◇ラター・マンダパヤ
帰国後ブログで報告したいと思うから、つい写真を撮るのに夢中になって、ガイド氏の説明は疎かになる。
だから、帰国して写真を見ると、「はて、ここはどこ?あれは何?」となってしまう。
ラター・マンダパヤも例外でなく、ガイド本と突き合わせて、やっと特定できた。
石柱と云えば、素っ気ない四角柱ばかりなのに、ここでは8本ともハスの茎をかたどってある。
彫技は見事で、見惚れるばかり。
不規則に伸びる8本の柱とすっきりした半球体のストゥーパのコントラストが心地よい。
横組みの石垣を支える石柱の先端はハスの蕾でしょう。
極めて特徴的な建造物なのに、何の建物なのか、分かっていない。
ニッサンカ・マーラ王が僧侶の読経を聴いた場所という説があるそうで、だとすれば、礼拝所ということになる。
ここも木造建造物を石柱の上にイメージした方がいいのだが、そうした想像力を旅行者に求めることが、そもそも無理な注文というべきか。
◇トゥパーラーマ
クワドラングルの南の入口から入ると左にある仏堂。
全部レンガ造りで、木造部分がないから、屋根を含め、大半が残っている。
そういえば、屋根がある遺蹟は初めてか。
丁度、外壁が修理中だったが、レンガと漆喰のレリーフは見ごたえがある。
ヒンズーの影響があるのだそうだ。
堂内に入る。
突然の暗さに目が対応できない。
レンガと漆喰造りのブッダ立像があるはずなのに、判らないまま、時間に追われて外に出てしまった。
駐車場はワタダーゲ前の出入り口近くなので、元へ戻る。
出口から出るのかと思って後をついていったら、ガイド氏は左の空き地に入り込む。
「あれがサトゥマハル・プラサーダです」。
焼け焦げたような、先細りの塔が隅っこに立っている。
◇サトゥマハル・プラサーダ
ポロンナルワが上座部仏教の聖都だった頃には、タイやビルマから僧侶が頻繁に訪れていた。
この7層の建物は、タイの寺院に酷似していて、タイ人の手になるものと見られている。
7階ではなく、7層としたのは、建物の中に空間がないから。
仏像を安置するだけの仏堂だったのではないか、いや守衛所だったのだろう、と見解が定まっていないという。
◇ガルポタ(石の本)
石に刻文した石碑はスリランカではよく見かけるが、このstone bookは、一際大きい。
長さ8m、幅1・5m、厚さ45㎝。
大きすぎて立てると上の方が読めないから横たえてある。
内容は、ニッサンカ・マーラ王の偉業。
自ら命じて、自らを褒めたたえる。
鼻持ちならない王様だが、浮彫りの象がめっちゃ可愛いから、ま、いいとするか。
これで、クワドラングルは終わり。
国宝級の仏教遺跡をぎっしり詰め込んだ「重箱」のような場所だった。
◇ランカティラカ寺院
「寺院とは、こういうもの」と誰もがイメージを持っていると思う。
それがどんなイメージだろうと、ランカティラカを見たら、そのイメージはぶっ飛んでしまうだろう。
日本人のイメージは「古い木造建築」だろうから、まずレンガ造りでOUT。
高さ17.5mなのに、横幅がないからやたら高く感じて、寺というよりは、尖塔の感じが強い。
正面に立つレンガ造りの巨大なブッダ立像を見て、仏教寺院だと初めて納得する人が多い、のではないだろうか。
巨大な仏像だから「大仏」だろう。
「えっこれが大仏さん!?」
日本人はびっくりするが、所変われば品変わる。
ここは、スリランカ。
郷に従わなければ・・・
大仏に近づく。
首はない。
欠けた右手の先と足首に近い衣の裾には、赤いレンガがもろ見えで、この像はレンガを積み、漆喰で仕上げるスタッコ造りであることが分かる。
レンガに漆喰の化粧仕上げは石彫より簡単だから、スタッコ建築やスタッコ像はスリランカでは多数見かけるが、ひび割れしやすく、崩壊のスピードも速い。
巨大ブッダ像の足元では、修理用の素材レンガを製造していた。
狭い堂内をぐるっと見渡すと目に入ってくるのが、階段。
これが、すごい。
奥行10㎝、高さ30㎝の急階段。
普通に階段を上ろうとしても上れない。
階段に背を向けた姿勢でしか上れないのです。
つまり、ブッダに相対して、顔を向けたまま上ることになります。
なぜ、こんな階段を作ったのか。
ブッダに対するレスペクトの念が、そうさせたのでした。
「ブッダに背中とかお尻を向けないで上るにはどうするか」、その答えがこの階段でした。
スリランカ旅行にあたり、「仏像をバックに記念写真を撮ってはいけない。仏像に背を向けることになるから」と注意されました。
同じ戒律がここではより厳しく生きていたことになります。
ランカティラカ寺院の外壁のレリーフも魅力的。
壁一面に建物や人物が彫られている。
上は、宮殿。
このブログのポロンナルワ(b宮殿跡)で取り上げた7階建ての宮殿の原型。
レンガの3階まで残ってその上の木造部分は崩れてなくなったと紹介したが、この宮殿は全部レンガ造りのように見える。
もしかすると、違うのかもしれない。
これは、伸びやかな女性像。
清純かと思えば、妖艶。
性的なものに抑制的な仏教寺院らしくない。
ヒンズー教の影響が見え始めているようだ。
◇キリ・ヴィハーラ
キリとは、シンハラ語でミルクの意。
母乳の出がよくなるようにとお参りする「母乳の寺」だとはガイド氏の話。
仏塔の白をミルクに見立て、それを母乳に関連付けて祈る、民間信仰はスリランカでも日本でも、そのこじつけ方が似ています。
700年以上も放置されながら、この純白を保ち続けてきたというから、こっちの方が驚き。
「若さを保つ」霊験のある寺として売り出してみてはどうだろうか。