翠は、今日も日勤が続く。感染慣れというのか、機材も人々の心も余力が出てきたのだろうか。そんなわけで仕事上がりに化粧室に行くと、看護師の芽依さんが化粧に余念がなかった。
翠「デートだぁー」
芽依「あったりー・・・、これから札幌でお泊まりデート!!!」
翠「そりゃ、すぐにわかるよ!、相手はどんなん?」
芽依「50のオッサン。不倫なの!!」
翠「あらっ、オッサンに捕まっちゃったんだぁー」
芽依「だってねぇー、オッサンて口がうまいし、私騙されているなと思っていても、やっぱ乗せられちゃうのよね。それに後でわかるような気の使い方をされると、もうしびれちゃうよ。それにアレがすごく上手で・・・。もちろん私の元彼氏も何人かいたけど、感じる事なんか全然なかったもん。それに女も独身で30の声を聞くようになると、もっと熱烈な恋がしたいといって身体が言うことをきかなくなるのよ」
翠「熱烈な恋かぁー、つまり皮肉なことにオッサンと相性が良かったのよ!」
芽依「もちろん不倫が良いことではないと私も知ってるよ。これメール相談できた回答。『ちゃんと、堂々と街中を手をつないで歩いて、いっしょに買い物行ったり、映画に行ったり、海に行ったり。トモダチや親や会社の同僚や上司にも『私、彼氏できたんです♪』って言えちゃうくらいの、同世代の彼氏が欲しいですね』だって」
そういって芽依さんはスマホの画面を見せてくれた。
翠「これって、男の人の回答だよね。手を繋いで街を歩くカップルをみていると生活感が漂っていて疲れている気分だけどなぁー。それでも同世代の彼氏が良いわけだ・・・」
芽依「翠どう思う?」
翠「私って、初恋、初体験、初出産、それでいまは子供も所帯持ちだもん。私にはピンとこない回答だなぁー。30代になって生活で疲れた仮面夫婦が手を繋いでいても愉しいかなぁーだよ」
芽依さんはインナーを取り替えて・・・
芽依「今日は危ない日だからゴムゴムっと・・・」
翠「そうだ!、生理が超遅れていることにして子供を作っちゃえばいいよ!」
芽依「子供!!!、考えていなかった。不倫の掟サイトには書いてなかったもん」
翠「女が恋をしたいとか、セックスが感じるとかいうのは、・・・つまり子宮が子供を求めているのよ!!!。全てはそこが原因よ」
芽依「そっかあ・・・」
翠「大丈夫だよ。うちの産婦人科の狸爺なら知恵があるから『非嫡出子』ですかー、ハイハイと簡単に産ませてくれるよ」
芽依「隠し子ですかあー・・・」
翠「大きくなったらオッサンに認知してもらえばいいじゃん」
芽依「先に行って彼に騙されるぐらいなら、今私が騙しちゃおうかな!」
翠「だって子宮がうずいているんだもん。それって女の宿命よ。それを昔の男の人が恋愛という都合のよい言葉ですり替えただけ。狂おしい愛なんてつくられた架空の話。そうやって女を何百年も騙してきたんだもん。本当は子宮が子供を欲しがっているからなのよ。だから受精最適期じゃん。ゴムなんかつけたらもったいないよー・・」
芽依「そっかぁー・・・・」
そういって芽依さんはコンドームをゴミ箱に投げ捨てて、意気揚々とお泊まりデートに出かけていった。
・・・
小樽もオレンジ色の暗い夕焼けだ。もうじき雪が降るかなぁー・・・。