Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

セカンドライフ sonicmart制作記10.

2007年08月27日 | Design&3DCG
 このプログも10回書き続けたので、休養をとりました。他の原稿で忙殺されたのが原因だが・・・。
 新しい敷地や家具などが置かれていないマンションをみたとき、誰しもが狭いと感じた体験を持つだろう。セカンドライフ(SL)のシムも同様で、オブジェクトがないシムは、私達の感覚では狭いと感じた。何も置かれていない空間は、狭く見える。それは空間を扱う際、人間が等しく認識している経験である。人間の空間に対する認識特性だとおもわれるが、制作上混乱させられる要素でもある。
 SLのシムの面積は、バーチャルスケール上、約65,000㎡ある。ファーストライフ(FL)では、道路や公園を含め郊外型の比較的ゆとりある建売住宅が、約130戸から150戸建てられる。こうした空間のスケールに慣れることが、シムづくりの始まりである。マナティー・リゾート・アイランドの制作現場で、スケールが把握でき、シムとしてまとまりだしたと私が感じたのは、クリーク沿いのボードウォークが設置された時である。その頃からシム全体の骨格と方向性や最終形が明確に見えてきた。ヴォードウォークを介して広場やプロムナードを設け、建築用地はこの当たりに、これ位の規模でといった具合にである。ヴォードウォークが、スケール感把握の手かがりだったのである。
 FL世界の自然環境では、制作に際し実際にどこから手をつけたらいいかが解らない程、大きな空間スケールがある。そこで私達は、どこかに手掛かりをつける作業を始める。その手掛かりとは、私達が日頃から感覚的に馴染んでいる家屋であったり、自分が歩こうとしている道であったりする。
 もしあなたが、SLでは、空を飛べるから道は無関係だと思ったならば、それは空間のスケールを把握する手掛かりを失うことになる。それを失えば、後は碁盤の目の道路を、機械的に配置して完成といった具合になる。ただしそれではリゾートにならない。
 空を飛んでいるだけでは、空間スケールはわからない。人間が地上を歩くのと同様に、シムの敷地を歩きながら、適度な幅や距離といったスケール感を探り出し、身体的に覚えてゆくのである。特に他の3DCGのように投影図がなく、オブジェクトの座標軸しか与えられないSL制作では、なおさら必要なことである。SL世界において、空間のスケールを認識する行為は、FL世界と同様である。というか・・だからこそFL世界の追体験ができるバーチャル環境として、SLが成立しているのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記9.

2007年08月25日 | Design&3DCG
 ナイトスケープについて書いておこう。セカンドライフ(SL)のシムは、日に3回程度、夜になると思われる。従ってナイトスケープ(夜の風景)の環境演出は、重要な制作要素になる。といって蛍光色を多用した派手な演出では、リゾートでなく歓楽街に成りかねない。また光と影のない環境であるから、他の3DCGソフトのように、光源やスポットライト (擬似的なライトはあるが) で、オブジェクトのリアルな演出はできない。光や影の計算は、大変時間がかかるので、セカンドライフ上の夜は、光や影を擬似的に扱うことで、スムーズなソフトの動作を確保しているのだと、私は類推している。
 それは私達からみれば、はなはだしい不足を感じた。マナティー・リゾート・アイランドのナイトスケープで私達は、いくつかの蛍光カラーを用い、わずかに照明要素を点景として制作配置したに過ぎない。他の3DCGソフトであれば、屏風のようにそそり立つ山稜をライトアップすれば、地形に応じた山腹特有のドラスティックな表情が出せるのだが、SL上では不可能である。 比較的効果的なのはトーチであるが、データ量が重くなるので、多用できないという難点があった。
 私達が工夫した点が1つある。月明かりの風景を試みたことである。その手法は至って簡単であり、反射率の高い色彩を配置すればよい。それは白を多用することである。シム全体のナイトスケープが低彩度になる中で、反射率の高い白がコントラストとなり、対比的な関係性を持つので、月明かりの反射のようにみえるだろう。このシムで、白を多用したのは、実はそうした理由だったのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記8.

