英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2017大阪国際女子マラソン

2017-01-31 20:27:30 | スポーツ
…………以前から思っていたが、≪日本陸連て、頭良くないんじゃないの?≫


新たに加えられた日本陸連「東京五輪メダル獲得へ」強化方針
★後半にペースアップできる選手の育成
★判断力と勝負強さの強化

 これについて高橋尚子氏が補足した
「今の世界大会は、後半のハーフに(ペースが)上がることが多い。
 やはり、ペースメーカーをひとつの目安と考えて、自分で考えてレースをコントロールする力をつけてほしい。
 それが世界で戦える選手に繋がる」

 確かに、後半ペースアップし、そこを抜け出した選手が栄冠に輝いており、日本選手はそのペースアップにほとんどついていけずにズルズル後退している状況が続いている。それを踏まえての陸連の方針なのであろう。
 しかし、ペースメーカーのいない五輪のレースでは、例えスローペースであっても、ペースの上げ下げが多く、誰が飛び出したか?すぐについて行くべきなのか?など精神的に消耗したり、大集団の中での給水やその位置取りにも神経や体力を要してしまう。
 ペースメーカーに、ただついて行って、体力も精神力を消耗せずレースの半分をやり過ごせる国内のレースとは雲泥の差がある。その意味で、高橋氏の述べた「自分で考えてレースをコントロールする力」は必要だ。そして、それなら、ペースメーカーを付けずにレースを行う方が「世界で戦える」選手を育てられるはずだ。
 そして、今回の方針で一番問題と感じたのが、「後半のペースアップ」を評価するのなら、同じ2時間25分で走った場合、レース序盤は自重して後から追い上げた方が評価が高いということになること。
 しかし、前半ハイペースの走りの方が好タイムを出すのが困難で、後半に追い上げる走りの方が結果を出しやすい。つまり、2時間25分の同タイムなら、前半型の方が難易度が高いのである。
 結果に拘るなら、後半型のレースを組み立てた方が良い。しかし、それが通じるのは、実力者の少ない国内レースだけ。世界大会の場合、実力者が多く参加しているので、ハイペースでレースが進んだとしても、レース終盤まで走りを維持できる選手が少なくとも5、6人はいるであろう。自重して、バテてくる選手を捉まえるなどと悠長なことをしていては、メダルには絶対届かない。
 もちろん、最初からハイペースで突っ込むべきだとは言わないが、今回の指針で、レース前半を自重して、追い上げる走り方をした方が得になるのは間違いない。後半型がレースに於いて“有利”になる」と言うのではなく、「後半型が“得”になる」というのが、問題なのである。

 毎回、不合理で不可解な代表選手の選考基準を設けて選考で揉めているが、今回の指針も短絡的思考としか言えない。
 ちなみに、2017ロンドン世界選手権(世界陸上)の代表内定条件は
・2時間22分30秒以内
・日本人1位



 さて、今回、レース解説者は一応、豪華メンバーだ。増田明美氏、有森裕子氏、高橋尚子氏、千葉真子氏、野口みずき氏。
 その解説者が推す有力選手は

伊藤舞選手(増田氏推薦)
 「リオ五輪の前に故障し、46位(2時間37分27秒)に終わってしまった悔しさを晴らしてほしい」とのこと。13回目で初優勝を目指している。
 彼女は、「世界選手権で日本人最上位の入賞(8位以内)」という甘い選考基準で、五輪代表内定した選手(世界陸上は7位、2時間29分48秒)。過去の成績を見ると、それなりのタイムは出しているが、日本で3位以上に位置する選手とは言えず、五輪選考基準の矛盾を感じさせる要因となってしまった。
 彼女がズルをしたのではなく、そのことで叩かれるのは気の毒だと思うが、テレビで「リオ五輪代表」と紹介されるのを見ると、モヤモヤした感情が湧いてしまう。
 彼女の走り方は、手の横振りが大きく、とくに左手はエルボーをかますような動きになるのが、見ていて気になって仕方がない。上体の横揺れも大きい。
 ベストタイム、2時間24分42秒 2015名古屋ウィメンズマラソン

