自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その199)

2013-04-25 | ジャコウアゲハ

4月25日(木)午後5時。夕方のウォーキングに出かけました。

ついでに,ジャコウアゲハの棲息地に寄って,状況を確認しておこうと思いました。途中,知人リュウさんに会いました。そのとき「ジャコウアゲハ,飛んどったで。一匹やったけど」と教えてくれました。リュウさんは,棲息地に隣接する水田の所有者です。

棲息地に行って,びっくりするような発見をしました。そこにサクラの小さな木が生えているのですが,わたしの目の高さぐらいのところに蛹の殻がついていたのです。この木に蛹が付いているのを見たのは,これで二回目。たったの二回目!

 

それで,「ほほうっ!」と思いながら木を見上げると,高さ2m程にある枝にジャコウアゲハ(メス)がとまっていたのです。偶然の発見でした。たぶん,この殻から出たものでしょう。その個体がなんと,これまで見たこともない大きさ! 見るからに小さい!

それを持ち帰って,室内で写真に撮りました。妻も一目見ただけで「小さい!」と言いました。

確かに小さな体型です。寸法も測りました。開長88mm,前翅長40mm,胴長25mm。

どういうわけでこんなに小さなアゲハが誕生したのでしょう。種類が違うとは考えられません。カブトムシでも小型の個体が出現することがありますが,同一種です。それと同じでしょう。蛹化したとき詰まっていた体内成分の多少が影響しているのかもしれません。

貴重な機会なので,複眼や口吻,触覚,前肢の写真を撮っておきました。

部分拡大をしましょう。

スマートな触覚です。

偶然のタイミングというのはふしぎなものです。これも自然からの贈り物です。

 


シロバナタンポポの分布域拡大

2013-04-24 | 

ひと昔前までは,わたしの住む地域ではシロバナタンポポはまだ珍しいという感じでした。探してもなかなか見つかるものではなく,例えば,日本海側の国道沿いや瀬戸内海側の都市部など,ごく限られた所でしか見かけませんでした。

というのは,もともとは九州辺りで一般的なタンポポだったようで,やがて物流の拡大によって国道に沿って分布が東進してきたのです。したがって,海岸沿いで見かけても,内陸部になると見当たらないのも当然でした。

わたしは,タンポポの分布に関心があって,ついでに花茎の長いシロバナタンポポ を求めてあちこちに出かけたことがあります。採集した花茎の最長記録は1mを超しています。それは,たぶん極めて珍しいはずです。その旅の帰り,種子も根も持ち帰りました。もちろん,自宅に植えようと思ってのことです。

たくさん人がいることですから,中には,わたしのような人もあるはず。これを家の近くに植えたら,もちろんそこから分布が広がるでしょう。わたしの家の近くに,わたしの関心とはまったく関係なく同じことをした人があります。その家の周りに,もうたくさんのシロバナタンポポが咲くようになっています。「ははーん」と思って尋ねると,ヤッパリです。

こんな感じで,道端のタンポポを気にかけていると,パッとシロバナタンポポが目に飛び込んでくることがあります。「ワァーッ! ここにも生えかけている!」と驚いたことがつい最近! タンポポに聞いてもわかるわけがなく,推理するほかありません。

結構,人が持ち込むということがあるのではないでしょうか。一旦入れば,確実に分布を拡げます。既存種とは棲み分けがなされるので,心配はないでしょう。こう考えると,生態系が時代とともに少しずつ変わるのは止むを得ないともいえます。

 


タンポポを訪れた昆虫(その7)

2013-04-24 | 昆虫と花

ウォーキングをしている途中,吸蜜中のシマハナアブに出合いました。腹部の縞模様がくっきりしていて,三角斑が明瞭です。

大きな複眼をしている割にはのんびりタイプのようで,この時は警戒心といった程の距離感は伝わってきませんでした。ピントは甘いものの,かなり近寄って撮りました。機種はコンデジ。

黄色の花を背景にして,褐色のからだが浮かんでいるように見えます。おいしいごちそうで,お気に入りのようです。 

シマハナアブはいろんな花で見かけます。それだけ環境への適応力が大きいということです。これだけのからだの動きを支えるためには,それ相当の高エネルギー源を確保しなくてはならないのです。好き嫌いをしていては種としての生存は危なっかしいことになります。

からだが大き目のハナアブなので,のびのび動き回っているように見えます。先に書いた“のんびり感”につながっているようです。目の前には幸せな空間が広がっているに違いありません。

