレーサは皆の尊敬を集め、大切にされていた。

握手をするときに、手にキスを受けることになれている彼女は、手のひらを下にして、ふわっとこちらの手にゆだねてくる。

 

中国の文化大革命の余波を受けて、ヨーロッパの若者を揺り動かした革新運動が、書店にも押し寄せて、あっというまにすべてを呑みこんだ。既存価値のひとつひとつが、むざんに叩きつぶされ、政治が友情に先行する、悪夢の日々がはじまった。

 

入口そばにだれかが置きわすれた椅子にすわって、ぼんやりほほえんでいたツィア・テレーサ。それが、日本に帰ることを決めた私の、さいごに見た彼女だった。……おや、どなたでしたっけ。 きらめきを失ったツィア・テレーサの大きな目が、宙をまさぐり、小さなレースのハンカチをにぎった骨太の手が、ひざのうえでかすかにふるえていた。

 

「銀の夜」:ダヴィデ・マリア・トゥロルドは有名な詩人で、教会からロンドンに追放された革新的司祭だった。

「夜の会話」

 

『ヴェネツィアの宿』より

「カティアが歩いた道」「ヴェネチアの宿」「夜半のうた声」

「旅のむこう」:結婚して日本に帰国し、三週間滞在して帰国するとき、

横文字の苦手な母のためにいつもしたように、ミラノの家の住所を書いた封筒を一束、居間に持っていくと、母はその宛名をじっと見つめながら言った。

「ミラノなんて、おまえは、遠いところばかり、ひとりで行ってしまう」

(この項、向田邦子さんの「字のない葉書」を思い出した。)

「オリエント・エクスプレス」

「アフォデロの野をわたって」:結婚したベッピーノに折に触れて死の影をみて、冷静さを失い怯える須賀さん

 

『トリエステの坂道』より

「雨のなかを走る男たち」:夫の貧しい鉄道労働者の家族たちの話

「キッチンが変わった日」「ガードのむこう側」「マリアの結婚」「セレネッラの咲くころ」

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

本当は五つ星だが、これはあくまで須賀敦子入門編。美しいエッセイがいっぱいのそれぞれの原典を読んでもらいたいので四つ星にした。

須賀さんは、翻訳で文章力を磨き、経験豊かな60歳になってから、20年以上昔のことを書いたので、余裕を持って、しっとりと懐かしさあふれる美しい文章が書けたのだと思っていた。

しかし、描く人物像が内面までくっきりと描写されていて、仲間や家族との距離感の取り方の巧みさに、今回あらためて感心した。十分な愛情を持ちながら、彼らを一人の人間として冷静に眺めているからこそ、見事に描き切っているのだろう。

 

須賀敦子の略歴と既読本リスト

 

私の「須賀敦子の世界展へ」見学記録

 

 

湯川豊(ゆがわ・ゆたか)

1938年新潟生まれ。慶應義塾大学卒業後、文藝春秋入社。須賀敦子担当の編集者だった。「文学界」編集長、同社取締役を経て東海大学教授、京都造形芸術大学教授。

2010年『須賀敦子を読む』で読売文学賞。

著書『イワナの夏』『本のなかの旅』『丸谷才一を読む』『星野道夫・風の行方を追って』など。

 

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長い野菜

2018年07月21日 | 食べ物

たまたま、マルシェで見つけた長いナス。

どこかで見たことがあるような気がする。

炒めて食べたが、柔らかくておいしかった。



こちらはキュウリ。ただ大きくなり過ぎただけのようだ。

皮をピーラーで削って、種をスプーンでこそげ取り、塩もみして食べた。

味は、普通。





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柚月裕子『慈雨』を読む

2018年07月19日 | 読書2

 

柚月裕子著『慈雨』(2016年10月30日集英社発行)を読んだ。

 

群馬県警を定年退職した元刑事・神場は在職中に関わった事件の被害者の供養のために58歳の妻・香代子と共にお遍路で四国を巡っていた。家には一人娘の幸知、12歳になる犬のマーサが留守番だ。


二人は巡礼を進めながら、30年近く前、県北の僻地・夜長瀬(やながせ)の駐在所で始まった新婚生活や、尊敬する先輩を見舞った不幸を思い出す。神場は、数々の労苦を担わせ、にもかかわらず明るさを失わない妻を改めて思う。それだけに娘には刑事の妻になって欲しくないと強く思う。