竹中理沙選手(高橋氏推薦)
「笑顔がキュート。普段の雰囲気はおっとりしているが、走り始めると、度胸があって強気な走り。クラシックバレーのバネの利いた走りで、世界の壁をポ~ンと越えてほしい」
 容貌や性格を述べただけ。“闘争心宿る美女ランナー”“マラソンで世界を狙う元バレリーナ”というテロップが出ていたので、テレビ局の要望があり推したのだろうか?
 これまで、ここ数年、駅伝やトラックレースなどで活躍するも、あと一歩、壁を突き破れないでいる印象がある。
 ベストタイム 2時間28分09秒 2015名古屋ウィメンズマラソン

加藤岬選手(野口氏推薦)
「一緒に合宿したことがあり、その時は、明るくムードメーカー的な存在だった。負けず嫌いで強気なので、気持ちの切り替えもできる。初マラソンから1年経ち、成長も期待できる」
 番組のキャッチフレーズ?は“爆走お祭り娘”
 恥ずかしながら、これまでの彼女の走りはほとんど記憶に残っていない。昨年の実業団女子駅伝のエース区間の3区で区間3位ぐらいだ。5000m 15分23秒98 10000m 31分59秒72も、走力はあるが、傑出というほどでもない。
 ベストタイム 2時間31分04秒 2016大阪国際女子マラソン

 この他は、「ここ大阪からロンドン五輪代表の切符を勝ち取った名門天満屋の重友梨佐選手からも目が離せない」とアナウンサーから一言。

 千葉氏は“ネクストヒロイン枠”(若手実業団・大学選手)から、“学生界屈指のスピードランナー”の新井沙紀枝選手を推薦。


 最初の2kmは1km3分30秒前後というスローペース。その後、少しペースが上がったが、5km17分21秒とやや遅いペース。10kmも34分26秒この5kmは17分5秒で設定タイムに近いタイムらしい)。
 しかし、10kmでペースを仕切っていた白人ランナーが抜け、もう一人のペースメーカー・ダニエルがレースを引っ張り始めると一気にペースが上がり、11kmで小崎まりが遅れ出す。12km付近で集団が縦長になってきた。
 加藤岬、吉田香織、ツェガ(エチオピア)、堀江美里、竹中理沙、重友梨佐、前川晴菜、前田穂南、伊藤舞、田中華絵、ハブテゲブレル(バーレーン)、宮内宏子、古瀬麻美のペースメーカーを除けば13人の隊列。中継カメラも縦長の集団をアップでフォローしていたが、その間、集団の先頭付近にいた前田が最後尾に落ちていく。
 第2放送車は21位グループにつけている。先頭から400m遅れており、この集団に“ネクストヒロイン枠”の新井選手が含まれている。1km3分30秒ペースを目指しているそうだが、予定のペースより遅いようだ。

 映像がトップ集団に切り替わり、13.3km地点。前田が70m遅れている。12kmから13kmの1kmのペースは3分17秒とさらに上がり、前田だけでなく、古瀬、宮内もついていけない。その前の前川、重友も離されかけている。
 ほどなく、竹中と田中も離れ出し、14kmで先頭は6人に。
 14.7kmで伊藤が遅れだす。

 15km51分13秒で通過。この5kmは16分47秒。増田氏がここまでスプリットタイムを3回告げたが、不正確。高橋氏は自分が間違えたと思い、謝っていた。
 ツェガとハブテゲブレルも離れ出した。ペースメーカのダニエルにピタリと付けるのは加藤(ベストタイム2時間31分04秒)。堀江(2時間26分40秒)も余裕がありそうだ。吉田(2時間28分43秒)もまだ走りに力を感じるが、力を使って走っているという感じ。
 16km手前で、ツェガ、ハブテゲブレル、伊藤、竹中、田中が集団となる。トップとの差は6秒。ジワジワ離れているようだ。
 18km、トップ集団と第2集団の差は11秒。第2集団から8秒離れて重友。重友は第2集団に追いついてきているように見える。
 19km、トップ集団と第2集団の差は20近くに広がったが、重友が集団に追いついて逆に引っ張り始めている。伊藤は集団の最後尾に位置し、2~3m離れ気味。
 淀屋橋付近(18.8km付近)、トップ集団から21秒差で重友と田中、1秒遅れて竹中、ツェガ、ハブテゲブレル。さらに5秒遅れて伊藤の順。
 20kmは1時間8分04秒。この5kmは16分51秒。重友、田中は21秒差と差は変わっていない。ツェガ、バブテゲブレル、竹中も22秒差と表示されているので、重友に食らいついているようだ。
 中間点、1時間11分46秒。第2集団の5人との差は24秒。
 ここで、ペースメーカのダニエルが離脱。通常、ペースメーカーがいなくなると、ペースダウンする。そう感じたのか、吉田が先頭に立って引っ張る(高橋氏によると、21~22kmは3分25秒でペースを保っている)。
 折り返し地点、吉田を頂点に堀江と加藤がターン。22秒差で第2集団。伊藤は先頭集団から52秒遅れている。その後方に見えるのは前川だろうか?さらに、その後方はユニフォームの色からすると古瀬か?(もっと、詳しく中継してほしい)

