料芸クラブに顔を出すと、雨降りということで皆さん室内で釉薬かけをなさっていて驚きました。ぼくは、だれにいつ素焼きするとも声をかけてもらっていなかったのです。
クラブには班という名の派閥が三つありそれぞれに窯を焚くんですが、ぼくはどの派閥にも属しておりません。一匹狼といえば聞こえはいいんですが、「アディオス・ハミーゴ」と言われて以来、疎外されて今に至っているんです。
一人で窯を一杯にするだけの作品を作り一人で釉薬を準備し、一人で窯を焚くってのがどんだけしんどいことか。でも大物を二つ三つ電動ろくろで挽けば窯はすぐ一杯になるし、釉薬は種類を少なくしたら済むことです。
「君ぃ、ハミ子にされておるのかね」
皆さんが帰ってしまうと、クラブのアンカーマン、要油彩先生がやって来られてぼくにおっしゃいます。
「仲間に入れてくれと頭を下げたら、拒む者はおるまいて」
いやそりゃね、拒まれることも無かろうけど、ぼくが入ると形と量で他の方に迷惑がかかるんです。それだけでなく、各派閥の精神的調和が乱れる恐れがあって一歩引かざるを得ない、つまり仲良しグループにかすがいでなく、くさびが入ってしまう危険があるんです。
「君のろくろは所詮遊びじゃ、もう三年は苦労したまえ」
はぁ? 要釉斎先生の女体像は遊びじゃないんですかい!
「ワシはあと三年生きるのは無理じゃ、君の成長を見届けることはかなわんかのぅ、フォッフォッフォッフォ」
本日の先生は補聴器をお忘れになられ、言いたいことだけをおっしゃって帰って行かれました。
最後はぼくですが、陶芸クラブの部屋の鍵を返しに行ったら、大正琴のクラブが集まっておられ、「兄ちゃんも大正琴やらんかぇ、面白いよぉ」と、危うく引っ張り込まれそうになりましたが、大正琴の楽譜を見てびっくり。
「こんなの読めませんよ、無理無理、絶対に無理です」
もしぼくに絶対音感があれば、楽譜がどうであろうと関係ないんでしょうが、大正琴の楽譜で音楽を想像することは難しいです。いやそんなことより、一瞬でも心を奪われたことが問題なのです。もしも彼女たちの平均年齢がぼくの歳にプラス20年でなかったなら、あるいは……。
クラブには班という名の派閥が三つありそれぞれに窯を焚くんですが、ぼくはどの派閥にも属しておりません。一匹狼といえば聞こえはいいんですが、「アディオス・ハミーゴ」と言われて以来、疎外されて今に至っているんです。
一人で窯を一杯にするだけの作品を作り一人で釉薬を準備し、一人で窯を焚くってのがどんだけしんどいことか。でも大物を二つ三つ電動ろくろで挽けば窯はすぐ一杯になるし、釉薬は種類を少なくしたら済むことです。
「君ぃ、ハミ子にされておるのかね」
皆さんが帰ってしまうと、クラブのアンカーマン、要油彩先生がやって来られてぼくにおっしゃいます。
「仲間に入れてくれと頭を下げたら、拒む者はおるまいて」
いやそりゃね、拒まれることも無かろうけど、ぼくが入ると形と量で他の方に迷惑がかかるんです。それだけでなく、各派閥の精神的調和が乱れる恐れがあって一歩引かざるを得ない、つまり仲良しグループにかすがいでなく、くさびが入ってしまう危険があるんです。
「君のろくろは所詮遊びじゃ、もう三年は苦労したまえ」
はぁ? 要釉斎先生の女体像は遊びじゃないんですかい!
「ワシはあと三年生きるのは無理じゃ、君の成長を見届けることはかなわんかのぅ、フォッフォッフォッフォ」
本日の先生は補聴器をお忘れになられ、言いたいことだけをおっしゃって帰って行かれました。
最後はぼくですが、陶芸クラブの部屋の鍵を返しに行ったら、大正琴のクラブが集まっておられ、「兄ちゃんも大正琴やらんかぇ、面白いよぉ」と、危うく引っ張り込まれそうになりましたが、大正琴の楽譜を見てびっくり。
「こんなの読めませんよ、無理無理、絶対に無理です」
もしぼくに絶対音感があれば、楽譜がどうであろうと関係ないんでしょうが、大正琴の楽譜で音楽を想像することは難しいです。いやそんなことより、一瞬でも心を奪われたことが問題なのです。もしも彼女たちの平均年齢がぼくの歳にプラス20年でなかったなら、あるいは……。