鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその860~わたしの博物誌

2014-02-05 12:36:28 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「わたしの博物誌」です。

串田孫一著「わたしの博物誌」が届きました。
串田の詩情溢れる名文に触れたくてちょっと無理をして注文した本です。
定価8500円(税込8925円)、古本ですが4000円もしました。

内容紹介を引用します。
=====
スズメ、セミ、レモン、ヒガンバナ…一緒に遊んでもらった動植物へのオマージュ。
伝説的連載の原寸オリジナル版、初めて刊行。
=====
人間の目と動植物の目で、それぞれを見つめ合った博物誌。
昭和30年代半ば「週刊朝日」に連載されたものを原寸復刻。
=====

ちなみに「わたしの博物誌」は2冊あり、違いは次の通り。
・昭和36年8月から昭和37年9月まで「週刊朝日」に連載され、伝説的連載といわれた。
・1963年2月に朝日新聞社が580円で発行した。
 単行本化にあたり、レイアウトが大幅に変わった上、挿絵が描き直されているそう。
 古本の市場では2000円ほどで売られている。
・1998年8月にみすず書房が8500円(税別)で発行した。
 こちらは「週刊朝日」連載時そのままに原寸復刻。
 発行の理由を、挿絵を担当した辻まことが没後人気が出たため、としたブログがあった。
 古本の市場では3000円~7000円で売られている。

「わたしの博物誌」は、なぜ「伝説的連載」といわれたのか?
それを知るためには連載当初の挿絵と併せて読むに限ると思い復刻版を選びました。
まだ届いたばかりで、連載第1回「スズメ」を試しに読んだだけですが、これは素晴らしい!
串田の家のまわりに暮らすスズメたちや木々の心を読み取りつつ、心の交流を綴るという串田らしい詩情あふれる文章が光ります。
これは「博物誌1956」「博物誌1957」「博物誌Ⅲ」という彼の代表的な3部作を超える作品かも、と感じました。
辻まことの挿絵も詩情豊か。
週刊誌に1年ほど連載したとのことですので、50~60話あるはず。
じっくり楽しみたいです。






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お気に入りその859~原色少年動物図鑑

2014-02-03 07:45:29 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、原色少年動物図鑑です。

内田清之助、岡田要共編「原色少年動物図鑑」(昭和28年、北隆館)について書きます。

これまで北隆館の原色少年図鑑シリーズは「原色少年昆虫図鑑」「原色少年植物図鑑」の2冊を読み、当ブログでご紹介しました。

「原色少年昆虫図鑑」は図版画家の技量にムラがあるのが難でしたが、昭和28年当時の不衛生な生活の中でノミ・シラミ・ハエ・カなどから子どもたちの身を守るためのアドバイスがたくさん解説されていました。

「原色少年植物図鑑」は91歳の牧野富太郎が子ども向けに柔らかく解説した文章が印象的でした。図版はすべて牧野の手によるもので素晴らしかったです。牧野は本書の発行により一般向け・学生向け・子ども向けの植物図鑑3部作が揃ったことに満足していたようでした。

上記2冊を読んだ後、「原色少年動物図鑑」の存在を知り、是非とも読みたいと思いました。
ところが現在、古本の市場に見当たらず、ネットオークションで出品されるのを待っていました。
それが先日ついに出品され、ようやく入手することができました。

どんな動物が掲載されているのか?
図版の出来栄えは鑑賞に堪えるものなのか?
早速パラパラとページをめくりました。

???

