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■金渕浩之×菅原美穂子パステル画展 (2016年4月22日~5月29日、岩見沢)

2016年05月29日 11時56分47秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 パステルという画材が同じだけで、ほかにはあまり共通点のない2人による絵画展。菅原さんが20点、金渕さんが18点と、点数は多い。

 金渕さんは、2006年にさいとうギャラリー、一昨年に茶廊法邑 さ ろうほうむらで拝見しています。パステルとは思えない、超絶技巧の写実に驚嘆した記憶があります。以前、独学とお聞きし、驚きの念を深くしたものです。
 ただ、これまでの2回では、筆者はその技量にもっぱら感嘆していたところがありましたが、今回は、作品そのものの持つ精神的ななにかにふれることができたように思います。

 たとえば「正利冠川-冬-」という1点。
 マサリカップ川は、金渕さんのアトリエに近い、石狩市厚田区望来もうらいを流れる小さな川のことでしょう。
 右側にそれほど大きくない川が流れ、その右岸には木々が生えています。左側は雪原が広がり、画面奥のカラマツ林の丘にまでつながっています。空は、いかにも冬の日本海側らしい暗鬱な灰色です。これらが、ほぼモノクロームで描かれ、画面の下には「2015.4.28」と記されています。おそらく完成年月日なのでしょう。
 題材はなんの変哲もない、ごくありふれた冬景色にすぎません。しかし、ここには、厳しい冬を耐え抜いて生きる北海道の人が気持ちをより添えさせることのできる何かがあるように思います。
 川が凍結せずに流れていることから、この情景はおそらく冬の終わりに近いころでしょう。とはいえ、4月末ということもないでしょうから、作者は何日もかけて、冬のきびしさを画面に定着させようと手を動かしていたのでしょう。

 あるいは「壊れたサイロと海」。
 壊れたサイロが波打ち際に立っています。こんな場所に牧場用の設備を建設するはずもなく、なぞなのですが、厚田の海岸にこんな光景があるのでしょうか。この絵で目を引くのは、鈍く光る空と、それを反射する海面やぬれた砂浜です。右側には青い空も顔をのぞかせていて、季節のうつろいが一枚のうちに表現されています。

 「Andrew Wyeth」は、金渕さんの写実が、写真ではなく、アンドリュー・ワイエス由来であることが推察される1点。
 金渕さんには珍しく縦構図で、画面下方には草むらが、上方には老境に入った男性の肖像が描かれています。

 ほかにも「ムエン浜」「霧」など、ありきたりの風景の中に、静かな美が息づいているように感じました。


 一方、菅原さんは、苫小牧在住。女性のいる室内の情景を淡い色調で描いた絵です。 

 その画風は、はかなげで、病弱でずっと家にいる人が描いたといわれると納得してしまいそうな感じがします(実際に菅原さんがどんな方か、存じないのですが)。
 「白い花のように」「虹を纏う人」など、優しい色づかいと、人物のやや生硬な線描が、淡いひとつの世界をつくりあげているようです。


2016年4月22日(金)~5月29日(日)午前10時~午後6時(木曜のみ午後1時30分から)、水曜休み(祝日は開館)、5月6日休み
絵画ホール・松島正幸記念館(岩見沢市7西1)
一般210円、高大生150円、中学生以下無料




・JR岩見沢駅から約1.05キロ、徒歩14分

・都市間高速バス「いわみざわ号」の「市民会館前」から約610メートル、徒歩8分


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