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ウイリアム・クラーク記念碑(山内壮夫)

2010年07月28日 02時22分18秒 | 街角と道端のアート
 札幌農学校初代教頭のクラーク博士のモニュメントは、筆者が知る限り三つある。

 一つは、最も有名な、札幌・羊ケ丘展望台にある大きな立像である。 
 ただし、羊ケ丘は札幌農学校(現在の北海道大学)とはあまり関係なく、なぜこの地が選ばれたのかは、よくわからない。単に観光地だからかもしれない。

 坂坦道氏がこの像を手がける以前、クラーク像といえば一般的には、北大構内にある胸像のことを指した。田嶼碩郎たじませきろうの作であるが、戦中は金属供出のうき目にあっている。
 なにぶんにも胸像であるので、団体客が記念写真を撮るには不都合なのかもしれない。

 そして、いちばん知られていないと思われるのが、恵庭市島松にあるこの塔である。
 北海道の道路の大動脈である国道36号からちょっと旧道に入ったところにたっている。



 1877年(明治10年)4月16日、彼がわずか9カ月の在任期間を終えて札幌を去るとき、学生たちはなんとここまで見送りに来たのであった。当時のことであるから、むろん徒歩である。
 明治人の情の厚さを思う。

 この地で学生たちと別れる際に口にしたのが、かの
 「少年よ、大志を抱け(Boys,Be ambitious!)」
という名言であるとされる。

 この塔にも、しっかりと刻まれている。

 上の方に取り付けられた横向きの肖像を制作したのは、札幌ゆかりの彫刻家山内壮夫である。



 もちろん、昭和期に活躍した山内が本人を前にして制作したはずはなく、写真などを参考にしたに違いないのだが、強靱な意志を感じさせる目、ひきしまったほおなど、人物の内面や性格を表現してあまりあるように思われる。


 人はいずれ死ぬ。
 内村鑑三が言っていたとおり、人が後世に残せるのは、その人の生涯である。
 生涯を記憶し続ける人々によって、碑や像がたてられる。だから、碑や像は、単なる物体ではなくて、ある人物の記憶を引き継ぐ装置なのである。


山内壮夫(16)「飛翔」
=このエントリに、札幌市内に点在する山内壮夫の彫刻を取り上げたエントリへのリンクが貼ってあります。

(この項続く)


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