人類学のススメ

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日本の人類学者20.西田利貞(Toshisada NISHIDA)[1941-2011]

2012年07月27日 | H5.日本の人類学者[Anthropologist of J

Toshidadanishida

西田利貞(Toshisada NISHIDA)[1941-2011][立花 隆(1991)『サル学の現在』、平凡社、p.109より改変して引用](以下、敬称略。)

 西田利貞は、1941年3月3日に、千葉県で生まれました。京都大学理学部動物学教室に入学し1963年に卒業すると、母校の大学院に進学し、1965年に修士課程・1969年に博士課程を修了し、1969年5月には「マハリ山塊における野生チンパンジーの社会構造」により、母校から理学博士号を取得しています。

 1969年12月に東京大学理学部人類学教室の助手となり、1974年10月に同講師・1981年8月に同助教授に昇任します。1988年4月には母校の京都大学理学部動物学教室教授となり、1995年4月には京都大学大学院理学研究科教授に配置替えとなりました。

 母校の京都大学理学部大学院修士課程時代の1963年から1965年にかけては、野生ニホンザルの生態学的・社会学的研究を行っていましたが、博士課程に進学した1965年からは主にアフリカの野生チンパンジーの研究を行いました。特に、タンザニアのマハレでの野生チンパンジーの観察と研究は有名です。また、その調査に伴う記録は、膨大な数の著書や論文に残されています。西田利貞の研究方法は、学問上の師である伊谷純一郎[1926-2001]と同様に、野外調査にありました。その調査は、多くの場合テレビで紹介され、写真でしか知ることがなかった一般の人々に動画で野生チンパンジーの生態を見る貴重な機会を提供しています。

 西田利貞が書いた本は膨大ですが、主なものに以下のものがあります。

  • 西田利貞(1973)『精霊の子供たち』、筑摩書房[このブログで紹介済み]
  • 西田利貞(1981)『野生チンパンジー観察記』、中央公論社[このブログで紹介済み]
  • 西田利貞(1994)『チンパンジーおもしろ観察記』、紀伊国屋書店[このブログで紹介済み]
  • 西田利貞(1999)『人間性はどこから来たか』、京都大学学術出版会[このブログで紹介済み]
  • 西田利貞(2001)『動物の”食”に学ぶ』、女子栄養大学出版会[このブログで紹介済み]

Nishida1999

西田利貞(1999)『人間性はどこから来たか』表紙(*画像をクリックすると、拡大します。)

 京都大学を2004年3月に定年退官すると、2004年4月には日本モンキーセンター所長に就任し、死去するまでその任にあたり、普及活動にも力を入れました。また、国際霊長類学会会長や日本霊長類学会会長も歴任し、学会にも大きく貢献しています。さらに、1990年にはジェーン・グドール賞を受賞し、2008年にはリーキー賞を受賞しました。リーキー賞は、ジェーン・グドールも西田利貞と同時に受賞しています。ちなみに、このリーキー賞は日本人では初めてでかつ霊長類学者としても初めての受賞でした。しかし、2011年6月7日に直腸癌で死去しました。まさしく、チンパンジー研究に捧げた一生と言えるでしょう。

 私は、西田利貞先生とは生前親交があり、著書を出版される度に寄贈していただきました。また、1996年に開館した群馬県立自然史博物館でのチンパンジーの野生行動の映像では便宜をはかっていただきました。特に、2004年2月14日に、(財)群馬県埋蔵文化財調査事業団主催の平成15年度『公開考古学講座』では、「チンパンジー学への招待:人間性の起源を探る」としてご講演いただき、西田先生を群馬県立自然史博物館にご案内させていただきました。その講演は、京都大学を定年退官される前のお忙しい時期でしたが、講演をご快諾いただき、講演会場は多くの聴衆で埋まっていたのを思い出します。ただ、私は西田先生のご逝去を知らず、知ったときにはすでに葬儀も終わっていたために参列できなかったことが悔やまれます。

*西田利貞先生の想い出の写真リンク

リンク:「Mahale Wildlife Conservation Society」の想い出の写真


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