 画面はトップ集団に切り替わり
「後ろなんですが、差が縮まってきていませんか?」と実況アナ。
「そうですね。縮まっています。明らかに大きく見えるようになってきました」と高橋氏。しかし、私の観測では20秒以上差があり、カメラの映し方による錯覚であろう。しかし、差が開いていないのも確か。第2集団(4位グループ)の中からツェガが離され気味。
 先述したように、ペースメーカーが抜けたのでペースが落ち気味になる先頭集団と、重友が積極的に引っ張る第2集団(ペースメーカー離脱の影響はない)、縮まるのが普通だ。吉田の奮闘が功を奏している。
「伊藤さんの姿がないですね」と増田氏。……何を今さら!
 伊藤については、第2放送車の野口氏が解説。
「先程から気になっていましたが、ちょっと腕振りが横に広がってきていますね」
最初からだと思うが、状態のぶれも大きくなってきており、腕振りも乱れている。
 24km、吉田がややスパート。堀江、加藤を3m引き離すが、堀江もすぐ背後につける。加藤はやや離され気味。この間の1kmは3分27と表示される。ペースメーカが抜ける前は1km3分22秒、抜けた後の3kmは1km約3分27秒のペースだ。
 24.5km、加藤が5mほど離れる。25km手前で堀江が吉田の前に出る。
 25km、1時間25分17秒で通過。この5kmは17分13秒とややペースが落ちている
 このスプリットタイムを見て、増田氏が
「この5km、ちょっとペースが落ちているんですよね。ハーフを過ぎて…17分15秒となっているので……まだ分かんないですよね、これは」
 何を今さら!
 ≪ペースメーカーが離れてペースがどうなるか≫とか、≪後ろの集団の姿が大きくなってきているのでは?≫という会話をしてきたというのに!
 堀江はペースが落ちたと感じたからなのか、もともと25kmからペースを上げるつもりだったのかは不明だが、明らかにペースを上げている。吉田もつくのが精一杯。加藤は20m離れている。
 25kmでの4位グループとの差は18秒。ツェガは落ちて、4位グループは重友、田中、ハブテゲブレル、竹中の4人。
 堀江の走りは力強い。身体もがっしりしている。日本人離れした走りだ。4位で追う重友も同様のスケールの大きさを感じる。
 25.4km、吉田が離され始める。
「これまで練習では強いが本番では弱いと言われた堀江さんが、今回は“本番に強い選手”に生まれ変わるかもしれないですね」と高橋氏。これに対し、増田氏が即座に
「でも、ちょっとまだ早いなあと思いますねえ。勝つために、もうちょっと人の後ろについていれば良いのに。はぁっとここで出るという…やっぱりこれも性格的な……」
と反論。これに、高橋氏も即座に切り返す。
「あのぅ、レースを見たんじゃないですか?吉田選手の走りを見て、≪今なら≫っていうチャンスを窺った……瞬間をしっかりと受け止めたんではないでしょうか」

 これは、判断が難しい。
 増田氏の言うのも尤もで、≪勝負に出るには25kmは早すぎる。折角、吉田選手が引っ張ってくれていて、今はそれを利用して、終盤に力を残しておくべき≫でオーソドックスな考え方であろう。
 一方、≪吉田選手の走りを見て、“一杯一杯”だと感じて、勝機と捉えてスパートを掛ける≫というのもありだろう。しかし、それでもやや早いようにも思う。
 また、後方から追いかけてきている重友選手、田中選手を考慮すると、≪ここでふたりに差を詰められるのは、重友選手らに勇気と勝機を与えてしまう。ここでペースを上げ、突き放すべき≫。ただ、レースを見ているコーチならともかく、後方の重友選手の走りが分からない堀江選手が、こう判断するのは難しい。