 


ジャコウアゲハ観察記(その198)

2013-04-23 | ジャコウアゲハ

『その197』で触れた個体について,補足しておきます。

風がかなり吹くなか,殻から1mほど移動してきてコンクリートブロックにしがみついていました。生まれたばかりなのに,これだけ歩いてきたということは,ふつうの例と比べてもたいへんな事実です。個体にはさっそく災難が降りかかったといえるでしょう。状況をきちんと記録しようと思い,時間をかけて写真撮影をしました。

そのうちに,巻かれていた口吻が伸び始めました。ゆっくり,滑らかに,するするっと。羽化後,口吻が機能するか試しに伸ばしているのでしょう。言い換えれば,ウォーミングアップ。観察していれば,ごくふつうに見られる風景です。口吻にはまだ水分が付いています。先が二股になっているのがよくわかります。

じっと見ていると,口吻を伸ばし,その後また巻きました。そうして,しばらくして同じ運動を繰り返したのです。見ている限りでは,この個体は二度この運動を行いました。その姿はまるで,「さあ,撮ってくださいな」とポーズをするしぐさのようにさえ感じられました。

わたしとしては,かなり貴重な画像を得ることができたと思っています。風とこの個体に感謝。

 


満開,トキワマンサク

2013-04-23 | 植物

我が家のトキワマンサク二本が満開を迎えました。これらは赤花と白花の色違いです。

トキワマンサクは常緑広葉樹で中国原産の植物だとか。わたしは,この二本を含め全部で5本のマンサクを植えています。もともとマンサクが好きということもありますが,この二本については,常緑で年中花が咲くという謳い文句が気に入って購入したのでした。もっとも,年がら年中咲くなんてことはありませんが,それでも適当に花を付けるという印象はあります。

買ったばかりの頃,大き目の素焼き製植木鉢に植えて玄関先に置いていました。それがいつの間にか生長して,どんどん大きくなりました。もちろん,底の穴から根が伸びて地中に広がっていった結果です。それに気が付いたときは既に遅し,という感じでした。この木を移動するかどうか,移動するにしても枯れないか,いろいろ考えました。考えた末に結局,そのまま置き育てることにしたわけです。

置いていると,さらに大きくなりました。購入以来20年近く経ちます。元来トキワマンサクは生垣に使われるということでしたが,我が家の場合は必然的に一本仕立てなりました。幹はかなり太くなっています。一本仕立てで剪定を繰り返し,形を整えて丸くなるようにいきました。

一昨年,植木鉢を割って根の周りに巻き石をし,用土を入れました。

結果,今では玄関の樹木として結構見栄えがしているように思います。お越しいただく方の印象にも残るようです。今のところ高さは1m20cmです。これから先,宝としてたいせつに育てようと思っています。

 


ジャコウアゲハ観察記(その197)

2013-04-22 | ジャコウアゲハ

庭にある越冬蛹のうち,これまでに羽化したものは3個体。残る個体は4つです。

4つのうちのひとつに,どうやら羽化近しの兆しが見え始めました。これはブロック塀で隣り同士なかよく付いたもので,下写真では向かって右側の個体です。4月21日(日)午後3時現在,腹部に薄っすらと赤みが覗いています。

 

右個体だけをアップ気味で撮りました。

左側の個体にはすこし赤みが見えるかなという感じはありますが,はっきりはしていません。

翌4月22日(月),午前11時。腹部の黒・赤の色調が鮮やかさを増してきました。今日羽化することは間違いありません。

午後2時30分。透明感がはっきりしています。間もなく羽化するかなと思われましたが,あいにく急用ができ外出。

 

1時間30分後の午後4時。帰宅してみると,既に羽化。風がかなり吹く中,ブロックにぎゅっとしがみついていたのです。そして軟らかい翅がなびいていました。このあと,思いがけなく,すてきな場面を写すことができたのは実にラッキー! 次回に写真の一部を載せましょう。

午後5時。風が弱まりました。この個体はメスです。頭を上に向けて,疲れをとっているように思えました。なお,写真中の矢印(→)は蛹の殻を指しています。

 

 


タンポポを訪れた昆虫(その6)

2013-04-21 | 昆虫と花

ポカポカ陽気のある日。甲虫が一匹タンポポの花に付いていました。コメツキムシかゴミムシの類いでしょう。とても気持ちよさそうで,のんびりした風景でした。翅の艶が反射する太陽が,林の陰とともに映し出されていました。

