石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

118スリランカの仏教遺跡巡り(3)ポロンナルワ(dクワドラングルの続き、他)

2016-01-28 07:23:28 | 遺跡巡り

◇ラター・マンダパヤ

帰国後ブログで報告したいと思うから、つい写真を撮るのに夢中になって、ガイド氏の説明は疎かになる。

だから、帰国して写真を見ると、「はて、ここはどこ?あれは何?」となってしまう。

ラター・マンダパヤも例外でなく、ガイド本と突き合わせて、やっと特定できた。

石柱と云えば、素っ気ない四角柱ばかりなのに、ここでは8本ともハスの茎をかたどってある。

彫技は見事で、見惚れるばかり。

不規則に伸びる8本の柱とすっきりした半球体のストゥーパのコントラストが心地よい。

横組みの石垣を支える石柱の先端はハスの蕾でしょう。

極めて特徴的な建造物なのに、何の建物なのか、分かっていない。

ニッサンカ・マーラ王が僧侶の読経を聴いた場所という説があるそうで、だとすれば、礼拝所ということになる。

ここも木造建造物を石柱の上にイメージした方がいいのだが、そうした想像力を旅行者に求めることが、そもそも無理な注文というべきか。

◇トゥパーラーマ

クワドラングルの南の入口から入ると左にある仏堂。

全部レンガ造りで、木造部分がないから、屋根を含め、大半が残っている。

そういえば、屋根がある遺蹟は初めてか。

丁度、外壁が修理中だったが、レンガと漆喰のレリーフは見ごたえがある。

ヒンズーの影響があるのだそうだ。

堂内に入る。

突然の暗さに目が対応できない。

レンガと漆喰造りのブッダ立像があるはずなのに、判らないまま、時間に追われて外に出てしまった。

駐車場はワタダーゲ前の出入り口近くなので、元へ戻る。

出口から出るのかと思って後をついていったら、ガイド氏は左の空き地に入り込む。

「あれがサトゥマハル・プラサーダです」。

焼け焦げたような、先細りの塔が隅っこに立っている。

◇サトゥマハル・プラサーダ

ポロンナルワが上座部仏教の聖都だった頃には、タイやビルマから僧侶が頻繁に訪れていた。

この7層の建物は、タイの寺院に酷似していて、タイ人の手になるものと見られている。

7階ではなく、7層としたのは、建物の中に空間がないから。

仏像を安置するだけの仏堂だったのではないか、いや守衛所だったのだろう、と見解が定まっていないという。

◇ガルポタ(石の本)

石に刻文した石碑はスリランカではよく見かけるが、このstone bookは、一際大きい。

長さ8m、幅1・5m、厚さ45㎝。

大きすぎて立てると上の方が読めないから横たえてある。

内容は、ニッサンカ・マーラ王の偉業。

自ら命じて、自らを褒めたたえる。

鼻持ちならない王様だが、浮彫りの象がめっちゃ可愛いから、ま、いいとするか。

 これで、クワドラングルは終わり。

国宝級の仏教遺跡をぎっしり詰め込んだ「重箱」のような場所だった。

◇ランカティラカ寺院

「寺院とは、こういうもの」と誰もがイメージを持っていると思う。

それがどんなイメージだろうと、ランカティラカを見たら、そのイメージはぶっ飛んでしまうだろう。

日本人のイメージは「古い木造建築」だろうから、まずレンガ造りでOUT。

高さ17.5mなのに、横幅がないからやたら高く感じて、寺というよりは、尖塔の感じが強い。

正面に立つレンガ造りの巨大なブッダ立像を見て、仏教寺院だと初めて納得する人が多い、のではないだろうか。

巨大な仏像だから「大仏」だろう。

「えっこれが大仏さん!?」

日本人はびっくりするが、所変われば品変わる。

ここは、スリランカ。

郷に従わなければ・・・

 

大仏に近づく。

首はない。

欠けた右手の先と足首に近い衣の裾には、赤いレンガがもろ見えで、この像はレンガを積み、漆喰で仕上げるスタッコ造りであることが分かる。

レンガに漆喰の化粧仕上げは石彫より簡単だから、スタッコ建築やスタッコ像はスリランカでは多数見かけるが、ひび割れしやすく、崩壊のスピードも速い。

巨大ブッダ像の足元では、修理用の素材レンガを製造していた。

狭い堂内をぐるっと見渡すと目に入ってくるのが、階段。

これが、すごい。

奥行10㎝、高さ30㎝の急階段。

普通に階段を上ろうとしても上れない。

階段に背を向けた姿勢でしか上れないのです。

つまり、ブッダに相対して、顔を向けたまま上ることになります。

なぜ、こんな階段を作ったのか。

ブッダに対するレスペクトの念が、そうさせたのでした。

「ブッダに背中とかお尻を向けないで上るにはどうするか」、その答えがこの階段でした。

スリランカ旅行にあたり、「仏像をバックに記念写真を撮ってはいけない。仏像に背を向けることになるから」と注意されました。

同じ戒律がここではより厳しく生きていたことになります。

 

ランカティラカ寺院の外壁のレリーフも魅力的。

壁一面に建物や人物が彫られている。

 上は、宮殿。

このブログのポロンナルワ(b宮殿跡)で取り上げた7階建ての宮殿の原型。

レンガの3階まで残ってその上の木造部分は崩れてなくなったと紹介したが、この宮殿は全部レンガ造りのように見える。

もしかすると、違うのかもしれない。

これは、伸びやかな女性像。

清純かと思えば、妖艶。

性的なものに抑制的な仏教寺院らしくない。

ヒンズー教の影響が見え始めているようだ。

 ◇キリ・ヴィハーラ

キリとは、シンハラ語でミルクの意。

母乳の出がよくなるようにとお参りする「母乳の寺」だとはガイド氏の話。

仏塔の白をミルクに見立て、それを母乳に関連付けて祈る、民間信仰はスリランカでも日本でも、そのこじつけ方が似ています。

700年以上も放置されながら、この純白を保ち続けてきたというから、こっちの方が驚き。

「若さを保つ」霊験のある寺として売り出してみてはどうだろうか。