ラフカデオハーン「神国日本」には、日本の家庭が神々のいます神聖な場所であった、ということが書かれていますが、集落もまた神々と仏のおられる神聖な空間でした。「民族と儀礼」宮家準の引用です。いまでも都市化を免れた集落はここに書かれているように神仏のおられる神聖な場所であるという姿をとどめているところはおおくあります。四国遍路で歩いてみるとまさにここに書かれているような神仏に守られた多くの集落の姿が現れてきます。
「民族と儀礼」宮家準
「・・サトの空間、サトの空間は山麓や浜辺あるいは平地に展開する屋敷、氏神、檀那寺、墓、祠堂、などからなる居住空間である。・・サトの空間の中心をなすものは氏神である。氏神は一般にはサト空間の中央山の手の川や池などの傍らにこうけられている。また地域によっては氏神に近接して檀那寺が設けられている。・・まず氏神は古代初期に氏上が自己の先祖や先祖の勧奨した神を守護神として祭祀しているものである。氏神は産土、鎮守とも併称されている。是は共同体の神社が氏神、産土、鎮守の三つの性格をもつことを意味している。氏神は氏上の支配する領域を守るとされている。一方産土神は共同体の人々がそこから生まれたとする地縁の神であり、鎮守はその神の機能がその地域を鎮め守ることを示している。なお一般的には死後33回忌の弔りあげをおえた祖霊は個性を失って神となり、氏神に吸収されると信じられている。これらから考えると氏神は共同体の政治的な首長の祭祀を受けてその地域を守護する神で、その地域の人々は氏神によって生をあたえられるとともに死後はその神に同化してゆくとしんじられている。氏神の近くには檀那寺がある。寺のそばには檀家の墓地が同族ごとにまとめて設けられている。・・村堺には道祖神、山の神、庚申などの石碑、地蔵・馬頭観音などの石像、愛宕・秋葉・大神宮・金毘羅などの常夜灯、講の記念碑などがつくられている。・サトの前の水田や畑がある耕作空間がノである。ここには農業生産の守護のために氏神を勧請した野宮がまつられている。漁村では沿岸の島がノにあたり、そこには竜神などが祭られている。・・」
こうした少し前の日本の集落の標準的有様の記述を見るにつけても、いまはわずか百年の間にいかに日本人が後戻りできない絶望的な距離まで来たかを思い知らされ暗然たる気持ちにさせられます。せめて、自分の住む町なかの神社と寺を一体として拝む風習だけでも再興したいものです。
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