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Creator's Blog,record of the Designer's thinking

毎月、おおよそドローイング&小説(上旬)、フィールド映像(中旬)、エッセイ(下旬)の3部構成で描き、撮り、書いてます。

ドローイング666. 小説:小樽の翠590. クリエイション

2022年12月06日 | drawing

 翠の病院では、時折大学の先生を招いて研修会がある。
今日は、大学の先生には見られないナロナロとした出で立ちで少しぶっ飛んでいる脳科学の若い女性研究者だ。そのナロナロした先生の今日の世話係が翠だった。
・・・
 講義が終わり、翠が先生を見送りがてら雑談していた。
翠「認知症ってなんだろう?」と素朴な質問をした。
先生「それは、生活習慣病よ」
翠「えっ、そうなん!?」
先生「歳をとったら気分はリタイアメントだよね。そうなると楽しみはどうなる?」
翠「孫の世話かぁー」
先生「それそれ!、本当は孫の面倒な養育の世話をする気力はなく、実は猫のように溺愛するだけ」
翠「そうなると・・・」
先生「年寄り達の言葉や話し方が子供言葉になる。モノにちゃん付けしたり。言葉は意識の表れ。それ以外に年寄り達の仕事がないから次第に頭脳が子供意識に近づく事が生活習慣になる。さらに年寄り達は概して高血圧だ。だから降圧剤を飲む。これもボケを加速させる。そうなると認知症の入り口だね」
翠「ボケない人ってどんなん?」
先生「先ず、何かを自分で作り出し続けている人!。つまり頭や指や手を動かし、表現したりモノを作り出している人」
翠「ボケない人の典型例は?」
先生「例えば学者や建築家。彼らは90位まで仕事をし、そして最後までボケない。それは右脳が発達してゆく子供の段階でクリエイションの訓練をしてきた人達だ」
翠「仕事がクリエイションの要素を持っていればマストだけど、そうでない事務職みたいな人たちは?」
先生「仕事がクリエイションだと、リタイアメントしたときにクリエイションは終わってしまう。だからクリエイション=仕事にしないこと。クリエイション=生活の中に置いておく事。どんな仕事をしていても、つねにクリエイションの要素を持っていることが将来のボケ予防につながる」
翠「他には方法はないの?」
先生「あるとすれば体力的に可能ならばシニアになって再婚して子供を作る事かな。それは溺愛どころではなく養育そのものに頭と身体を働かさざるを得ないから効果的な刺激を脳に与えるだろう。それに未来に夢が持てるというのもボケ予防になる・・・」
翠「ふぅーーん、人間はず一っと未来を見ていたいんだ」
先生「それは学問の未来とか、空間の未来とか、だろうね。孫の未来・・・、まあそれも未来の一つだけど溺愛だけだから他力本願だよね」
そういって病院の玄関で先生を見送った。
学者って講義の後で結構核心を突いたことを事をしゃべるんだ。そうアチキから教わっていた。
・・・
さて、寒くなってきた曇天の小樽の夕方だ。
陽が沈むのも早くなってきた。
コメント
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