ジャンル 映画
タイトル 「明日に向かって笑え」
観覧日 2021年9月2日
タイトルを見て、これは見ないといけないと思った。アルゼンチン映画で、アルゼンチンの金融危機を背景に描いた、痛快な復讐劇。銀行家と悪徳弁護士に騙され、奪われた現金を、この金を独り占めした弁護士がつくった地下金庫から、出資した人たちが集まって取り返すという娯楽映画で、見終わってかなりすっきりする。いいなあと思うのは今どき珍しいぐらい、善意と正義がむき出しになっていること。そもそも奪われてしまった現金は、小さな町に農協をつくり、共同で雇用も促進して、生活も守っていこう理想をもって出資者を募ったもの。この夢を共に実現しようとした言いだしっペの奥さんが、交通事故で亡くなってしまうのだが、このおばちゃんの笑顔がとても素敵で、善人そのもの。騙した張本人の銀行家の死を願っていたのに、彼が奥さんと共にガス中毒で死んだことを知り、彼の死を祈ったことを恥じるところも素敵な人だなと思う。出資者たちがみんなポンコツばかりなのだが、理想になけなしのお金を出資した善人そろい、こんな人たちが力を合わせて、お金を盗むことになるのだが、これについて何の罪悪意識をもっておらず、むしろ正義であると見ているところを、きちんと見ているものを納得させようにしているのはたいしたものである。善と正義に基づいた行為なのである。中心となる知恵袋のタイヤ修理のおっさんが、バクーニン主義をぶちあげる。正義の裏付けにバクーニンがいるというのもいいなあと思った。さらに鉄壁の防犯システムをぶち破る方法を、亡くなった妻と一緒にみていた映画『おしゃれ泥棒』からヒントをもらうのも素敵だった。原題の意味は、「まぬけたちの一連の長い冒険 」、映画の中で何度か自分たちの行為を愚か者だといいつつ、だからこそ正しいのだと明確に主張している。この原題をこんな素敵な邦題にした日本の配給会社にも拍手を送りたい。