デラシネ日誌

私の本業の仕事ぶりと、日々感じたことをデイリーで紹介します。
毎日に近いかたちで更新をしていくつもりです。

マダム貞奴

2008-01-25 16:02:40 | 買った本・読んだ本
書名 「マダム貞奴-世界に舞った芸者」
著者 レズリー・ダウナー 翻訳 木村英明 
出版社 集英社  出版年 2007年

何冊も出ている川上貞奴の評伝であるが、この書は日本人ではなく外国人の手になるものである。非常に読みごたえのあった評伝であった。なによりこの書の最大の特徴であり、いままでの評伝とは違うところにもなっているが、海外での評価を丹念に追いかけているところである。音二郎と貞奴の欧米での公演が受けたのは、ジャパニズムの流行、新興国日本への関心の高まりのなかで、たまたまであったというのが、従来の見方であったわけだが、この書は確かにエキゾチックな目で見られていたことは事実とはいえ、貞奴が役者として、また踊り手として、高い技術とそれを観客に伝えるものを確かにもっていたということを、執拗にさまざまな人が残した観覧記録、劇評を紹介しながら明らかにしていく。この中には、ジイド、クレー、イザドラ・ダンカンなどの一流の目利きたちの評も含まれている。こうした視点から、貞奴が確かにサラ・ベナールたち、当時のヨーロッパの一流女優に肩を並ばせることができる一流の女優であったことが浮かび上がる。その意味で著者の狙いは、見事にあたったと言える。
翻訳も非常に読みやすかった。ひとつだけないものねだりになるのかもしれないが、写真がもっとあるとよかった。何度も本書のなかで、○○の写真ではという表現が出てくるのだが、そこに写真が一緒に掲載されていると、さらに貞奴が欧米の観客を魅了したことをもっと知ることができたと思う。
満足度 ★★★

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