デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

ラングスドルフ日本紀行

2016-07-20 18:27:45 | 買った本・読んだ本
書名 「ラングスドルフ日本紀行 クルーゼンシュテルン世界周航・レザーノフ遣日使節随行記」
著者ゲオルク・ハインリヒ・フォン・ラングスドルフ 編訳 山本秀峰
出版社 露蘭堂  出版年 2016

待ちに待っていた本が翻訳されたということでちょっと興奮している。さっそく読んでみて、これはかなり重要な本になるので、再度精読しなくてはならないと思っている。本書は副題にもあるように1803年から06年までロシアが派遣した世界周航船ナジェージダ号に随行したドイツ人博物学者ラングスドルフが書き残した世界紀行の中から、日本滞在と蝦夷地・サハリンを経由してカムチャッカに戻るまでの部分を訳したものである。この世界周航が当時いかに注目されていたかは、この旅に参加した人たちが残した紀行文が多数出版されていることでわかる。訳者が序で書いているようにナジェージダ号の艦長クルーゼンシュテルンの紀行がすでに1931年に羽仁五郎の訳で日本でも出版されている。さらに日本と国交を結ぶために派遣されたレザーノフの滞在日記については拙訳で2000年に岩波文庫になっている。またこの旅には日本人5名(長崎に戻ったのは4名)参加している。1792年12月石巻を出帆して漂流、アリューシャン列島の小島に漂着した若宮丸の乗組員である。彼らはアリューシャンで、ロシア人たちによって保護され、シベリアに連れられたあと、帝都ペテルブルグで時の皇帝アレクサンドル一世(ナポレオンを破ったことでも知られる皇帝)に謁見、帰国を望んだ4名とロシア人に帰化し、通訳をすることになった1名が乗船していた。このうち帰国した乗組員たちもまた「環海異聞」という大槻玄沢が編纂した本の中で、この世界周航の旅について語っている。
ラングスドルフの本は、彼自身が描いたスケッチと共に、レザーノフやクルーゼンシュテルンについて書かれた本のなかで引用されたことが多いため、ずっと気になっていた。英語の訳書も購入していたのだが、読めずにいた。この本の重要な意義は、ひとつは彼が博物学者であるため未知の世界の自然、特に生物について貴重な記録を残したことがある。もう一点重要なことは長崎滞在の時に彼は日本側との通訳をしていたため、このまだ謎が多く残る日ロ交渉について、直接交渉の現場にいたことが大きい。本書はまさにその長崎での交渉に焦点をあてている。
いずれ精読したあとに詳しく論じたいと思っているが、この本を多くの方に読んでもらいたいということがあるので、本書の特徴、重要な部分を箇条書きにしてみる。
1 図版が豊富。ラングスドルフ自身が描いたスケッチの他に、クルーゼンシュタインの子孫にあたるアレクセイ・クルーゼンシュテルンが出した本「世界一周」に納められた多数の図版も掲載されたことによって、当時の長崎の様子がビジュアル面でも明らかにされている。
2 レザーノフの滞在日記を裏付けしている。通訳をしていたこともありレザーノフと日本(通詞たちを通じた)との交渉の現場の様子を詳細に伝えている。これは拙訳したレザーノフの日記で書かれてあることを裏付けている。
3 直接接していないにせよ近寄ってきた庶民たちの姿が書かれ、描いている。その中で通詞や役人以外の(好奇心旺盛な庶民の姿が明らかになった
4 太十郎の自殺についての日本側の対応のまずさを指摘。すぐに治療を許さなかったことを明らかにした
実はこれはまったく予想していなかったことなのだが、長崎をあとにしてからの蝦夷地の検分やサハリンでの報告が実に興味深いものだった。
5 蝦夷地で日本人と交流している
6 民族的見地からアイヌを描写しつつ、彼らが日本人たちによって抑圧されていることも指摘
7 露寇事件の張本人として悪人扱いされているフヴォストフとダビットフに対して高い評価を与えていること。しかもこのふたりがサンクトペテルブルグで亡くなったのは、ラングスドルフの家で食事したあとだったことも明らかにされた。
日ロ交流史を学ぶ人、関心がある人には必読の本である。
またレザーノフの「日本滞在日記」を読んだ人にも必読の本であるといえる。
専門書のような仕立てにはなっているが、読みやすく訳されているし、内容も当時の長崎やサハリンの様子を博物学者らしい目でとらえているので、時代背景がわからなくても楽しく読めるはずである。ぜひ多くの人に読んでもらいたい。こうした本こそ学術書を出す出版社が出すべきものだと思うが、おそらく採算がとれないということで見送られていたのだろう。それをこうして独力で出した訳者の熱情がなければ、知らないままで終わってしまった。あらためてその訳業に感謝したい。
http://www.ne.jp/asahi/books/rolando/Catalogue/J-32RK/WebLangsdorffNewPub.pdf#search='%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%82%B9%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%95%E6%97%A5%E6%9C%AC%E7%B4%80%E8%A1%8C'

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ほぼ出来上がる

2016-07-20 10:04:43 | デラシネ日誌
泉川のゴルフ場付近を気持ちよく走る。ここのあたりのコースも好きだ。
10時から通しリハ。パーチのあとの空中ロープのつなぎのところでもたもた、ナージャがぶちきれる。杖をついて前の方に行き、ダメだし。命にもかかわることなのでここは厳しく注意しないとということなのだろう。照明はほぼ完成。空中芸がとてもきれいに映えている。ナージャも照明については満足している。問題はあいつとあいつ・・・・
フィナーレが気持ち悪いんで直してもらう。
15時からリハ、ナージャが少し遅れて到着。オープニングが終わり、さあ美女マヒーラの登場。リングの命綱をつけようとしたらベルトない!あわてて舞台裏に走ってひっこむ。ナージャぶちきれ。でも舞台裏に真一文字に走るマヒーラ可愛かったなあ・・・またオープニングから。
できていなかった技もだいだいできるようになる。昨日に比べてハイワイヤーがすいすいという感じ。アンバールはシューズを古いのにしたので楽になったという。ハイワイヤーのシューズは大事。別に新しいのを履くことはない。
それにしても今回は女性陣が大活躍の構成になっている。女子力サーカスだ。もちろん男子の助けがあってのことなのだが。終わってみんなもうまくできたということで達成感があったと思う。ナージャも満足げ。あとはあの男だけである。
かかしで食事中に、ディミトリー逝去の知らせが入る。まだ80歳になっていないのではないか・・・早すぎるよ。あまりにも突然の知らせ・・・

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