2007年08月24日 | Design&3DCG
 今回は、主役と脇役の話を続けよう。環境形成において、何時も同じ要素が主役であるとは限らないことはしばしば力説していることである。今回取り上げた、広場やボードウォークに置かれる、東屋、パラソルテーブル、椅子といった街具(屋外に設置される家具を言う)が、環境形成に果たす役割は、建築と同等であると考えている。上図の写真の広場では、主役が街具であり、建築が背景といった脇役になることを示している。この広場は、これら街具、そして植栽とによって絵になる風景を構成している。特に街具と植栽となじみがよく、このような関係性は、リゾートらしさを演出する上で必要なポイントである。
 幾つかの他のリゾートシムを見学すると、こうした街具と海岸のランドスケープだけで、時間がゆったりと流れるリゾートらしさを表現している。環境形成を、建築に依存しない分、プリム数が低減できるので、合理的な制作方法だと言える。実際にトラフィック数も多く、またナンパで有名となっているリゾートシムもある。そこでは、ビーチに東屋とダンスマットを設けたキャンプとし、多くのアバター達が集まっている風景が、より一層リゾートらしさをつくりだしている。環境アメニティ、アバターの密集、キャンプとがよく関連づけられながら、一貫性あるデザインテイストで制作されている。
 シムの運営にとってトラフィック数をあげることは、重要な課題である。アバターが集まるのには、一定の法則がある。一言でいえば、「アバターは、アバターのいるとこに集まるのである。」いつもアバターが集まる場所だとという、セカンドライフ上での話題になることは、重要なプロモーションとなる。シムの中に、いきつけのバーがあれば、いつもそこは常連アバターで賑わっている。そこでシム情報や制作情報を交換したり、恋人をみつけることもできる。セカンドライフの魅力は、そうしたコミュニケーションにある。
 アバターを操るのは、背後の人間であるから、SL上の法則やコミュニケーションは、そのままファーストライフにおいて、私達が界隈とよんでいる手法や出来事と同じなのである。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記7.

2007年08月23日 | Design&3DCG
 多くのシムをフィールドサーベイしていると、制作者の環境に対する認識の程がよくわかる。例えば河川と敷地といった、環境が変化してゆく境界部分の扱い方に、その差がよく現れている。ファーストライフ(FL)では、こうした性質が異なる環境をつなぐ境界を、特にエコトーン(移行帯)と呼ぶ。そこには、水域から陸域へ、森林から農地へと、地形や土地利用が変化し、多様な生物が生息、生育、繁茂する固有の生態系がある。通例葦など被われた水辺や湿原、水鳥が集まる干潟となっている。エコトーンは、前述した建築と街路との間の敷際と同様に、自然界の際、マージナルスペースである。私達の日常生活体験の中でエコトーンは、誰でもが一度位は体験し、暗黙のうちに認識されている空間だと思われる。例えば水域でヤゴが成長するとトンボになり、カエル、ホタル、ゲンゴロウ、ドジョウ、メダカと書けば、子供の頃の遊び場だった原風景が、記憶にあるだろう。
セカンドライフ(SL)で、エコロジカル環境を制作表現しなければならない必然は、現時点では少ない。だが、人々が子供の頃の原風景を持っている以上、SLにおいてリアリズムを目指すのであれば、エコトーンは必要な制作要素である。
 マナティー・リゾート・アイランドでは、エコトーンを、クリーク沿いや、奥まった水路に制作配置している。それらは、このシムを訪れるアバター達の目に入る可能性は少ない程に、目立たない存在である。だが少なくとも陸地から水辺に至る風景の、シームレスなつながりは感じてもらえるだろう。現時点では、SLの植生ライブラリーがまだ十分ではないので、配置した種類などに於いて完全なリアリズムとは言い難い部分がある。それは今後の検討課題としているが・・・。
 もう一つリアルな話があった。古来日本の農家では、よしずや、すだれといった生活用具の材料として使用するために、水辺の葦などは刈り取られてきた。私達が制作したシムに於いても、既に配置した植物オブジェクトを刈り取る場面があった。それはシム全体のプリム数に制限があるため、他のオブジェクト制作用プリムを捻出しなければならない時だった。皮肉なことに私達が予期せぬところにも、リアリズムが出現してしまった。SLには、予期せぬ面白さがあるようだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記6.