16年前の小学校1年生の純子ちゃん殺人事件で、神場は遺体を発見し、犯人は逮捕された。しかし、えん罪ではないかとの疑われる事実があり、今も神場は十分な捜査ができなかったと自らを責め続けているのだ。

 

そこへ、TVのニュースで、小学校1年生の愛里菜(ありな)ちゃんの遺体が発見され、群馬県警が捜査本部を立ち上げたと知った。16年前の純子ちゃん事件との関連が気になって、神場はかつての部下、32歳の緒方に電話を入れ、現況をたずねた。手がかかりは遺体発見現場近くで目撃された白い軽ワゴン車だけだった。しかも、その足跡はNシステムでも皆目つかめなかった。

緒方と幸知は半年前から付き合っていたが、神場は緒方を買っていたのだが、・・。

捜査本部の指揮は、県警捜査一課長の鷲尾で、彼は神場とともに純子ちゃん事件の捜査にあたり、ともに苦渋をなめた仲なのだ。

しかし、神場は、巡る地元の人の親切に触れ、罪を悔いる遍路の人の苦悩を聞いて、徐々に心が溶けていった。緒方からの捜査状況の進捗ははかばかしくなかったが、たまたま子供がおもちゃの車を箱にしまうのを見て、Nシステムの盲点に気づき、事件は解決へ進んでいく。

 

初出:「小説すばる」2014年12月号~2015年12月号

 


私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

愛里菜ちゃん事件の捜査は群馬県警で緒方、鷲尾を中心に行われ、神場は直接今回の事件に関与せず、純子ちゃん事件を思い出しながら、妻とともに四国の札所を巡るだけだ。

巡礼の旅の途中途中で過去の事件捜査を思い起こし、妻への態度を反省し、時に緒方から現在の事件の捜査状況を聞き出す。この二重構成が面白い。
そして、最後に神場の気付きが行き詰まった捜査を一気に進展させる。


しかしながら、神場の考え方はいくらなんでも、古すぎて、ついていけない。16年前の事件の再捜査をしないことは当時の幹部の判断であり、一刑事の神場が罪悪感を持つ必要はない。彼が責任を感じて、全財産を差し出して償おうとすることは理解できない。また、神場が妻へ何も語らない態度は、あまりに時代錯誤だ。現代の話としては、無理があると思う。

 

 

柚月裕子 経歴&既読本リスト

 

 

 

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羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』を読む

2018年07月17日 | 読書2



羽田圭介著『スクラップ・アンド・ビルド』(文春文庫は48-2、2018年5月10日文藝春秋発行)を読んだ。

裏表紙にはこうある。

「じいちゃんなんて早う死んだらよか」。ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のため面接に臨む日々。人生を再構築中の青年は、祖父との共生を通して次第に変化してゆく――。瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、老人の狡猾さも描き切った、第153回芥川賞受賞作。



健斗は28歳で、資格試験の勉強を自宅でしながら転職活動中。入居後40年経つニュータウン内の多摩グラントハイツにと87歳の祖父と3人暮らし。モールのDCブランドショップ店員で4歳下の亜美と交際している。企業の中途採用には何度も落ちるが、あまり気にしていない。


ほとんど健康体といってもいい祖父だが、口癖は「もう死んだほうがよか」。

3年間面倒を見てきたは、できることは自分でさせようと、実の父親である祖父に容赦なく厳しくあたる。健斗も数時間おきに用を足す祖父がアルミ製杖をつく音のせいで眠りが浅くなるなど、祖父に嫌気がさしていた。

 

健斗はふと、祖父に何もさせないような介護をして、弱らせて、祖父の願いを自然にかなえるようと考えて、実行し始める。
祖父の体が弱っていくのを見た健斗は、使わない能力は衰えると実感する。健斗は必死に厳しい筋トレやジョギングを続ける。

祖父をおぼれるはずのない水位の風呂に入れ、トイレに行くため出てきた健斗が戻ると……。


初出:「文學界」2015年3月号、単行本:2015年8月文藝春秋刊


羽田圭介(はだ・けいすけ)
1985年東京都生まれ。明治大学商学部卒。一般企業に就職するが1年半で退職し専業作家に。
高校3年の時、「黒冷水」で文藝賞受賞
2008年「ミート・ザ・ビート」で芥川賞候補

