虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

袁世凱と孫文

2007-12-16 | 読書
新刊書屋さんには、ほんとに中国革命の本はない。昔、あれほど毛沢東、中国革命がもてはやされたのは何だったのだろう。

といっても、わたしは、今までまったく近現代中国に関心がなかったから、当時、どんな本が出たのかも、毛沢東も周恩来も文革も何の知識もない。
自分が興味のないことはほんとに一般常識みたいな知識もない。野球やサッカーはまったく興味がなく(息子は今も熱中してるのに)、徹底して知らないのと同じ。

昔、中国革命について書いた学者は、今、何をしているのだろうか。研究内容が変わったのか、あるいは、ただ年をとり、引退してしまっただけなのか。

図書館で、横山宏章「袁世凱と孫文」(現代アジアの肖像、岩波書店)という本を借りた。1996年の出版だから、まあそんなに古くはないだろう。
この本では驚くべきことに、袁世凱を評価し、孫文を貶めているようにも読める。
この本を読むと、孫文って、エリート主義で独裁者で、民衆を信頼できなかった男で、袁世凱と人物としては大差ない、くらいに思わせる。へー、今の学界の中国革命観はこんなのかいな、と思った。そんな時代になったのか。

この叢書の次の巻が野村浩一「蒋介石と毛沢東」。蒋介石に大半のページを費やしている。毛沢東についてはわずか。野村浩一は近代中国史の泰斗(今朝の朝日の書評にこう書いてあった)らしいが、この本の巻末にこう書いてある。

「私はかつて、ある程度、同時期を扱った書物を公刊している(人民中国の誕生)。本書とは当然ねらいを異にしているが、その後の研究一般の進展、またわたし自身の研究の中で、若干の事実上の誤りに気づき、あるいは見方を改めた点もいくつかある。とくに読者にお断りしておきたい」と。
しかし、いったい、どこが事実とちがい、どこを改めたのかの説明はない。そこを説明しろよ。

ロシアが崩壊し、社会主義は終った、などといわれて久しいが、かつてのロシア革命について論じた学者は姿を消し、毛沢東を書いた学者も今どうしてるのかしらない。貧困が大きな問題となっている今日、本来なら今こそ、マルクス経済学者の意見がほしいところだけど、マルクス学者が今、いるのかどうかもわからない。マル経学者からの声はとんと聞かぬ。はやらないから、やる人もいないのだろう。
学者とは何者なんだ。

はじめに出した「袁世凱と孫文」の著者横山宏章は、はじめは大臣を志して新聞記者になり、それが無理とわかって、学者に転向したらしい。たしかに、大学教授は、「末は博士か大臣か」ではないが、立身出世の道なのかもしれない。しかし、こういう人に、革命家の、あるいは庶民のパッションがわかるのだろうか。

中国史をかじりはじめたばかりの素人だけど、専門家の本もそのまま受け止めてはあぶないなあ、と思っている。しかし、今は専門家が幅をきかせる時代。大学教授の本ばかりだ。マスコミもそうだけど、大学教授が今日ほど政府財界に尽くしている時代はないかもしれない。わたしの誤読なのかもしれないが、横山宏章の「袁世凱と孫文」。袁世凱が宋教仁を暗殺したのは勇断だった、と書くのは納得できない。



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