2007年08月22日 | Design&3DCG
 ファーストライフ(以後FLと言う)に於いて、実際のリゾートを始めとする地域・都市や建築要素等の計画とデザインをしてゆくことが、私達本来の仕事である。そうした私達の実現化ツールの1つとして3DCGやプログラミングを多用している。従ってセカンドライフ(以後SLと言う)の制作場面では、FL世界で実現された姿をイメージしつつ、シムのランドスケープ・デザインを行っている。従ってマナティ・リゾート・アイランドを、実際に建設しても成立するだろう。我々にとってSLは、シミュレーションの場でもある。広義にみれば、SL自体がライフ・シミュレーションだといえよう。例えば、既婚・未婚を問わず、FL世界とは、違う恋人がいたとしたら、どんなライフスタイルになるだろうか、・・・といった具合に。
 建築要素である居住区のコテージ制作で、私達はFL世界同様の手法を採用した。そうしなければ、混沌とした風景をSL上に出現させてしまうからだ。実はそんな実例を、JAPAN系シムでみた。シムオーナーが、敷地を再分割して転売や賃貸を行い、ユーザーが獲得した敷地に思い思いの家を制作する。その結果、クラシックハウスの隣が蟹直売店、その隣にはサザエさんちがあり、巨大看板やオブジェ、大きなブックストア、意味不明なハイテクオブジェクトが立ち並び、空にはクラシック飛行機が飛ぶ、といった案配にである。法律や構造といった制約を取り去ると、日本人の空間はどうなるかといったシミュレーションだと理解すると、日本人の特質がみられるようで興味深いが、そこにはFL世界以上に混沌した街が出現している。それでは、フリーのサンドボックスと大差がない。こうしたシムをみていると、やはり環境全体に対する一貫性ある制作ルール導入の必要性を痛感した。
 マナティー・リゾート・アイランドの居住区には、クリエイターや個人、或いは企業等が作品や商品を展示したり販売したり、またSLの定住拠点として利用できる、3タイプのコテージを制作している。総戸数は、同時可能アクセス数100人を基に係数を用いて算出し、約130戸程度を設けた。ランドスケープ・デザインでは、個別的建築デザインよりはむしろ、多数の建築群によって形成される全体性を重視した。そのため、屋根や色彩をタイプ毎に統一したり、3m,3.5m,5m,10mというオブジェクト・モジュールを採用し、建築自体の形態統一を図った。特に室内と室外との境界領域である敷際に着目し、バルコニーやテラス・ギャラリーといったマージナル・スペースを設けた。マージナルスペースは、作品展示販売、販売促進プロモーションといった活動が、空や道を歩くアバターの目にとめることができる場所なのである。またシムにコテージを規則的に配置すると、統一感は形成されるが、他方単調な風景になってしまう。そこで、縦方向、横方向と言った3次元的配置の考え方を導入した。先ず斜面配置可能な高低差がある敷地を造成した。次いでコテージの窓辺から見える風景が全て異なるように、多様な方向にコテージの前面を向けることとした。
 建築要素のデザインポイントをまとめると、建築群による風景形成、制作オブジェクトのデザインルールを予め用意する、建築内部よりはマージナルスペースの設えに留意する、不規則な建築配置による多様な風景の見え方、となる。これによってシム全体の統一感と、利用者アクティビテイによって展開される多様な活動とが、共存共生できる風景形成が可能になる。
 今回、このような方法が可能だった背景には、事業者が私達特定の1グループにシム全体のデザインを一括依頼してきた経緯がある。もし複数の制作者へ依頼したならば、JAPANシムのような混沌とした風景になっていただろう。さらに幾つかの経験から私達は、SLが都市やまちづくりシミュレーション・ツールとして有効だと考えている。というのも実際の街で混沌とした風景を実現してしまったら、バーチャル空間とは異なり、リアル空間では容易に修正ができないだろう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記5.

