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福聚講

平成20年6月に発起した福聚講のご案内を掲載します。

秩父三十四所観音霊験圓通傳 秩父沙門圓宗編・・2/34

2023-10-02 | 諸経

 

第二番 ををだな 大棚山眞福寺 御堂五間、四面南向。本尊聖観音、立像一尺五寸一分。行基菩薩御作。

當寺本尊聖観音の来由を尋ぬるに、當寺の開基大棚禅師は知行兼そなへたる人にてはをはせども、光を韜て徳を隠し、凛々たる清風、峩々たる直節、糧を絶、穀を辟け、法服未嘗て暫くも體を去らず。然れども亦来て禪を問ふ者あれば、縁に従て度し給へり。此地や世俗の紅塵にへだつと雖も、参學の徒絡繹として西来の祖道大に振ふ。里人師の高徳を仰で大棚の和訓を用て、其地を大棚と改む。禅師齢かたむき給へば、彌閑散の境を好て、あたり近き鬼丸と云岩窟に入て、跡を埋み、萬縁を掃除し、朝来一片の霞を呑ならで夕だに湿薪の煙だもなし。然るに一人の老婆日夜来て、師の洞中に安置し給ふ観音の像を拝し、花を捧げ菓を供養し、師を拝して去る事屡なり。一日禅師老婆に向て、汝は何處より来て此尊を恭禮するや。老婆答云く、吾は是夜行の鬼なり、此あたりに年經て住す。師の徳を仰ぎ本尊に結縁して鬼畜の身を脱せんと欲す。師慈愍をたれて吾を度し給へと云。禅師あはれみて破地獄の文(大方廣佛華嚴經夜摩宮中偈讃品第二十「若人欲了知・三世一切仏・応観法界性・一切唯心造」。三世一切佛を了知せんと欲するならば、法界性をよく観察せよ、すなわち一切は心が作りだしたものである)を授け、三皈戒をさずく。鬼女歓喜踊躍して曰く、吾は往昔此里の農家の妻なりしが、嫉妬の心甚しく慳貪にして三寶に皈依する事なき悪報に依て、鬼道に堕して出離の期あるべくもなかりしに、師の教示に依て佛に値偶し、法を貴むことを知る。定を知る鬼畜の身を離れん事を、猶々吾を哀愍し給ひ、往還近き境に出て、本尊を普く衆生に結縁せしめ給はば、吾と衆生と等く菩提を成ぜんと。師點頭して、汝が望く處理に叶へり、吾再び大棚の地に皈て、本尊を安置すべしと。鬼女悦で其たずさへたる竹杖を師に呈して、此は是人間の物にあらず、是を以て今日の布施とすと。言をはなって老女はかきけして松吹風空行雲の跡かたもなし。禅師倍彼が得脱を本尊に祈り、後年一宇の堂を建て、永く観音の霊跡とし給ふ。件の竹筇は今に當寺に珍として寶蔵に之有り。されば正法念經十六の三に曰く、女人多くは鬼道に生る、何を以の故にしかるや、女人の性嫉妬多し。此故に鬼道に生すと。以上取意。(正法念處經卷第十六・餓鬼品第四之一「女人多生餓鬼道中。何以故。女人之性。心多妬嫉。丈夫未隨。便起妬意。以是

因縁。女人多生餓鬼道中」)。嫉妬の悪報必ず鬼畜に生ずるの證、佛説何の疑ひかあらん。慎で妬を発することなかれ。

詠歌に曰く「廻りきて 頼をかけし大棚の誓も深き 谷川の水」

當寺の詠歌は、彼の夜行の鬼女彼方此方と佛縁を求めんが為に、廻りめぐりて此處に来り、本尊の誓力深きに依て、頓に鬼畜の身を解脱せし意を演て、菩薩の深恩を渓河の水底なきに譬へたるなるべし。本師如来の智願海、深廣にして涯なきの意、補處の菩薩弘誓深如海の心にも通ずべきなれば、少く其の意を註するのみ。

 

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