よくよく観察していると,確かに蕊の辺りをムシャムシャやっている様子です。食べているのです。それに,からだは結構花粉にまみれています。盛んに花を訪れ,林立する蕊の間を縫うようにして歩き回ったに違いありません。

ただ,気になるのは一般的にゴミムシは肉食性なので,同定には慎重さが要ります。ではこの虫は何でしょう。特徴は,上翅の条溝が明瞭であること,触覚が太くでぎざぎざ状であること,などが挙げられます。

花の大きさとからだを比べると,小さめの昆虫だとわかります。こんな昆虫がタンポポにいることに,ふつうは気づかないはず。レンズを通した世界を意識していると,発見が途切れることはありません。

 


ジャコウアゲハ観察記(その196)

2013-04-20 | ジャコウアゲハ

4月20日(土)。午前9時。羽化から一夜明けました。まだ蛹の殻に付いたままじっとしています。

改めて部分の写真を撮ることにしました。これも映像記録としてわたしには貴重なコマになります。ありがたいことに,撮影中ほとんど動かず静かにしていました。

頭と胸に注目です。

口吻の様子に目を向けましょう。巻かれた状態のとき,うまく輪になるしくみが気になります。

拡大してみると,蛇腹のように輪が規則正しく並んでいます。納得! 自然の妙です。 

目はいつも,昆虫のからだでいちばん気になる部分です。複眼にいかにピントを合わせるか,苦労するところです。個眼が整然と並んでいます。 

肢は実にスマートです。 写真は前肢です。毛がしっかり肢の安全を守っています。メスの前肢には食草ウマノスズクサを感知するとくべつな毛が生えているのですが,この個体はオス。したがって,それらはありません。

頭も肢も,とにかく毛で覆われています。

観察のたのしみが尽きることはありません。

 


タンポポを訪れた昆虫(その5)

2013-04-20 | 昆虫と花

タンポポの花にハムシがやってくることがあります。それもたくさん。今回見かけたのはどうやらコガタルリハムシです。甲虫特有の上翅の艶を見ると光沢のある瑠璃色をしているので,それらしいとわかります。 

ものの解説によると,「ギシギシ,スイバなどの葉を食べる」とあります。では,タンポポで何をしているのでしょうか。一つの花に複数のハムシがいるのはけっして珍しい風景ではありません。草食性昆虫であることは間違いないわけで,花に潜るような格好をしていることを考えると,やはり花粉か蕊かを食べているように思われます。

 

なかには,交尾をしているペアもあります。この昆虫にとっては今が恋いの季節であり,ここは居心地のよい場所なのでしょう。 

 

注意深く見つめていればいるほど,昆虫の生態が多様に見え始めます。

 


ジャコウアゲハ観察記(その195)

2013-04-20 | ジャコウアゲハ

4月18日(木)。午後6時。勤務で一日不在。自宅して蛹の様子を確認しました。昨日羽化した個体のすぐ隣りにある蛹がどうやら羽化近しというところです。昨日と色が確かに違ってきています。

 

最低気温8.8℃(午前5時14分),最高気温25.5℃(午後2時58分)。夏日の一日でした。

4月19日(金)。午前7時。同じ個体の12時間後の様子について触れておきます。腹部に薄っすらと赤みが見えかけてきました。この分だと,今日か明日には羽化すると思われました。昼間は家を留守にするため,羽化するとすればその姿を見届けられないのが残念と思いながら,出勤。

午後6時。帰宅すると,案の定羽化し終わったばかりの幼虫が殻に取り付いていました。そして翅が軟らかく垂れ下がっていました。 

からだの部分の写真を数枚撮りました。複眼には個眼が整然と並んでいます。 

個眼の並び具合を見てみると……。

ストロータイプの口器にピントを合わせ,よく見ると,先が二股になっています。 

触覚はたくさんの節から成り立っています。道理でしなやかに曲がるはず。 

脚先の爪は鉤になっていて,ものにしっかりつかまることができます。 

腹は先まで毛で覆われています。

腹側から頭の方を見ました。複眼を構成する個眼の様子がわかります。 

 

最低気温4.0℃(午後12時00分),最高気温14.5℃(午後1時59分)。 昨日と打って変わり,寒くって強い風が一日中吹き荒れる日になりました(最大瞬間風速14.1m/s)。