オドリコソウの花は白,あるいはすこし赤みかかった白をしています。それで,黒いからだのハチが訪れると,後を追いかけるのは容易です。姿と羽音を合わせて追っていけばよいのですから。
コマルハナバチもまた,オドリコソウが歓迎する昆虫の一つ。花の中に頭をぐっと入れて蜜を吸うものですから,吸蜜の瞬間を観察することはできません。そのときの姿勢から想像するとか,わずかな隙間から見るといった手しかありません。
“わずかな隙間” から覗く頭部,からだのラインは,この昆虫の食欲の大きさを教えてくれているようです。脚の爪や棘が,からだを固定するのに威力を発揮しています。りっぱな構造を備えていることに驚嘆します。
夢中になって吸蜜行動を繰り返すのですが,撮影者・観察者が不用意に近づくともうダメです。気づいて,パッと飛び去ります。性質は意外と臆病なのかもしれません。気づかれない限り,群落の中を適当に動き回ります。慎重に付き合えば,すてきな被写体になってくれます。