2014年「メタモルフォシス」で芥川賞候補、野間文芸新人賞候補

2015年本作品「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞受賞


私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

87歳の祖父が衰えていく一方で、並行して28歳の健斗は必死で体を鍛える様子は良くかけている。裏にある祖父の狡さも、母の厳しさも巧みに表現されているが、スケールが小さいし、深くもない。

昔、「黒冷水」を読んで、高3でこんなひねた小説書く羽田圭介はどう伸びるのか心配したのを覚えている。細かな心理を描く手法はあまり変わっていない。長編は書けるのだろうか? 綿矢りさと同じく、若くしてデビューしても、このままでは大物にはなれないと思う。

 

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仲野徹『こわいもの知らずの病理学講義』を読む

2018年07月15日 | 読書2

 

仲野徹著『こわいもの知らずの病理学講義』(2017年9月25日晶文社発行)を読んだ。

 

宣伝は以下。

ひとは一生の間、一度も病気にならないことはありえません。ひとは必ず病気になって、死ぬんです。だとすれば、病気の成り立ちをよく知って、病気とぼちぼちつきあって生きるほうがいい。書評サイト「HONZ」でもおなじみ、大阪大学医学部で教鞭をとる著者が、学生相手に行っている「病理学総論」の内容を、「近所のおっちゃんやおばちゃん」に読ませるつもりで書き下ろした、おもしろ病理学講義。脱線に次ぐ脱線。しょもない雑談をかましながら病気のしくみを笑いとともに解説する、知的エンターテインメント。


第1章は、私たちの体の細胞がどのようにできているか、何によって損傷し、死ぬかなどが解説される。


第2章は、異常となった血液のふるまいや、脳梗塞、心筋梗塞、血管の傷害による病気のメカニズム解説。


「インターミッション」では、DNA、RNA、遺伝子、ゲノムなどの基本的な説明。


3章、4章では、がんの解説。
がんの発症原因に関係する遺伝子の説明や、子宮頚がん、胃がん、肝臓がんなど個別のがんの発症原因の解説。
複数の突然変異によりできた腫瘍細胞は、異常増殖する突然変異を獲得し、どんどん増殖し、さらに突然変異により進化していく。この巧みとも思える仕組みを逆手にとり、遺伝子レベルで増殖を留めたりする薬が種々開発されている。


私の評価としては、★★★★★(五つ星:読むべき)(最大は五つ星)

細胞の仕組みから、遺伝子レベルでの病の起こり方、薬が効果を発揮する仕組みの説明は複雑だが、要領よく説明されている。多くの人には、染色体のこの部分がここと結合しなど詳細な動作の説明は読み飛ばすことをお勧めする。


ただ丸暗記するだけだと、面白くないが、仕組みを説明されると、がんの悪辣さと、対策の巧みさに、なるほど神様はよく考えるものだと感心して面白く読める。覚えてしまうことはもちろん無理なのだが。

ごくまれな突然変異がポイントの遺伝子に起こり、それがいくつも重なって初めて悪性腫瘍ができ、さらに細胞の中の増殖を抑制している機能に突然変異が起こり、異常に増殖しはじめるとがんになる。このような奇跡が重なり、さらにこの間、免疫による攻撃に耐えた細胞群だけががんになるのだ。
1cmの悪性腫瘍になるまで10年以上かかると考えられている。

それにしても、こんなに高度で、複雑な内容を理解し、ややこしい名前を覚え、膨大な量の勉強しなければならない医学生に同情する。医学部を拒否してよかった??


仲野徹(なかの・とおる)
1957年、「主婦の店ダイエー」と同じ年に同じ街(大阪市旭区千林)に生まれる。大阪大学医学部医学科卒業後、内科医から研究の道へ。ドイツ留学、京都大学医学部講師、大阪大学・微生物病研究所教授を経て、大阪大学大学院・医学系研究科・病理学の教授に。
専門は「いろんな細胞がどうやってできてくるのだろうか」学。
著書に、『幹細胞とクローン』(羊土社)、『なかのとおるの生命科学者の伝記を読む』(学研メディカル秀潤社)、『エピジェネティクス』(岩波新書)など。
趣味は、ノンフィクション読書、僻地旅行、義太夫語り。




以下、メモ

 

■序章 病理学ってなに?

