人類学のススメ

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私の仕事・群馬県立自然史博物館26.常設展示・自然界におけるヒト26(ヒトの特徴3)

2010年07月15日 | C1.私の仕事:群馬県立自然史博物館[My

 『ヒトの特徴』の内、今回は、8.脳の発達・9.矢状稜・10.顎と歯をご紹介します。

8.脳の発達

 現代人の脳の大きさは、平均で約1,450ccあります。一方、チンパンジー・オランウータン・ゴリラ等のヒトに近い類人猿の脳の大きさは、平均で約400cc前後です。

 ヒトは、約400万年の進化の過程で、アウストラロピテクス・アファレンシスの約400ccから、ホモ・エレクトス(原人)の約1,000ccを経て、現代人の約1,450ccになるまで、約3倍に増大しました。

 ここでは、類人猿として、チンパンジー・ゴリラ・オランウータンの頭蓋骨を、また、アウストラロピテクス・アフリカヌス(猿人:Sts5)、ホモ・エルガステル(原人:KNM-ER3733)、現代人の頭蓋骨を展示しました。

 ボタンを押すと、頭蓋骨が回転し、半分透明の中に脳を見ることができます。この透明部分は業者さんに型取りして作製してもらいました。また、脳は、私が作製しました。

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群馬県立自然史博物館155.「脳の発達」展示1[ボタンを押す前]((*画像をクリックすると、拡大します。)

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群馬県立自然史博物館156.「脳の発」達展示2[ボタンを押して回転したところ](*画像をクリックすると、拡大します。)

9.矢状稜(しじょうりょう)

 この矢状稜は、特に、ゴリラやオランウータンのオスに特徴的です。頭の真ん中に、ニワトリのとさかのような骨の稜があります。これは、側頭筋が発達すると、筋肉が付着する部分を作るために形成されます。

 実は、ヒトの祖先でも、パラントロプス・エチオピクス、パラントロプス・ロブストス、パラントロプス・ボイセイには、この矢状稜があります。この3種は、すべて、アフリカで発見されていますが、歯がとても大きいことが特徴で、現生のゴリラやオランウータンに似ています。恐らく、ゴリラやオランウータンと同様に、堅い植物を食べていたと推定されています。

 この側頭筋が付着する部分は、赤く塗っていますが、これも、私が塗りました。

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群馬県立自然史博物館157.「矢状稜」展示(*画像をクリックすると、拡大します。)

10.顎と歯

 ゴリラやチンパンジーの顎(下顎骨)を見ると、U字型をしています。ところが、ヒトの系統になると、V字型あるいは放物線型をしています。

 また、類人猿では、歯隙(ディアステーマ)と呼ばれる隙間が犬歯付近にあります。これは、上顎の犬歯と下顎の犬歯が入る隙間になるわけですが、それだけ、犬歯が大きいことになります。ところが、現代人ではこの隙間がなくなります。つまり、犬歯が小さくなったということになるわけです。

 さらに、頤(おとがい)は、現代人に見られますが、類人猿やヒトの祖先にはありません。これは、顎が小さくなったためだと考えられています。つまり、軟らかい食物を摂取したことによると説明されています。

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群馬県立自然史博物館158.「顎と歯」展示(*画像をクリックすると、拡大します。)


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