2007年08月21日 | Design&3DCG
 J.ホイジンガの「ホモ・ルーデンス(遊技的人間)」[注1]の考え方に立てば、人生究極目標の1つはリゾート暮らしかもしれない。リゾートとは、re=たびたび、sort=人が滞在して居る、という意味であり、人々がたびたび訪れ長期滞在できる保養地、というのがファーストライフ(FLと言う)での定義だろう。
 私は、その数を数えたわけではないが、セカンドライフ上には、リゾート・シムが多く見られる。それは人生究極目標への憧憬性の表現といえるのかもしれない。セカンドライフのリゾート・シムは、2タイプに大別できよう。1つは最も多いタイプであり、風光明媚なビーチ等を中心とする設えの環境演出タイプ。ただし環境の良さが評判となりナンパプレイスとして賑わっているシムもある。2つは、情報探訪やエンターテイメントがあるビレッジタイプ。マナティ・リゾート・アイランドは、他との差別化といった視点から、後者の制作方法を採用した。ビレッジタイプの場合、シム制作には建築要素のデザインが必然的に伴う。本ブログでは2回にわたり、建築要素による風景の制作方法のポイントをまとめた。
 セカンドライフでは、隣接シムがない限り、その周囲の風景は、水平線し見えない。ランドスケープ・デザインの立場からみれば、 こうした単調な風景は、さあ何でも制作してくださいと言われているようだが、実は、デザインの手掛かりが掴みづらい設定だと思う。そこで概念的に考えれば、水平線は幾何学形態でしかない。幾何学には幾何学を持ってのぞむといった同質的関係性を形成すれば、当然調和する風景になるだろうということは、FLでも経験していることである。そこで、幾何学形態だけで構成された建築要素をデザインし、シムの南側に配置した。上図が示すように、同質的な関係性だから、このシンプルな風景は必然的に調和している。最も簡単な風景形成方法であり、これだけで終われば、我々の作業の簡単であったが、これでは当初目的のビレッジにはならない。
 シムには、集客上居住区や映像ホール、そして環境全体形成のための植栽や装置が多数出現してくる。なによりも、ビレッジタイプとしての風景をつくらければならない。当然そこには、数多くの環境構成要素が入り込み、シンプルな風景は次第に浸食され、また、それの行為を排除することもできない。そこで、特定の風景部分だけを選定し、同質的関係性に影響を与えそうな他の要素を排除してゆく方法を用いた。例えば樹木などの位置や、他の建築要素の高さ制限である。
 このように、阻害となる諸要素を排除してゆく方法を、減算的デザインと呼んでおく。つまり建築デザインは、引き算であるとする考え方である。FLの世界でも用いている手法である。


1)Johan Huizing:1872-1945.オランダの歴史学者:「中世の秋」,「ホモ・ルーデンス」他.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記4.

2007年08月20日 | Design&3DCG
 プロダクトテザインが、風景の中の主役として使われることがよくある。例えばヨーロッパの古い街並みと、新しいカーデザイン(フェラーリとか・・・)といった対比的関係性は、コマーシャル分野で用いられる手法の1つである。優れたプロダクトデザインは、彫刻のような空間支配、或いは周囲への強い影響力を持っている。だからこそ風景の中の主役になれるのだろう。プロダクトと彫刻は、デザインとアートという大きな相違はあるが、マッスとしての形態だと言う点では、類似性がある。
 我々の、ソニックマートのシム制作において、こうしたプロダクトデザインが持っている空間支配力や影響力を、3DCGの世界でどのように表現するかは、制作課題の1つであった。そこで、典型的なモダンデザインの中から、幾つかの家具を製作した。そのなかの1つが、C.R.マッキントッシュ[注1]の ヒルハウス1と名付けられた椅子である。1902年のデザインであり、現在でも購入することができる。
 我々はこの椅子を3DCGで制作し、マナティー・リゾート・アイランドのコンドミニアムに設けた、細長いギャラリー空間に配置してみたのが、上図である。セカンドライフの風景を、ギャラリーの開口部が絵画のよう切り取り、点景として置かれたヒルハウス1が主役の座となり、この空間を支配することができた。つまり、絵になる風景を形成することができた。
 次に我々は、彫刻のアプローチを試みた。シムのシンボルであるマナティーを彫刻的な3DCGとして制作し、広場に配置してみた。その結果広場の点景要素として、それ自体シンボル機能はあるが、ヒルハウス1のような主役としての風景が形成されたとは言い難い部分もあったと思う。
 ここにデザインとアートとの違いがあるのだろう。プロダクトと比較して、彫刻は非常に複雑な面を多数持っているマッスである。これは3DCGでは大変制作しづらい。もちろん形態たけであれば不可能ではないが、桁違いのプリム数を必要とすることと、光や影のないシムで、量感や存在感をどのようにだすのだろうか。制作場面で我々は、結局簡略化して概念的なオブジェクト制作とした。セカンドライフは、デザインオブジェクトは制作容易であるが、アーティスティック・オブジェクトは、尚研究の余地があるだろう。

注1.Charles.Rennie.Mackintosh,1868−1928.スコットランド出身の建築家,プロダクトデザイナー,画家.数多くのクラシック・モダンな椅子をデザインしたが、社会的に認められないうちに不遇の一生を過ごした。現在、デザイン史では、必ず取り上げられる作品である。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記3.

