らんかみち

童話から老話まで

キムチの菌はどこから来るの?

2007年11月12日 | 酒、食
 先日作り過ぎて往生しているキムチは、冷蔵庫で何の兆しも見せる様子がありません。それもそのはず、低温で乳酸菌が増殖できないのでしょう。ヨーグルトで40℃くらいは必要だったと思うから、せめて20℃くらいにはしてやらないといけないのかも知れません。

 それで思い出すのは場末の飲み屋の漬物です。マスター手造りの漬物レシピとは、まず大根や大根葉を刻んで塩をふり……というかそれだけです。
「なあマスター、これいつの塩もみやのん?」
 ぼくは聞きました。
「さぁ~、10日くらい前、いやもっとになるかな」
「それからず~っとここに、この状態で置いてたん? 大丈夫かいなぁ」
「発酵が進んで今がちょうど食べごろやがな、サービスするから食べてみぃ」

 日本酒を造るのに酵母菌は重要で、「農林○号」といった名前で市販されているらしいですが、一部の人気酒蔵では自家酵母、つまり長年その蔵に住み着いている独自の酵母菌を使うらしく、それが味の決め手となるので門外不出なんだそうです。

「発酵が進んでるって、その菌はどこからやって来たの?」
「さぁ~、オレは菌の番してるんやないしぃ」
「するとこの店に住み着いてる菌とか、おしゃべりな爺さんたちが飛ばしたツバに……」
「ごちゃごちゃ言わんと食べてみぃな、ほれ」
「えぇて、遠慮しとくわぁ」
「いけるって、大丈夫やってぇ」

 不思議なのは、マスター謹製の漬物を食べても、お腹をこわす人がいないということです。たぶんあの漬物は発酵と腐敗の中間辺りの微妙なバランスを保っていたのではないかと思うんですが、さてキムチはどうやって発酵させるんでしょうか。まさかマスター式の自家発酵ではなく、納豆を発酵させるための藁みたいなものが存在するんでしょうかね。ぼくのキムチを温める度胸はありませんので、キムチチゲにして消費したいと思います。