 
 今中継は5人もの女性解説者が揃い、有村氏は総合的な解説、野口氏は2号車での解説、千葉氏はバイク中継解説と贅沢な起用となっており、増田氏と高橋氏が同じポジション(実況に即した解説)となり、会話できる状態となっていた。(普段は増田氏が実況に即した解説で、高橋氏が第2放送車、または、レポーター兼総合的な解説と住み分けている)
 つまり、意見を交換出来る(反対意見を言う)状況でにあった。
 今回、増田氏が高橋氏に反対意見を言う場面が多かったように思う。中継序盤で、増田氏が「スタート時点で10℃を上回る気象条件を不安要素に上げた」のに対し、高橋氏が「五輪本番は、真夏の暑さの中で(夕方か朝方になると思うが)走ることになるので、このくらいの気象条件で走れないのでは…(話にならない)」と反論したことに起因しているのかもしれない。この件については、レースの終盤で、「暑さの得手不得手は個人差もある」とこだわっていた。
 

 それはさておき、堀江がペースを上げたことにより、吉田も5m近く遅れだし、加藤はぐんぐん置いていかれる状況。第2中継車から「重友、田中が差を詰めてきている」というレポートがあったが、それは25km地点での差で、25.5kmでは逆にやや開いている。それでも、重友のペースも悪くなく、ハブテゲブレル、竹中は二人から30mほど離され始めている。
 26kmで堀江と吉田の差が20mに広がる。この1kmは3分23秒と5秒ほどアップ。
「勝負勘が凄いですね。高橋さんが言ったように」
と、増田氏が高橋氏をフォロー。
「スパートは自分ひとり感覚だけではなく、残りの距離、相手の疲れているところなど、すべてが一致した時に、パーンと弾丸のように行けるかどうかがポイントなんですが、その瞬間をしっかり逃さなかった」
と高橋氏が語り、
「Qちゃん(高橋氏)もね、シドニーの時もサングラスをシュッと投げてからパッと出たあの瞬間と言うのは勝つ瞬間でしたね」
と、増田氏もすかさず、ヨイショ。
「やはりそうですね。残りの距離と自分の余裕と相手の落ちたところ、すべての重なった時があの瞬間だったと思います」
とやや得意気な高橋氏。

 27.3km地点、で堀江と4位の重友、田中との差は30秒(高橋氏の計測)。加藤が吉田を捉え前に出るが、トップの堀江との差は20秒は離れている。
 第1放送車の画像では、加藤・吉田(トップとは20秒差以上)、重友・田中、竹中・ハブテゲブレルが2人ずつ等間隔(10秒差)で走っている。

 ここで、ランナーは大阪城公園内に。ここでTHE ALFEEの『創造への楔』(挿入歌)が大阪城公園内を走るランナーに重ねて流され、番組を盛り上げる。
 3分30秒ほど実況解説なしになり、映像以外の情報がなくなるが、高揚感あふれるメロディ・歌詞に疾走するランナーが交互にアップで映る……けっこう好きである。
 この間、加藤が吉田を引き離す。ほどなく、重友も吉田を抜き去り、加藤に迫る。田中も吉田も懸命に食い下がる。
 曲の終了直後、重友が加藤を捉え、5m間隔で重友、加藤、田中、吉田の隊列になる。重友の28~29kmのスプリットタイムは3分24秒。
 画面ではトップとの差は180mと表示されていて、この情報が正しいとすると、27.3km地点よりは開いていることになるが、29.6km地点の実況は
「堀江との差もちょっと縮まってきているような印象もあります」
「明らかに重友さんに勢いがあって、姿が大きくなってきました」と高橋氏。
曲がり角でタイム差を計った高橋氏は
「25秒と5秒差を詰めてきています」
しかし、私もビデオで確認したが29秒差で27.3km地点と比べるとほとんど変わっていない。整理すると、25km地点で両者の差は18秒。これが、25kmで堀江がスパートし30秒まで広げ、そこからは差は変わっていない。加藤、田中、吉田は置いていかれている。(曲がり角では田中と加藤が並走している)