病理学:pathology(やまい)の理(ことわり)、言い換えると、病気はどうしてできているかについての学問
ジョーク「内科医はなんでも知っているがなにもしない。外科医はなにも知らないがなんでもする。そして、病理医はなんでも知っていてなんでもするが、ほとんどの場合手遅れである」

 

■第1章 負けるな!細胞たち──細胞の損傷、適応、死

細胞の数はおおよそ数十兆個、そのうち6割以上が赤血球。大きさはおおよそ直径10マイクロメートル。

細胞の死に方の一つが、帰還不能限界点を超えて死ぬ壊死(えし、ネクローシス)。壊死した細胞はマクロファージが貪食(どんしょく)する。

もう一つの死に方がアポトーシス。大量のDNAの損傷は壊死を引き起こすが、中程度ではアポトーシスを引き起こす。DNA損傷が蓄積するとがんになるので、抗がん剤のいくつかはDNA損傷を引き起こし、腫瘍細胞をアポトーシスで殺す。

 

酸素と結合したヘモグロビンは深紅色、結合していないと少し紫がかる。動脈の血液は真っ赤で、静脈は紫がかっている。死体は赤味が少ない。

一酸化炭素と結合したヘモグロビンは真っ赤。一酸化炭素中毒で死んだ直後はピンク色。

青酸カリ(シアン化カリウム)もヘモグロビンと結合し、酸素が組織にいきわたらなくなり死ぬ。

 

我々の体のふつうの細胞にはテロメラーゼ活性がない。染色体の端っこのテロメアは、細胞が分裂するたびに短くなっていく。分裂回数が進んである程度以上短くなると、もう分裂できなくなる。しかし、肝細胞にはテレメラーゼ活性があり、血球、皮膚など寿命が短い細胞を一生の間作り続ける。また、がん細胞にもテレメラーゼが活性化されていて無限に増殖する。

 

寿命に関係する遺伝子は、身体活動のリズムを制御する時計遺伝子、活性酸素に関係する遺伝子、神経や内分泌に関係する遺伝子の3つ。

 

■第2章 さらさらと流れよ血液──血行動態の異常、貧血、血栓症、ショック

血液の量は体重の約1/13。10~15%なら失血しても問題ない。15~30%失血すると、かろうじて生きているという状態で、点滴での水分補給が必要となる。30~40%失血で、血圧が下がり、ショック状態で、臓器の機能障害が生ずる危険性がある。

■インターミッション  分子生物学の基礎知識+α

■第3章 「病の皇帝」がん 総論編─その成り立ち

腫瘍とは細胞が増えてできた塊という形態的な意味合いであるのに対して、新生物とは機能的、概念的意味合い。死亡統計では、悪性腫瘍でなく、悪性新生物という。

広義のがんは、悪性新生物(悪性腫瘍)のすべて。
狭義のがんは、上皮性の悪性腫瘍。上皮組織は体の表面や、消化管など内腔の表面を覆う細胞。
骨、軟骨、筋肉、脂肪、血管など、非上皮性の細胞に由来する腫瘍は、肉腫という。
脳にできる腫瘍は、脳腫瘍。

がんは、体の細胞に生じた突然変異、それも数個の突然変異が重なって初めて発症する。また、これまでに調べられた悪性腫瘍のすべてはクローンである。突然変異が蓄積して進化するためには、がんの元になる細胞はかなり寿命が長い必要があり、ほとんどが幹細胞、あるいはそれに近い性質を持つ細胞だと考えられている。

がんはもともと一個の細胞であっても、突然変異の頻度が高いので、少しずつ異なる性質を持った細胞群、サブクローンの集まりになっているのが普通。異常に増殖する突然変異や、それを抑えようとする機能が壊れる突然変異が起こるとがんになる。
抗がん剤により耐性を持つサブクローンが増殖することもある。

我々の生きている環境では、化学物質や紫外線、放射線など突然変異が起こりやすい。しかし、DNA修復機構により、がんになる頻度はそれほど高くない。この修復機構に必要な遺伝子に突然変異を持っている人もいる。
抗がん剤や放射線による治療が原因のがんを二次性がんといい、複雑な染色体異常の頻度が高く、治療が難しい。また、若年における治療ほど二次性がんをひきおこしやすい。

