今回は、『人間性の起源と進化』の展示の内、「農耕と牧畜」と「文明」の展示をご紹介します。
・農耕と牧畜
農耕と牧畜は、ほぼ同時に、中近東の肥沃な三日月地帯で約12,000年前に始まったと考えられています。ところが、最近は中国でこれよりも古い農耕の遺跡が発見されており、いずれ、この定説も変わるかもしれません。ただ、1996年に開館した常設展示には、まだ、最新の説は反映されていません。
群馬県立自然史博物館130.「農耕と牧畜」展示全景(*画像をクリックすると、拡大します。)
上段パネルでは、世界の主要作物である、小麦・稲・トウモロコシの実物を展示しました。中近東では、小麦を中心に栽培し、ヤギ・ヒツジ・ウシの牧畜を行いました。また、中国では稲を中心に栽培し、ブタの牧畜を行いました。さらに、中央アメリカではトウモロコシを中心に栽培し、ラマ・モルモットの牧畜を行いました。
群馬県立自然史博物館131.「農耕」展示(*画像をクリックすると、拡大します。)
パネルの下段には、家畜化の展示を行いました。ブタはイノシシを家畜化したもので、イヌはオオカミを家畜化したものです。興味深いことに、野生動物を家畜化すると、鼻面が短くなり、ストップと呼ばれるへこみができます。以下の写真の赤い矢印が、そのストップです。
これらの標本は、私が白く色を塗りました。
群馬県立自然史博物館132.「牧畜」展示(*画像をクリックすると、拡大します。)
・文明
文明展示では、世界の四大文明である、エジプト・メソポタミア・インダス・黄河文明の他に、中南米の文明をパネルで展示しました。また、標本として、実物のエジプトミイラとそのミイラを破壊することなく、CTスキャンで読み込んで作製した頭蓋骨模型を展示しています。
開館当時は、ミイラの頭部2点を展示していましたが、途中で、差し替えました。
群馬県立自然史博物館133.「文明」展示(*画像をクリックすると、拡大します。)
ここに展示しているのは、1号ミイラの頭部です。これは、性別不明で約10歳の小児であると推定されています。
このミイラの鑑定は、元聖マリアンナ医科大学の故森本岩太郎先生・現聖マリアンナ医科大学の平田和明先生と私の3人で、1998年に、「群馬県立自然史博物館所蔵のエジプトミイラ標本について」として、『群馬県立自然史博物館研究報告』第2号に発表しています。
また、このミイラの年代は、お茶の水女子大学の松浦秀治先生と近藤 恵先生と私の3人で、1998年と2000年に、「群馬県立自然史博物館所蔵エジプト産ミイラ標本の放射性炭素年代測定」として、『群馬県立自然史博物館研究報告』第2号と第4号に発表しています。この1号ミイラは、約2,500年前と推定されました。
この内容は、また、改めてご紹介することにします。
群馬県立自然史博物館134.エジプト・ミイラ (*画像をクリックすると、拡大します。)