 30km、1時間42分08秒で通過。この5kmは16分51秒。1km平均3分22秒で25kmからスパートしたそのペースをひとりで維持していることになる。見事な走りだ(最後まで極端に落ちなければ)。
 2位重友は25秒差。この5kmは16分58秒と堀江より遅いが、曲がり角(29.6km付近)からの400mの間に4秒も詰めていることになる。
 32秒差で田中、33秒差で加藤。

 30.7kmの2号車の映像では差が120mと表示されている。29~30kmのスプリットが3分19秒というレポート。やはり、この1kmに限ると重友の方が3秒速い。単純計算すると、38km地点で重友が堀江を捉えることになる。3位田中とも15秒差はついていると思われる。加藤は田中に離されているようだ。
 第1放送車から望遠画像では、加藤の後方やや遅れて吉田、そこからかなり離れて竹中とハブテゲブレルが並走。さらに、はるか後方に、ぽつんとぽつんと2人のランナーが見えるが、誰かは確認できない。
 31.3km、高橋氏の計測で21秒差。確実に詰まってきているようで、映像でも重友の姿が大きくなってきている。
 31~32kmの堀江のスプリットは3分27秒。スパート時より4~5秒遅くなってきているが、走りの変化はほとんど見られない。しかし、重友が急追、32.5km地点で差は14秒(高橋氏計測)。
 (吉田が加藤を抜いて4位に上がるというバイクレポート・32.4km付近)
 この後も堀江と重友の差は縮まってきているようだが、カメラがめまぐるしく切り替わり、第1放送車のカメラの望遠の度も変わるので、映像での差の判断も難しい。ランナーの表情も必要だが、もう少し、差を把握できるような配慮もして欲しい。
 33.6km地点で、11秒差とバイクレポートの千葉氏(ナイスレポートだ)。
 竹中が加藤を捉え、5位に浮上。加藤の背後にハブテゲブレルも迫ってきている。
 加藤の失速に、実況アナは脱水症状を心配するが、高橋氏は
「脱水症状までは起こしていない。足に来ている。30km過ぎのマラソンの壁を感じてきているのでしょう」
 これに対し、増田氏は
「さっき、がぶがぶ水を飲んでいましたから、……脱水もちょっとあるんじゃないかしらって思いますけど」
 やはり、暑さの議論のことを根に持っているのかもしれない。

 34.1km地点で堀江と重友の差は10秒。
 35km、1時間59分23秒、この5kmは17分15秒。その前の5kmより24秒、1km当たり5秒近く落ちているが、落ち込みはそれほど急激ではなく、1km3分27秒と3分30秒を切るペースを維持している。
 追う重友は、7秒差で通過。この5kmは16分57秒で、その前の5kmとほぼ同じ(1秒速い)。1kmを3分23~24秒のペース。計算上はあと2kmで追いつくことになるが、背中が目前に迫ってきているので、ストライドも伸び、もっと早く追いつくだろう。
 3位の田中は、35kmをトップと59秒遅れで通過。この5kmは17分42秒掛かっており、トップを追う余力はないようだが、ペースダウンを最小限に抑えていると言える。

 
 35.5km地点、ついに重友が堀江を捉える。重友は道路中央寄りに進路を変え、堀江を抜いていく。しかし、堀江も重友の背中に付け、歩調を重友に合わせ何とかついて行こうとする。
 しかし、その頑張りも長く続かない。100mで走りが乱れ出し、200mで推進力を失い離れ出す。追いつかれて300m(35.8km地点)で10m差がつくと、ズルズル後退し始めた。重友の35~36kmのスプリットタイムが3分23秒と表示される。依然、快ペースを維持しているようだ。
 37.8km地点を走行中、画面で現在の順位が表示され、4位はブルラ(米国)。ブルラって誰?……今日、初登場。35km地点では、4位が竹中でトップとは1分56秒差。5位吉田、6位ハブテゲブレル、7位がブルラで、2分1秒~2分3秒差で一団で通過したようだ(公式記録より)。加藤は8位に後退したようだ。
 ブルラは竹中には7秒差に迫っている。竹中やハブテゲブレルがこの5kmを18分以上かかっているのに対して、ブルラは17分13秒。20~25km17分12秒、25~30km17分17秒とペースを維持していた。