2007年08月19日 | Design&3DCG
 ファーストライフにおいて、我々が見ているシーン毎の風景は、自然の要素や、街や建築や家具といった人工要素とによって構成されている。これらの要素を芝居に例えれば登場人物と読み替えることができる。芝居の登場人物には、先ず主役と脇役という役回りがある。次いで登場人物らの人間関係が設定されている。恋人同士、家族、善人と悪人、支配する側とされる側といった具合に。
 例えば 上の写真を、ソニックマート[注1]劇場で行われている、”マナティ・リゾート・アイランド”[注2]という演目の1シーンだとするならば、すべての登場人物が舞台に勢揃いしたところだろう。 登場人物は、山や入り江とヴォードウォーク、入り江に浮かんでいるカラフルなボート群、街路樹や植栽、赤や緑の屋根のコテージ、コテージには暖炉が垣間見える、少し顔をのぞかせているホール、広場に置かれた白いパラソルや黄色いチェア、一寸目立つ青サインボードである。 それぞれのキャストが、役回りの違いを超えてお互いに同じ存在感という関係性を維持しながら、この風景を構成している。
 風景をつくる方法がランドスケープデザインである。日本語では「そのをつくる=園を造る=造園」という言葉が近い。我々が制作したシムでは、ランドスケープデザインの手法を応用した。その特徴は、シーン毎に主役と脇役が変わってくる、風景の多様性を実現していることだ。
 本ブログでは、マナティ・リゾート・アイランドの中から幾つかの風景を取り上げ、主役と脇役とが変わってゆく様相や関係性を中心に、ランドスケープデザイン手法やシム制作の考え方について、数回程度掲載してゆく。


1)ソニックマートは我々の制作場所であるシムの名称。
2) マナティ・リゾート・アイランドは、我々が制作したデザインのコンセプトテーマ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記2.

2007年08月18日 | Design&3DCG
 シムを造るのに際して、我々に依頼されたのは、オブジェクト制作だけである。だが実はもっと重要な制作がある。それがアバターを始め、全てのモノを動かすためのスクリプトである。これがなければ、草本1つ動かすことができない。
 通例3DCGソフトで、モノを動かすためにプログラムを書かされると言うことは少ない。あらかじめ決められた動作を、選択すればオブジェクトであれ、画面であれ、フィギャーであり、動いてくれる。ただしそれらの動作は、定められた動作の範囲内という点では限定的である。SLにおいても、いくつかのモノの動作は、予めパッケージとして用意されている。だがもしパッケージの中で、目的に適った動作が見あたらないときは、リンデン社が公開しているLSLというスクリプトをユーザー自身で書けば、より多彩な動作が実現できる。
 コンピュータの構文は一緒だから、Java等の言語を勉強してきた人間にとっては、比較的取り組みやすいことだろう。マッキントッシュの登場以来、その背後に置かれていたプログラム[注1]の一部が、SLによって再び前面に登場してきた。プログラム!!その言葉を聞いたとき、私はFORTRANでプログラムを書いていた学生時代を思い出した。あの「カンマ」と「ピリオッド」を打ち間違えただけで、それが原因だと解る迄の1週間を悶々と過ごしていた悪夢の日々。現在は、いわゆる校正機能がついているから、随分楽になったと思うが・・・。
 シム制作に話を戻すと、オブジェクト制作上どうしても、スクリプトを必要とする場面があった。例えば多数の映像コンテンツは、グランドレベルに映像視聴範囲と共にリンク先の設定をするのだが、建築内だと数値制御で正確に組み立てた床を、何枚も剥がしてなければならない。映像コンテンツ数が大けれれば、その作業も手間のかかる仕事である。そこで、こうした床をスクリプトで上下できるように設定している。上図の写真は、アトリウムと映像展示とを兼ねた空間としてデザインしたものだが、ここでもスクリプトを書いて、映像展示の際は、周囲の壁と天井をキー操作で床から定位置まで立ち上げ、容易に模様替えができる設定とした。
 このようにスクリプトの存在を再度顕在化させたこと自体がSLの特質である。我々は、オブジェクト制作よりも、スクリプト制作の方が重要であると判断している。スクリプトこそがコンピュータの本質そのものだからだ。


