神様ありがとう

　彼は結婚以来
ほとんど毎日「帰るコール」を入れてくれる。
そのコールを聞いて
私は夕食のテーブルの最後の段取りにかかる。


　ご飯は炊き立てを
味噌汁も作り立てを、
その思いが
新婚当時の彼に「帰るコール」を強要した。

そして今ではすっかり彼の習慣となっている。


　その日、
いつもなら電話が鳴ってから、ほぼ30分で帰ってくる夫が
50分経過しても帰ってこなかった。

どうしたんだろう？
何かあったのかしら？
どこかへ寄り道をしているのだろうか・・・・・

と、心配している矢先、電話が鳴った。


「もしもし・・・
　ごめんなさい、警察に捕まりました・・・・・」



エエッ～～～～～～！！！！！




い、いったい何をしたんだ？！


一瞬、頭が真っ白になる。


心臓がどきどき、どきどき、
口から飛び出しそう、とはこのことだ。
何かが、壊れそうになる。




「一旦停止、無視・・・・・です」






な～～～～～～んだ
よかった。



　あ、いやいや、よくない、よくない。
交通ルールを守らないなんて
ちゃんとした大人のすることではありません。


…とはいうものの
やっぱりその程度でよかった、と思わざるを得ない。



世間様に顔向けできぬような悪事を働いたのではなくて良かった。
人様を巻き込んだ交通事故でなくて良かった。
彼が再生不能になる事故でなくて良かった。

ほ～～～んと、
よかった、
良かった。

神様、ありがとうございます。


・・・・・と
心底、感謝である。


　


　ま、夫が調書を取られている間は
他の方が捕まることはなかっただろうから
花見時の
気ぜわしい時期に
他の人が
いやな思いをせずにすんで一種の社会奉仕でもある、かな？


　

　「帰りが遅くて心配しているといけないから、電話した」

そう付け加える彼に

「一旦停止無視で、警察に捕まってます」
と、最初から言ってくださいね！！
と、
教育的指導をしておいた。