 40km地点、重友は2時間16分42秒、この5kmは17分12秒(1km3分26秒5)とさすがにペースが落ちてきた。増田氏は17分21秒と告げたが、9秒違っている。増田氏のスプリットタイムはずっとズレている(35km地点も違っていた)。
 堀江は重友から53秒遅れで通過。足の運びの力強さが消え、ストライドが伸びず、推進力を失っている。この5kmは18分12秒と大きくペースダウン。
 3位田中1分45秒差、4位ブルラ2分24秒差、5位グループで竹中とハブテゲブレル3分30秒差。以下、7位バーナルデッリ(ポーランド)、8位ツェガ、9位加藤、10位古瀬。

 重友の走りはこの後も乱れず、2時間24分22秒でフィニッシュ。40kmからの2.195kmは7分40秒(1km3分29秒)。若干、スピードは鈍ったが、走りの力強さは失われることはなかった。
 1分22秒遅れて、2位の堀江がゴール。2時間25分44秒、40km以降は8分9秒(1km3分42秒)と踏みとどまり、ベストタイム(2:26:40)を更新した。
 3位は田中、2時間26分19秒。35~40kmは18分5秒(1km3分37秒)、40km以降は7分52秒(1km3分34秒5)と踏みとどまり、最後は若干盛り返しているのが素晴らしい。
 4位はブルカ、2時間26分53秒。35~40kmは17分40秒(1km3分32秒)、40km以降も7分47秒(1km3分32秒)。最初から最後まで5km17分台を維持し続けた。アメリカはこういうタイプのレースをする選手が多い。五輪や世界選手権で終盤追い上げてメダルに絡むシーンをよく見る。
 5位、ハブデゲブレル、2時間28分36秒(40km以降は8分23秒)。6位、竹中、2時間28分44秒(40km以降は8分32秒)と相次いでゴール。このふたりは、ずっと競り合っていたように思う。
 竹中は悔しいレースだったのではないか。3位の田中は同級生という。集団から遅れ始めても粘れる選手だと思う。しかし、マラソンは長いので、苦しい時はやや緩めて、走りの立て直しを図るのも一策で、そうしていれば、田中と終盤競り合え、少なくともベスト記録は更新出来たのではないだろうか(優勝は狙えないが)。
 7位バーナルデッリ、8位ツェガ、9位古瀬、10位加藤。
 リオ代表の伊藤は11位。12位前田穂南、13位高田晴奈、14位キャシー・フィン(オーストラリア)、15位内田梨絵。
 新井沙紀枝(千葉氏推薦)は19位、41歳小﨑まりは21位(2:35:52)だった……感服。
 中盤、レースを引っ張った吉田香織は35kmでは5位と踏ん張っていたが、残り3キロの地点で低体温症と過呼吸で途中棄権

 優勝した重友選手の見事な走りだった。
 10kmでペースメーカーがペースを上げた時は、自分も身体が動いておりいいペースで走れていたと思ったので、ペースを維持して走ったら、思いのほか差をつけられてしまったとのこと。
 それでも慌てずに走りを崩さず、15~18km地点でリズムに乗り始め、追い上げに掛かったが、25kmで堀江がスパートし、再び差が開いた時も慌てず走りを維持し、追い上げ続けた。
 予定は≪30km付近まで集団について行き、そこから勝負≫で、それとはかけ離れた展開だったが、落ち着いて気迫あふれる力強い走りを貫いた。
 今回、奇しくも陸連が推す“ネガティブスプリット”的な走りとなってしまったが、意図したものではなかったようだ。


 2位の堀江選手もそうだが、重友選手はここ数年は故障に苦しんだ。
 ロンドン五輪の79位2時間40分6秒 と惨敗。選考レースでは失速する福士選手とは対照的に快調な走りで、2時間23分23秒の好タイムでマラソン初優勝を飾ったが、五輪前の6月下旬に右足首を痛め、練習不足のまま本番に向かわざるを得なかったという。
 その後も、世界陸上北京大会のマラソンに出場するなど、ある程度の成績は残しているが、本人が満足できる到底本人が満足できるものではなかった。
 諦めず努力し続けた彼女に拍手を送りたい。
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