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■「Born in HOKKAIDO 大地に実る、人とアート」の全体について (1月24日で終了)

2008年01月31日 23時59分26秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
承前)

 現代美術の端聡さんや鈴木涼子さん、絵画の福井路可さんといった面々は、この展覧会で新境地をひらいたというよりは、いつもの高水準の作品なので、とりたててここでは述べないことにします。

 さて。
 この展覧会全体のこと。
 開催されたこと自体は歓迎したいと思いますが、これまでの10年余りの間、道立近代美術館が「道内美術の現在」をフォローする作業をしてこなかったことに対しては厳しい評価を下さざるを得ません。

 同館は以前、「北海道-今日の美術」と題して、道内在住・出身の美術家数人をとりあげた展覧会を隔年で開催し、道立の他の美術館にも巡回させていました。
 それ以前は毎年「北海道現代美術展」などをひらき、審査の結果優秀作を買い上げていた時期もありました。同館が岸本裕躬さんや鵜川五郎さんの絵を所蔵しているのは、そういう事情があったのです。

 「北海道-今日の美術」は、出品者が「北海道現代具象展」を発足させるなどの副産物を生みながらも、1997年を最後に終了します。
 そのあとは、北海道の美術の現在を追いかける展覧会は、ほとんどおこなわれなくなってしまいます。
 この10年、同館が北海道関係の現役作家を個展でとりあげたのは、一原有徳、片岡球子(故人)、小川マリ(故人)、米谷雄平、安田侃、伊藤隆道…(敬称略)ぐらいしか思い浮かびません。
 とりわけ若手・中堅の評価という点で、同館にとっては「失われた10年」になってしまったことは否定できないのではないでしょうか。
 函館や帯広の美術館が毎年のように実力ある地元関聨作家の個展を企画し、札幌芸術の森美術館が意欲的な展覧会シリーズ「北の創造者たち展」を1年おきに開催してきたのとは対照的です。

 今回、美術館のグループ展としては多人数の出品をあおいだ上に、「北海道生まれ」ということ以外にはなんら共通点のない人選になってしまったのは、まさに「失われた10年」のツケがまわってきたということなのでしょう。
 
 道立近代美術館の学芸員は、この10年は展覧会を企画できなかっただけで、この間の動きもきちんと追っているのであれば、まだ救いはあるでしょう。
 もし、10年ぶりに道内の若手・中堅の展覧会をひらくことが決まって、やおら準備を始めたのだとしたら…。この期間中にデビューした若手作家にとっていちじるしく不公平になるのではないでしょうか。

 後者でないことを望んでいます。


07年11月1日(木)-2008年1月24日(木)
道立近代美術館(中央区北1西17 地図D


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