■第4章 「病の皇帝」がん 各論編──さまざまな進化の形

免疫療法は、ある特定の患者に効く場合はあるが、どの患者に効くかがわからない。したがって、多くの患者のデータを統計的に処理すると、有意な効果がなかなか認められない。

抗がん剤の一種である分子標的薬は、正常な細胞にはなくて、がん細胞にだけある変異をターゲットにする。

質調整生存年(QALY)とは、2年間延命できたとしても、生活の質が健康な人の半分なら1年と換算するというように、年数と生活の質(QOL)を掛け合わせる。1単位のQALYを獲得するための経費を増分費用効果費(ICERアイサ―)という。アメリカやイギリスでは、(この健康な1年の値段は)およそ500~600万円が限度とされている。


放射線診断、レントゲンを見て異常があるかどうかの判断はいずれAIに代わられるでしょう。症状や検査値からの病名診断はすでにかなりの確度でできるようになっていて、ベテラン医師と同程度で、希な疾患についてはAIが圧勝です。

「IBM Watson」で検索すると、日本語の公式サイトがヒットします。そのサイトでは、twitter のコメントから性格分析をできるデモがあります。


■おわりに

検査で見つかるような悪性腫瘍になるまで、1cmくらいに育つまでには、おそらく10年以上かかると考えられています。どのくらいのドライバー遺伝子変異が必要かというと、最も少ない白血病で2~3Ⅴ、ほとんどの固形がんでは6個程度とされています

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「お米のカステラ からんこえ」

2018年07月13日 | 食べ物

 

吉祥寺の末広通りを歩いていたら、「月曜日限定……こめのかすてら」という声が聞こえた。

「cafeからんこえ」は、毎週月曜日11時〜15時限定で、カフェといっても、お米でできたカステラのお持ち帰りだけだという。

通りすぎたのだが、「20代カップル2人でやってる保存料・添加物不使用・グルテンフリーのお米のカステラ」と見かけたので戻って、若い人を応援して、いい気持ちになるために大枚¥300を投入してご購入。

 

お米のカステラ からんこえ」は、武蔵野市を中心に自転車でお米のカステラを販売して1年半。

最近始めたホームページもある。

なお、カランコエ Kalanchoeとは、多年草で、花言葉が「小さな幸せ」。

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「椿屋カフェ」でランチ

2018年07月11日 | 食べ物

 

キラリナ京王吉祥寺の7Fにある椿カフェでランチ。

店内は、ステンドグラスなどが大正ロマンを思い出させる雰囲気。

平日の13時前。ほぼ満員。打合せしている人もいる。

 

私は「椿屋特製ビーフカレー」の「3点セット」¥1,430

「3点セット」とは、サラダor季節のスープ & 椿屋ブレンドor椿屋ブレンドティ)

頼んだスープは冷たく、一口サイズだが、非常においしい。何の野菜だか聞くのを忘れた。

ビーフカレーは肉も4切ほど入ってご機嫌な味。唯一苦手のらっきょが付け合わせてないのも良し。

 

相方は、「椿屋ハヤシライス」の「3点セット」¥1,330

もくもくと完食。

 

食後は、サイホンで入れたコーヒーと、

紅茶

 

合格の店でした。

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椰月美智子『つながりの蔵』を読む

2018年07月09日 | 読書2

 

椰月美智子著『つながりの蔵』(2018年4月27日KADOKAWA発行)を読んだ。

 

宣伝文句は以下。

祖母から母、そして娘へ。悩める少女たちに伝えたい感動の命の物語。

41歳の夏、同窓会に誘われた遼子。その同窓会には、蔵のあるお屋敷に住むの憧れの少女・四葉が来るという。30年ぶりに会える四葉ちゃん。このタイミングで再会できるのは自分にとって大きな一歩になるはず――。
 小学校5年生のある夏。放課後、遼子と美音は四葉の家でよく遊ぶようになった。広大な敷地に庭園、隠居部屋や縁側、裏には祠、そして古い蔵。実は四葉の家は幽霊屋敷と噂されていた。最初は怖かったものの、徐々に三人は仲良くなり、ある日、四葉が好きだというおばあちゃんの歌を聞きに美音と遼子は遊びに行くと、御詠歌というどこまでも悲しげな音調だった。その調べは美音の封印していた亡くなった弟との過去を蘇らせた。四葉は、取り乱した美音の腕を取り蔵に導いて――。
少女たちは、それぞれが人に言えない闇を秘めていた。果たしてその心の傷は癒えるのか―。輝く少女たちの物語。

