朝顔

日々の見聞からトンガったことを探して、できるだけ丸く書いてみたいと思います。

ピケティ

2015-03-15 | もろもろの事
もう、流行に遅れた話題になってしまいました。昨年12月にトマ・ピケティの「21世紀の資本」はとても分厚い(728ページ)し、5940円もするので購入は諦めて(買っても読破できそうにない)、安い経済週刊誌を買って、ざっくりと解説記事を読むことにしました。



テレビのニュース解説やバラエティ番組でもその頃は盛んに放送していたので、ふむふむと見ていました。


(引用:週刊東洋経済、2015-01-31号)

r>g
・・・長期的には資本収益率(r)は経済成長率(g)よりも大きい。

≪資本収益率が産出と所得の成長率を上回るとき、資本主義は自動的に、恣意的で持続不可能な格差を生み出す≫

というのが、彼のメッセージで、それを過去100年間にわたって経済データを根気よく収集し分析した、折れ線グラフで表現して見せています。

1年ほど前に米国ではこの本に書かれたように、資産家への富の集中がひどすぎるといって、株式取引所や証券会社が集まるNYのウォールストリートで大規模なデモが行われました。

素人的、私的に興味深いグラフをいくつか抜粋しておきます。(以下の引用:前掲)



所得上位0.1%の人が2010年に、アメリカでは総所得の8%弱を、英国では6%を獲得しています。

ドイツは4%、日本・フランス・スウェーデンでは2%となっています。アメリカと英国が突出しています。

パーセントもさることながら、アメリカ・英国では、1980年代以降にその集中ぶりが拡大しています。
日本は、そうではなくて、戦前の富裕層集中が戦争で一挙に低下し、その後は2%で変化していません。



米国では、上位1%の人が総所得(=資本所得+労働所得)の20%を占める(資本所得を含めると)、あるいは労働所得だけでも上位1%の人が総労働所得の10%を得ています(労働対価の格差が、上下でかなり大きい)。

ここに抜粋していませんが、新興国では同様に上位層と下位との格差が大きくて、例えば中国、インドで上位1%の人が総所得の10~12%を獲得しています(2010年)。



最後に、所得格差について日本と他の国との比較を引用してみます。

日本は戦後、徹底して財閥解体と農地開放が行われたので伝統的資産家はいなくなり、戦後の企業経営等で成功した「新興資本家」が富裕層になっています。そのせいで上位0.01%(でも約1万人いる計算)で年収8000万円、1%ならば1300万円です。

「富裕層所得シェア」でも上位1%のシェアは米国の半分の9.5%です。・・この程度の格差はないと勤労意欲を刺激しないだろうと感じます。

・・だれのネット記事だったか忘れたのですが、この日本では上位1%で1300万円とのことを指摘されて、若いテレビ局アナウンサーたちが「えっ」と引いていたと書いていました。庶民の味方として、バラエティやニュース取材をしているご当人が、客観的には「富裕層」だった。

ピケティさんは、”資本主義は自動的に恣意的で持続不可能な格差を生み出す”ため、その拡大を防ぐ所得の分配の方法を提案しています。

いわゆる富裕税、つまり累進資産課税です。一般に、個人が資産を蓄積する過程で所定の税を支払っているのだから、その成果に再度課税することになります。また、課税制度は国によって異なっていますし、租税回避地(タックスヘイブン)に富裕層や多国籍企業が逃げるという別の不公平も現実に起こっています。

さて、有効な解決法があるのでしょうか。
コメント (4)
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