注1.ここでは、スクリプトは文字列・文字体系と定義し、スクリプト言語を用いて記述されたものをプログラムと定義する。本稿では、同義に解釈して差し支えない。


04
セカンドライフ sonicmart制作記3.
2007年8月19日日曜日
 ファーストライフにおいて、我々が見ているシーン毎の風景は、自然の要素や、街や建築や家具といった人工要素とによって構成されている。これらの要素を芝居に例えれば登場人物と読み替えることができる。芝居の登場人物には、先ず主役と脇役という役回りがある。次いで登場人物らの人間関係が設定されている。恋人同士、家族、善人と悪人、支配する側とされる側といった具合に。
 例えば 上の写真を、ソニックマート[注1]劇場で行われている、”マナティ・リゾート・アイランド”[注2]という演目の1シーンだとするならば、すべての登場人物が舞台に勢揃いしたところだろう。 登場人物は、山や入り江とヴォードウォーク、入り江に浮かんでいるカラフルなボート群、街路樹や植栽、赤や緑の屋根のコテージ、コテージには暖炉が垣間見える、少し顔をのぞかせているホール、広場に置かれた白いパラソルや黄色いチェア、一寸目立つ青サインボードである。 それぞれのキャストが、役回りの違いを超えてお互いに同じ存在感という関係性を維持しながら、この風景を構成している。
 風景をつくる方法がランドスケープデザインである。日本語では「そのをつくる=園を造る=造園」という言葉が近い。我々が制作したシムでは、ランドスケープデザインの手法を応用した。その特徴は、シーン毎に主役と脇役が変わってくる、風景の多様性を実現していることだ。
 本ブログでは、マナティ・リゾート・アイランドの中から幾つかの風景を取り上げ、主役と脇役とが変わってゆく様相や関係性を中心に、ランドスケープデザイン手法やシム制作の考え方について、数回程度掲載してゆく。


1)ソニックマートは我々の制作場所であるシムの名称。
2) マナティ・リゾート・アイランドは、我々が制作したデザインのコンセプトテーマ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ sonicmart制作記1.

2007年08月17日 | Design&3DCG
今年5月から我々は、このHPでも紹介しているsonicmart[注1]というシムの制作をおこなってきた。そこでの経験を少し述べよう。
 当初、日頃から我々は3DCGを扱っているので、制作自体は難しいものではないと予想していた。だが最初にSLの3DCGソフトを立ち上げたとき、愕然とした。例えれば昔のStrata Studio以下の仕様だ!! こんなソフトで、実際に制作ができるのだろうか!? プリムサイズは最大10m迄、総プリム数は15,000以下、リンクヒエラルキー、ブーリアン減算、インポートやエクスポートはできない。さらに致命的なのは投影図としてのビューがないことだ。こうした制約の中で、手元のオブジェクトライブラリーなどを使わずに、SLのなかで全ての作業を完結させなければならないわけだ。恐ろしく制作効率が悪いことが予想された。
 実際の制作では、オブジェクト同士を正確に組み立てるには、数値制御しかない。建設モードのサイズと座標軸だけが頼りである。組み立てても、リンクヒエラルキーは、設定時のみ有効で、解除すると全てのオブジェクトリンクが解放されてしまう・・つまりバラバラ。またリンク可能なオブジェクト数にも制限があった。これは玩具だ!!。
 救われたのは、制作過程自体がレンダリングになっており、しかもフルタイム・レンダリングであることだ。さらに光や影という概念を排除してあるために、この部分の演算処理をしなくて済む。本来データ量の大きいはずの植物オブジェクトは、2プリム程度と処理しやすい。ただし見場を我慢すればだが。
 我々の制作方法が他のシムと異なる点は、可能な限りオブジェクトだけで環境を形成している点である(通例の3DCGではあたりまえだが)。 本来平滑な部材以外にはテクスチャーを用いていない。 典型的なのは建築ファサードの凹凸や開口部をオブジェクトだけで制作している。このあたりを他の多くのシムで多用されているテクスチャー処理方法とした場合、つまり写真を貼り付けるだけ(影がないから可能なのだが)といった2Dのロールプレイングゲームの手法を多用するとリアリティを損ない、3DCGであることの存在理由を失うのである。 このあたりに2D制作の余地を残しているところが、ゲーム屋発想なのだろうか・・。
 我々が採用した方法を用いれば、3DCGとしてのリアリティは形成できるが、当然プリム数も増えてくる。プリム総数には制限があり、今後このシムに滞在するアバターが制作したり持ち込んで配置されるオブジェクト容量を、予め確保しておかなければならない。そこで少ないプリム数で形成できる建築デザインが必要になってくる。上図の写真でコテージの屋根は1プリムといった具合に、プリム数で建築デザインが決まってくる。そうなれば、建築群によって形成されるシムの風景、ひいては全体環境やコンセプトも必然的に決まらざるを得ない。
 3DCGが本来目指してきたリアリズムを一端留保し(PCの性能が向上する時迄)、フルタイム・ウォークスルー・アニメーション・レンダリングを前提にして諸要素を構築し開発されてきた点が、SLオブジェクト・ソフトの優れた点である。 