 

 現在

遼子は、夫との間に小6の双子の時生とひかりがいる41歳で、新潟に住む。30年ぶりに小学校のクラス会で美音、四葉と会う。

 

小6の時

母・雅子は42歳、父・光信は44歳、祖母・登巳子は69歳。遼子の兄・浩之は17歳の高校生で映画作りに熱中。兄の彼女は沙知。

白石美音(みおん)は、江里口(旧姓)遼子の保育園から同級生。美音の4歳下の弟・利央斗(りおと)は2年前に亡くなった。同級生の柊介(しゅうすけ)が好き。
藤原四葉は遼子、美音と小学校の同級生で、蔵のあるお屋敷に住んでいる。

 

初出:「小説屋sari‐sari」2017年10月号~12月号 

 

 

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

おじいさんが読む本ではなく、YA(ヤングアダルト)の本だ。

でも、女の子の仲良し仲間の離合集散ぶりなどは多少おもろい。

四葉が相手の想いを読み取る能力を持っていたり、3人が蔵の中で、会いたい人に会える非現実的場面にはついていけない。

 

表紙の絵や口絵がやさしく可愛い。装画は岡田千晶

 

 

椰月美智子(やづき・みちこ)
1970年神奈川県生まれ。
2002年「十二歳」で講談社児童文学新人賞を受賞しデビュー。
2007年の「しずかな日々」で野間児童文学賞、坪田譲二文学賞を受賞
2009年『るり姉』『ガミガミ女とスーダラ男

その他、『フリン』『未来の手紙』 など。
「WEB本の雑誌」「作家の読書道」「第102回:椰月美智子さん」で、藤原ていの『流れる星は生きている』を感動した小説にあげていたが、その理由が、自身は幼い二人の子を連れてスーパーへ買い物に行くだけで、クタクタなのに、満州から3人も子供を連れて帰るなんて考えられないというもの。

 

 

「…ぼく最初からわかってたの。丈夫じゃないから長くは生きられないって。でも、お父さんやお母さん、お姉ちゃんたちに会いたかったから生まれてきたんだよ。…」(p178)

(幼い子どもが死んでしまうのは、なにより悲劇だと思う。しかし、幼子が死産で生まれなかった方が良かったかと言うと、幼子にとっても、両親、家族にとっても生まれてきた方が良かったのだと思う。そう思うべきなのだろう)

 

「男の子は六年生になっても、本当に甘えん坊だ。その代わり、男の子は親離れが早いのだろうと遼子は思う。」(p207)

 

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東野圭吾『魔力の胎動』を読む

2018年07月07日 | 読書2

 

東野圭吾著『魔力の胎動』(2018年3月23日KADOKAWA発行)を読んだ。

 

第一章~第四章は連作短編。第五章は『ラプラスの魔女』の前日譚。

 

第一章 あの風に向かって飛べ
往年の名スキージャンパー・坂屋幸広は、不調続きでここ数年優勝から遠ざかっていた。鍼灸師のナユタ(工藤那由多)が治療にあたった(那由多とは10の60乗のこと)。北稜大学流体工学の准教授・筒井利之は映像を解析して坂屋の不調の原因を探っていた。そこへやってきたのが、開明大学の天才脳科学者・羽原教授の娘・羽原円華(まどか)だ。彼女は映像を見てすぐ「上体の突っ込みが早い」「左右のバランスが崩れている」と指摘した。

引退を決意した坂屋は、妻のキョウコと4歳の息子シュウタの前で表彰台に登りたいと願うが、奇跡に近い。しかし、円華は、自分が風を読むから、合図するタイミングで飛ぶように説得する。そして、試合が始まると・・・