「動物図鑑」としてイメージしていたのはまず哺乳類、あとはせいぜい爬虫類・両生類くらいまで。
鳥類や魚貝類は別と考えていましたが掲載されています。
さらに昆虫や寄生虫まで!
特に昆虫は「原色少年昆虫図鑑」があるで重複しています。
出版社と著者の打ち合わせが悪かったのでしょうか?
とりあえず植物以外の生物全般の図鑑というコンセプトらしい・・・。

さて肝心の図版の出来栄えは?
哺乳類は一部パッとしない図版がありますが全体的にはそこそこの出来。
鳥類は輪郭線のあるものは美しく描かれているのですが、輪郭線のないものは何だかぼやけています。
60年の歳月により退色したのでしょうか?
魚貝類はすべて美しく描かれていました。
昆虫は細部まで細密に描かれていました。
全体的には満足できる出来のようです。
解説文を読みながらあらためて1枚1枚の図版を鑑賞することにします。

続いて序文を読みました。
「できるだけ生きたものに近い色を出すのに苦心した」
「これで学生版日本動物図鑑、日本動物図鑑とあわせて各層むけの図鑑が完成した」
「子どもたちに親しみを持ってもらいたい」

次のページに図版画家4人が紹介されています。

・獣類・鳥類    小林重三
・爬虫類・両生類  泉 清
・昆虫類      奥村定一
・魚類・その他   牧野四子吉

知った名前が2人いました。
小林重三は、日本の3大鳥類図鑑に図版を描いたことで有名な鳥類画家。
以前「鳥を描き続けた男~鳥類画家 小林重三」で紹介しました。
牧野四子吉は、図鑑や百科事典に生涯3万点もの図版を描いた生物画家。
この人も、以前「いきもの図鑑~牧野四子吉の世界」で紹介しました。
奥村定一の名は知りませんでしたが、日本のとんぼ学の先駆者だそうです。
泉清については資料が見つかりませんでしたが、他の画家に比べ見劣りしない図版を描いています。

これまで何度も書いていますが、鑑賞に足る美しい図版と詩情豊かな解説文を求めて古い図鑑を次々読んでいます。
本書がその要望に応えてくれることを願って読みましたが・・・。

結果的には求めている詩情豊かな解説文ではありませんでした。
あくまで実用的な解説に徹していました。
特に食糧事情がまだ改善さえれていない昭和28年発行ですから「食料になるか否か」「美味しいか否か」が頻繁に書かれています。
日本最大の猛獣ヒグマや天然記念物ニホンカモシカが「食料」と書かれていたのは驚きました。
他に目を引いた記述をいくつかご紹介します。

・キリン
 この動物の名称は「ジラフ」、「キリン」ともいうがそれは空想上の動物「麒麟」に似ているから、と書かれていました。
 当時の日本ではキリンのことはジラフと呼んでいたのでしょうか?
 何だかぴんときませんが・・・。

・シャチ
 この動物の名称は「サカマタ」、「シャチ」ともいう、と書かれていました。
 これも空想上の動物「鯱」に似ているからということでしょう。

・タンチョウヅル
 かつては全国的に生息していたが今は、道東に20~30羽残っているだけ、と書かれていました。
 現在では800羽に増加しています。
 食料不足の時代にツルの絶滅を心配した地元住民の努力は尊敬に値します。

サンコウチョウ
 「ツキ、ホシ、ヒ」と鳴くことから名づけられた。
 スズメくらいの大きさでオスの尾羽は体長の3倍もある美しい鳥。卵の色も美しい。
 オスメス交互に抱卵し、オスが長い尾羽をはみ出して抱卵する姿は美しい。
 というような解説文でした。
 全ての解説文の中で唯一、素敵な解説文でした。
 この鳥のことをもっと詳しく知りたくてネット検索で調べましたが、この解説以上に詳しくは判りませんでした。
 手元の他の図鑑で調べようと思います。


最後に。
今回のネットオークションでは本書の他にもう1冊、「全動物図鑑」(昭和26年発行)がオマケで付いてきました。
こちらの方には興味がありませんが、とりあえずどんな本か調べてみました。

「全動物図鑑」日本動物研究学会編、昭和26年、光和書房発行
地球上3000余種の動物を全て精緻な図版で、当時としては判りやすく解説した図鑑。

輪郭線のみの小さな図版にフリガナサイズの小さな文字の解説文。
これが3000以上並んでいるなんて・・・、とても読む気力が湧きません。
申し訳ありませんがお蔵入りです。


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