らんかみち

童話から老話まで

慰安旅行という悲劇

2008年04月03日 | エンタメ
きのうのづづき
 
 今から十数年まえに勤めていた会社は大阪に本社を構え、全国主要都市に営業所を置いていました。本社は大阪市内の営業を主としていたんですが、ぼくの所属するのは特殊な部署で、北陸、中部地方から四国を含む関西一円の営業を、数人のスタッフでこなしておりました。
 
 ですから年に一度の慰安旅行が関西方面だと、我々のチームの誰かが受け持つ県に行くという最悪の状況が発生するし、実際ほとんどが関西方面でした。
 お鉢が回ってきた営業マンは、仕事なのか慰安旅行なのか分からないどころか、出張に絡めて行く羽目に陥ることもあり、自分の営業車で同僚が飲み歌う観光バスの後ろを追うという悲惨な事態も発生するのです。
 
 我々のチームにとって慰安旅行が近づくと、誰もが、楽しいような暗いような、独特の気分を味わうことになります。
「去年は慰安旅行は伊勢やったから、今年は若狭方面かな? あんたのテリトリーや! ワッハッハ~」
「そんな嫌がらせ言うんなら俺、今年の旅行は遠慮しとくわ!」
 などと営業マン同士、自分以外の誰かが貧乏くじを引いてくれるよう祈ったものです。
 
 しかしいくら努力しようにも、旅行先は上層部の決めることなので、ただ座して判決が下るのを待つしかありません。
 そしてついに運命の日がやってきました。ぼくのテリトリーである、和歌山県は白浜温泉、と慰安旅行先が決まったのです。

まだつづく