第二章 この手で魔球を

無回転で投げるナックルボールは、乱流のいたずらで通常は投げた投手でさえどのように変化するか分からない。しかし、石黒達也投手はナックルを自由に扱え、好成績を挙げていた。しかし、このボールを捕球できるキャッチャーは三浦勝夫だけだった。そして、身体がボロボロで引退せざるとえない三浦に代わるキャッチャー・山東は、自信を無くして全く捕球できなくなっていた。筒井の紹介で現れた円華は、山東を立ち直させることができるという。
円華の秘書役のあの『ラプラスの魔女』の桐宮女史がちらっと登場。

第三章 その流れの行方は
工藤ナユタは、街で偶然に旧友の脇谷に逢い、高校生のときの恩師の石部教諭の障害を持つ息子・湊斗が川で溺れて、意識のないまま病院に入院していると聞いた。その病院は、円華の父が脳神経外科医として勤めている開明大学病院だった。石部は事故の責任に悩み、休職中なのに一年以上病室に見舞いにも来られず、毎月事故があった13日に事故の現場に通っているという。
聞きつけた円華は「子供の障害ときちんと向き合わなかったと思うんなら、たっぷり反省したらいいだけの話で、一緒に川に飛び込むべきだったかどうかなんて関係ない。それは物理学の話。そんなことをごっちゃにしてどうなるんの」と怒る。
円華の警護のタケオ(武尾徹)がちらっと登場。

 第四章 どの道で迷っていようとも

工藤ナユタのはりの患者である盲目の作曲家・朝比奈一成は落ち込んでいて何週間もピアノを弾いていないという。パートナーだった尾村勇(サム)が崖から飛び降りて自殺したのだ。現在は妹の西岡英里子が朝比奈の身の周りの世話をしている。朝比奈は自分がカミングアウトしたことが尾村の自殺の原因だと考えていた。
ナユタから朝比奈の話を聞いた羽原円華は、朝比奈を立ち直らせるために尾村の死の真相究明に乗り出す。
さらに、円華は、ナユタに、「倒錯したセックスを描いた映画監督の甘粕才生を知ってるよね?」と顔を覗き込む。

第五章 魔力の胎動

泰鵬大学の地球科学専門の青江教授に、D県警から、赤熊温泉で起きた硫化水素による中毒事故の原因調査と対策をという依頼があった。この事故が『ラプラスの魔女』の物語の発端となる。つまり、この章は『ラプラスの魔女』の前日譚なのだ。3年前、青江は、助手の奥西哲子と灰堀温泉での硫化水素事故の調査に協力したのだった。吉岡一家の悲劇の原因は?
桑原という横浜で会社を経営する夫婦連れの男や、謎の一人旅の女などが登場。
奥西はいう。「あの女性は自殺するとは思えない。死にたくなっても、美人の場合、大抵すぐに死なずに済む方法が見つかります」「(男に振られた)そんなことで女は死にません」



初出:第一章~第四章は「小説 野生時代」2015年6月号~2018年1月号、第五章は書き下ろし

  

私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

相変わらず読みやすく、一気に読んでしまう。

しかし、謎解きは、第五章以外はそもそも大きな謎でなく、魅力的ではない。

 また、魅力的な人物が登場しない。初期条件からニュートン力学を計算してその後の結果を予測するという円華の超能力が、私には単純すぎてばかばかしく思えてしまう。工藤ナユタがただの語り手の役割しか果たしていないのも面白くない。

 

 

東野圭吾の履歴&既読本リスト

 

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裾分一弘『レオナルド・ダヴィンチ』を読む

2018年07月05日 | 読書2

 

監修・裾分一弘、特別協力・田辺清『アート・ビギナーズ・コレクション もっと知りたいレオナルド・ダヴィンチ 生涯と作品 改訂版』(2018年3月10日改訂版、東京美術発行)を読んだ。

 

はじめに レオナルド研究この10年(田辺清)

20世紀半ばのオークションでわずか45ポンドの値しかつかなかった「男性版モナ・リザ」と称される「サルバトーレ・ムンディ」がアラブ首長国連邦のアブダビ文化観光局に504億円で落札され、話題となった。展覧会も盛況で、まだまだレオナルド研究は進んでいる。

 

素描の真作も発見されている

「レオナルドは、ことのほか素描(デッサン)を重視した。」

レオナルドの素描は約600枚といわれる。失われたもののあるが、「美しき花嫁」のように真作と判定されたものもある。

 

