鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1561~苔の話2

2018-08-18 12:38:41 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、苔の話2です。

先日読んだ「苔の話」の著者・秋山弘之氏が現在も使っているという名著「原色日本蘚苔類図鑑」が届きました。
1972年発行の初版本ながらなかなかの美本です。
さらに予約販売用のパンフレット、著者と監修者3人の短文をまとめた「付録」、正誤表が揃っているのがうれしかったです。
保育社の原色図鑑は他にも何冊か持っていますが、本書はこれまでで一番分厚く重たいです。

「苔の話」に次のような文章がありました。
 ・図鑑は読むものではない。
 ・図鑑の解説文を読むと眠くなる。
 ・解説文は必要に応じて読むだけで良い。

同じ保育社の横山光夫著「原色日本蝶類図鑑」の解説文を愛してやまない私にとっては同意しかねるコメントですが、「原色日本蘚苔類図鑑」は秋山氏のいうような本なのでしょう。
パラパラ拾い読みしてみると、種の同定に役立つ情報が平坦に書かれており、読書には向かない本です。

ということで、平坦な解説文以外の部分について、いくつか書こうと思います。

①当時の図鑑製本は分業制

図鑑最終ページに発行日、著者名と並んで、製本にたずさわった会社が併記されていました。
 ・原色製版  新日本セイハン
 ・原色印刷  丸山印刷
 ・本文印刷  凸版印刷
 ・製本    平田印刷
当時は原色ページを製版する会社と印刷する会社が別々にあり、さらに本文(モノクロ図版を含む)を印刷する会社があり、最後にそれらをまとめて製本する会社があったことが判ります。
本書の発行年は札幌オリンピックのあった年ですから、すでにカラー印刷がちまたにあふれている時代でしたが、実はまだ特殊な機械と職人技が必要な時代ったということでしょうね。

②予約販売用パンフレット

本書の内容見本(原色図版、解説文)と概要が収録されています。
見本の原色図版は2ページ、それに見合った解説文が2ページが本書同等以上の印刷で収録されています。
「概要」は本書の前書きを判りやすくまとめたものです。
=====
蘚類約500種、苔類約300種の内、代表的なもの300種を選んで原色図版とし、植物体の全形と、種の特徴的部分を拡大図で示した。
総ページ450ページ。内、カラー図版48ページ
宮崎県日南の服部植物研究所は、わが国唯一のこけ専門研究機関。
同所の先生方が記載はもちろん図版まで自ら4年の歳月を費やしてつくられた本格的な図鑑。
日本産約1500種の内、日常目に触れる800種を選んだ。
=====

③付録

(監修 服部氏)蘚苔類の和名
 特に苔類の和名は「名は体を表」していない。
 それは実物を知らずに和名を付けたから。
  コクラマゴケモドキ ~ 大きくてがっちりした種
  アカウロコゴケ ~ 通常は緑色

(著者 岩月氏)蘚と苔~この区別し難いもの
 蘚類の研究者がサンプルを観察して苔類と判断し、苔類の研究者に同定を依頼したら蘚類であると戻ってきた。
 (サンプルの状態や採取時期、生育環境によって個体差が大きいようだ。)
 (本書発行年に著者は43歳。ということは39歳で図鑑編纂に着手したということ。若い!)

(著者 水谷氏)苔類の原色図について
 苔類の原色図が多少模式図的になっていることについて。
 立体的に葉が付いているため、全部にピントを合わすことができない。
 顕微鏡のピントを上げ下げして輪郭を描く。
 水彩で色を付けるが、下からの透過光線のため影がない。
 立体に見えるようわざと影をつける。
 色も透過光と実物では違うため微調整する。
 スタイルよく、ハナラビよく、ハナもミもそろってピチピチしたイキのいいモデルというのはコケでもなかなかいないものだということがわかった。
 (水谷氏は岩月氏より1歳若い。38歳で図鑑編纂に着手した。)

④蘚類と苔類の違い

本書だけでなくいろいろな本を読んでもなかなか理解できなかったので、ネットで調べました。
 ・蘚苔類は蘚類、苔類、ツノゴケ類がある
 ・蘚類 ~ 代表例 スギゴケ
   すべて茎と葉が区別できる茎葉体
   胞子を作る朔の柄が固くて丈夫
   胞子体の上に帽子をかぶっている(古くなると取れるので注意)
 ・苔類 ~ 代表例 ゼニゴケ
   茎と葉の区別がつかない葉状体の種と茎葉体の種がある
   朔の柄がほとんど見えないか、あっても柔らか
 ・ツノゴケ類 ~ 略
   「原色日本蘚苔類図鑑」では原色図を1種だけ掲載している
   葉状体からツノ状の胞子体?が立ち上がっているように見えるが、この見立てが正しいかは不明。 

コケを観察して遊ぼう、と思って何冊か読みましたが、なかなか奥が深い世界であることが判りました。
写真と原色図の図鑑が揃いました。
身近なコケを再度観察しようと思います。
身を寄せあって生えているコケは、そのまま肉眼やルーペで観察するだけでなく、採取して1本だけに切り分けて観察することが同定への近道のようです。
これでコケの観察が楽しみになる日はずいぶんと近づいたように感じます。

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