自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その200)

2013-04-27 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハが羽化する季節を迎え,ときどき野外で飛翔する姿を見かけるようになりました。

我が家の周りにも,やって来ています。昨日の昼,庭の手入れをしていると,目の前に突然アゲハが現れました。メスです。これにはびっくりするやら,わくわくするやら。手を休めて見ていると,スイセンの白い花にとまって口吻を差し入れました。それが終わると,すぐ近くのスイセンに移りました。

そのあと,低空を飛びながら,つまり産卵場所を探しながら庭を一周しました。庭には鉢植えのウマノスズクサが8鉢,露地植えのそれが10数株あります。しかし,まだ芽を出して間もないので,アゲハは気づかなかったようです。

それで,庭に生えた雑草の上を飛びながらホトケノザの花に取り付きました。そうして蜜を吸い始めたのです。わたしは,ジャコウアゲハがこの花にとまって吸蜜行動をする場面を見たのは初めてです。大急ぎでコンデジを取り出して写しました(下写真)。 

アゲハはいくつかの花を巡りそれぞれで蜜を吸いました。人間への警戒心が極めて薄いので,近づいてその行動を見届けることができました。

こんなことが起こるから花の季節,虫の季節はなんとも魅力的です。  

 


金沢,ふれあいの旅(続々)

2013-04-27 | 随想

サルトリイバラとサンキライの混同の話を掘り下げれば,どんどんふしぎが深まります。そもそも,江戸時代にもそのことを指摘する人があったにもかかわらず,相も変わらず整理付けられないまま,現在に至っていること自体がおかしなことでもあります。その人とは,『大和本草』を著した柏原益軒。

益軒は著書になかで,次のように書いているということです。

  世俗あやまりてこれを山帰来とす、山帰来は土伏苓なり、別物なり

ネット検索した解説をいくつか抜き出すとこうです(原文のまま)。混乱の実態が垣間見えます。

  • 「さるとりいばら」は歳時記で引くと、〈山気来(さんきらい)の花〉の別称として出ている。
  • サルトリイバラのことを俗にサンキライという。学名でいうサンキライは日本には自生していない。
  • サンキライはサルトリイバラ(学名 Smilax china)の俗称だが、正確には別種(学名 S. glabra) で、本来、サンキライ(山帰来)は日本に自生しない。俳句ではサルトリイバラをサンキライと呼ぶ事が多い。
  • 一般にサンキライの名が浸透していますが、実は正式な名前はサルトリイバラ。枝にトゲがあり、猿がひっかかって捕らえられると言う意味で名付けられたそうです。
  • 写真はサルトリイバラ(サンキライ)の葉。

多くの場合,二つのものは別物らしいということを前提にしているように見えます。しかし,違うものなら違うもので整理付けようとする方向が見えなくてはならないと思うのです。伝聞にもとづいているとか,“別称”“俗称”でぼかすとか,そんな現状が多分に見受けられます。なかには,わざわざ「サルトリイバラ(サンキライ)」と()を付して解説されているものもあります。解説の曖昧さが散見され,読んでいて「これではな」と頭を傾げたくなることがしばしばなのです。これでは,混乱に手を貸しているだけです。俳句愛好家の皆さんには申し訳ないのですが,俳句歳時記が誤解を野放しにしている経緯も読みとれます。文学と自然科学とは違うといえばそうなのかもしれませんが,一線を画する視点がいると思われます。

 

調べていて,わたしが出色だと思ったのは廣野郁夫さんが編集していらっしゃる部屋『木のメモ帳』中の『樹の散歩道』の記事です。タイトルは「『山帰来』の名前の起源は何処に」というものです。内容は,歴史的な事実の掘り起こしも含めて微に入り細に入りといった感じで,追求心の深さが伝わってきます。噛み締めて読めば,なるほどこれは混乱状態のはずだと納得できる力作です。

あれこれの資料を総合し,今のところ,妥当な解釈だと思える見方を箇条書きにしておきましょう。

  • サンキライ(山帰来)は,本来,中国自生のケナシサルトイバラを指す。(したがって日本自生のサルトリイバラはサンキライそのものではないので,混同してはならない)
  • サルトリイバラの学名はSmilax china,ケナシサルトリイバラのそれはSmilax glabra。 
  • サンキライの根茎から得る生薬「土伏苓(ドブクリョウ)」「山帰来(サンキライ)」と呼び,江戸期に梅毒治療薬として中国から輸入されていた。
  • 我が国では,サンキライの代用植物としてサルトリイバラから生薬「菝葜(バッカツ)」を作った。しかし,効能は期待されたほどではなかった。
  • 山帰来の語源は,「山奥に捨てられた梅毒患者が,空腹を満たすためにサルトリイバラの根茎を掘り起こしてかじった。すると,病気が治り,元気に山から帰って来た」という説にもとづいているらしい。

わたしには,小さなときに毎年春になると山にサルトリイバラの葉を採集に行った思い出があります。柏餅を作る際,カシワの代用としてこの葉を使うためです。表面がつるつるしていて餅を包むのにピッタリでした。母の手でお餅が作られていく風景がくっきりよみがえって来ます。

山帰来ということばに出合い,わたしもまた語源のことがとても気になりかけました。なんと貴重な出合い! それで金沢で出合ったこのお皿は,金沢での出合い,思い出としていつまでもたいせつに使おうと思います。「Yさん,ありがとうございました」。