波乱の運命をたどった手稿

現存する手稿は約8000ページ。本来は倍近くあったと推測される。

 

第1章     修業時代

「受胎告知」はまだ表現が固い。しかし、師匠ヴェロッキョ工房の「キリストの洗礼」の絵で、左下の天使の絵は師匠を越えた力量であることが私にもわかる。他の部分が固く、どこか不自然に感じられるのに対し、柔らかく、自然なのだ。出来上がった作品を見たヴェロッキョは二度と筆をとらなかったという。

 

熱心な素描家

レオナルドの現存作品は10点前後で、可能性のあるものを含めても40点を超えない。対して素描・素画は現存するだけでも約600枚。時間をかけて素描する勤勉な画家であった。

 

レオナルドの永遠の女性像

女性を描く場合には、両足はそろえ、両腕はつけ、顔はうつむき加減で傾けるなど、「慎み深い肢体」ととらせることが肝心だと言っている。

 

第2章     宮廷芸術家としての時代

解剖学への深い関心

画家としての探求心を出発点として、生涯に行った解剖は30体以上。解剖手稿は200枚に及ぶ。後年、法王庁から解剖禁止の命令が出て、出来なくなった。

 

第3章     研究に打ち込む時代

レオナルドの手稿

当時、絵画や彫刻は学問とはみなされず、「技術」と呼ばれていた。レオナルドは正確に観察し、正確に表現することが必要だと考えていた。つまり、画家となるためには、学問をしなければならなかったのである。この記録が手稿となった。

 

第4章     晩年の時代

モナ・リザ(ラ・ジョコンド)

 

 

本書は、2006年5月30日刊行の初版に、巻頭16ページを増補し改訂。

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)

 

ダヴィンチの生涯が要領よくまとめられていた、読みやすい。パラパラと絵や手稿を眺め、簡潔な文を読めば、ダビンチのすべての最小限を知ることができる。さすが、日本のダヴィンチ研究の第一人者(2016年2月91歳で死去)と呼ばれた著者だけのことはある。

 

「時代を先取りした発明」としてレオナルドの発明・アイデアが、数ページ紹介されている。私はこれらに興味はない。確かに天才だとは思うが、現時点でその内容に意味はない。これに比べ、彼の絵画は現代でも多くの人に感動を与え、巨大な価値がある。

 

裾分一弘(すそわけ・かずひろ)

1924年11月岡山県生まれ。 2016年2月死去。西洋美術史学者、学習院大学名誉教授。

九州帝国大学文学部哲学科卒。同大学院修了。1958年九州大学助手、1962年武蔵野美術大学助教授、1967年学習院大学文学部教授。95年定年退任、名誉教授。
レオナルド・ダ・ヴィンチ研究の第一人者。
著書『レオナルド・ダ・ヴィンチの「絵画論」攷』、『レオナルド・ダ・ヴィンチ 手稿による自伝』『レオナルドに会う日』『イタリア・ルネサンスの芸術論研究』『レオナルドの手稿、素描・素画に関する基礎的研究』


田辺清(たなべ・きよし)
1952年千葉県生まれ。大東文化大学国際関係学部国際文化学科教授。イタリア・ルネサンス絵画を専門とする。
19978年-81年、ロンドン大学付属コートールド美術研究所に聴講生として留学。1985年成城大学大学院博士課程修了。近年、東西芸術の比較研究などをテーマにした研究も行う


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「吉兆 吉祥寺」でランチ

2018年07月03日 | 食べ物

 

旬の食材の創作日本料理をうたう「Kissho KICHIJOJI」でランチした。

 

吉祥寺駅からJRの北側に沿って西荻方面に伸びる道を数分、第Ⅱ大栄ビルの2階にある。今回で3回目

 

二人だったが予約して個室を確保した。

 

頼んだのは「松花堂弁当 武蔵野」¥3,024

刺身はタイとしめ鯖。相方にはちょうど良い量で、どれも柔らかく好評。私は腹8分目。

 

ランチコーヒー(¥270)を追加。

 

量は少なめだが、美味しいし、上品で、店の雰囲気も良い。ランチなら¥1080~¥4104、ディナーなら¥3,800~¥12000とバカ高くはない。

 

 

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