注1.事業者は株式会社デジソニック(代表,明石康弘)。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

セカンドライフ制作記序

2007年08月16日 | Design&3DCG
 最近の話題、ソーシャルネットワーク(SNS)からはじめよう。7月21日我々の研究室では、このHPでも紹介しているSNSの1つセカンドライフ(以後SLと略す)上でオブジェクト・セミナーを行った。と書けば聞こえはいいが、我々チームはSL上に土地も建物も所有できない無料会員=バーチャル・ホームレスだ。先ず無料ニッサン車をゲットし、無法地帯のサンドボックス[注1]を利用して、ガレージ、椅子、コスチュームのT シャツなどを制作した。私も含めお互いが知り得たオペレーション情報の交換や、スキル向上が目的である。
 日頃我々が使用しているStudio MAX、Vueといった3DCGソフトと比較すれば、 SLが無償提供している3DCGソフトは、光も影もなく オブジェクト完成度は低い。だが完成度をあえて低く設定し、情報処理速度を速めるといった逆発想は、レンダリング能力を著しく向上させ、3DCG環境とアバターとを同時に扱うことができ、スムーズなフルタイム・ウォークスルー・アニメーション・レンダリングができる点は秀逸である。さらにスクリプト制作、チャット、IMといった動作やコミュニケーション機能を統合し、3DCG環境とシンクロさせている点は、他のSLSと比して群を抜いている。   
 であれば我々グループでシムを購入し、制作すれば、研究室や大学の活動自体をSL上で開催することができる。例えば、デザイン実習に於ける3DCGの使用場面では、シム上で制作指導が可能であり、他方受講生や教員は、大学に来なくても、或いは車椅子故にといった個別事情があって大学にこれなくても、そしてお互いが日本不在中であっても、インターネット接続環境があれば即座に授業は成立する。
 しかし問題は、その費用にある。シム購入費(サーバー購入代)1,675$=201,000円はよいとしても、年間サーバー管理料3,540$=約42.5万円は高い。こうした初期投資が回収できるビジネスモデルを構築しなけれはならない。例えば、SL内の貨幣価値ではすこぶる高い27,500L$=100円/1回のワンコインレクチャーを40人クラスで10回以上開催すれば、といったヒジネスモデルは思いつくが・・・、但し、シム制作をボランティアで行うというのが前提だ。SL上で開催されているオブジェクトやスクリプト・セミナーが大方無料という現況を考え合わせれば、果たしてそんなに集客できるコンテンツがあるのだろうか? 当面新規性をPR材料とし、企業イベントを誘致し、オブジェクト&スクリプト制作を請け負えば、収支は成立するが。要はビジネスモデル構築がシム所有の決め手だといえよう。
 それにしても、我々無料会員は、ホームレスのシミュレーションをさせられているようでもあり、ともすれば将来を暗示するかのように思われ、気分は複雑である。

注1.オブジェクト制作のために自由に使えるSL上の公共空間。

日本語SL参考書
○三淵啓自:セカンドライフの歩き方,ASCII,2007.4.
○マイケル・リマズイスキー他:セカンドライフ公式ガイド,インプレスR&D,2007.6. 
○セカンドライフの作り方,ASCII,2007.8.
○ウェプインパクト:リンデンスクリプト入門,インプレスR&D,2007.8.
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする