
今回のお気に入りは、ワイエスです。
今年原田マハの「モダン」を読んだことで、これまで関心がなかったモダンアートに興味を持つようになりました。
その後はニューヨーク近代美術館(MoMA)展図録を鑑賞したり、「美の巨人」の影響でホッパーの図録を鑑賞したりしていました。
今回は「モダン」に登場して強く興味を持った「クリスチーナの世界」を描いた画家の図録を鑑賞しました。
本書は1995年に愛知県美術館などで開催された「アンドリュー・ワイエス展」の図録です。
副題は「アンドリュー・ワイエスの魔力、神秘、そして真実」。
20年以上前の図録ですが、折れや傷、焼けがなくとてもきれいです。
思っていたより分厚くて、すべての作品がカラーで掲載されています。
なにより驚いたのは作品ひとつひとつに画家のコメントが添えられていること。
こんな贅沢な図録は初めてです。
正にお宝、掘り出し物です!
例えば表紙にもなっている「遠雷」を描いた背景について、画家は次のようにコメントしています。
=====
妻がブッラクベリーを摘んでいる姿を描こうと思って何枚もスケッチしたが、どこの誰でも良いような構図にしかならず困っていた。
気が付くと妻は草原に寝そべり、気持ちよさそうに眠っていた。
横にはブラックベリーがいっぱい入ったかごが置いてある。
遠くの雷鳴が聞こえた。
少し離れた草の中で休んでいた犬が顔を上げ、耳を澄ませた。
妻の顔の上の帽子は、バランスを考え描き足した。
=====
一枚の絵を鑑賞しただけでは読み取れない画家の構想や制作過程が見えてきて実に興味深いです。
こんなコメントが142作品分も読めるなんて贅沢すぎです。
ただまるで新発見のように書いていますが、20年以上も前の図録のことですから、美術好きの間では周知の事実だと思います。
もし他にもこんな贅沢な図録があることをご存知の方は、ぜひお教えください。
楽しみを広げるため、よろしくお願いいたします。
他にも作品についてのコメントが印象的だったものをいくつかご紹介します。
「マカの娘」 ~ 妻ベッツィを描いている。
「クエーカー教徒の帽子と涙のように素晴らしいリボン、そして上気した頬」というコメント。
「涙のように」という表現にしびれます。
「ブラックベリーの小枝」 ~ 見事な細密技法ほれぼれ
「乙女」 ~ シリ15歳
「奴隷収容所」 ~ 黒人女性
「そよ風」 ~ シリ
「膝をついて」 ~ ヘルガ
この4作品はすべて女性のヌードを描いている。
「画家が疲れても叱咤激励するくらい熱心なモデルでないと描き続ける意欲が湧かない」
というコメントがあり、ヘルガが長年にわたりモデルをつとめた理由を明快に述べている。
「ローデンコート」 ~ 雪道を歩くヘルガの後ろ姿
全身に力を込めて歩く姿に、画家を叱咤激励するモデルを感じる。
「エリクソン家」 ~ シリの父とストーブが見事な細密描写で描かれている
本当はシリと父をモデルにする約束だったがシリが出かけてしまったそう。
ヘルガとの違いが決定的になった作品ともいえる。
「鯨のあばら骨」 ~ 白い波頭と鯨の骨がとても印象的
本当は「家と風景」だけを描いた作品がとても多かったのですが、そういう古き良きアメリカの田舎風景に対して全く郷愁がわかなかったので何の感想もありません。
ワイエスはアメリカン・リアリズム絵画を代表する作家としてアメリカと日本で高く評価されていますが、ヨーロッパでは展覧会さえ開催されたことがないそう。
このように評価が真っ二つに分かれることこそ、モダンアートの証かもしれません。
ちなみに図録の最後のページに「おわび」と題された紙片が挟まっていました。
そこには「この度の阪神大震災の影響で兵庫県立美術館での開催は中止しました」と書かれていました。
そうですか、1995年ってあの年だったのですね。
神戸の街が燃えて6000人を超える方が亡くなった大震災。
今月6日に私も札幌で大きな地震と40時間の停電を経験しましたが、比較にならないくらい軽く済んだことは幸運でした。
本書とは、このタイミングで23年の時を超え「地震」というキーワードでつながりました。
偶然とはいえ不思議です。
今年原田マハの「モダン」を読んだことで、これまで関心がなかったモダンアートに興味を持つようになりました。
その後はニューヨーク近代美術館(MoMA)展図録を鑑賞したり、「美の巨人」の影響でホッパーの図録を鑑賞したりしていました。
今回は「モダン」に登場して強く興味を持った「クリスチーナの世界」を描いた画家の図録を鑑賞しました。
本書は1995年に愛知県美術館などで開催された「アンドリュー・ワイエス展」の図録です。
副題は「アンドリュー・ワイエスの魔力、神秘、そして真実」。
20年以上前の図録ですが、折れや傷、焼けがなくとてもきれいです。
思っていたより分厚くて、すべての作品がカラーで掲載されています。
なにより驚いたのは作品ひとつひとつに画家のコメントが添えられていること。
こんな贅沢な図録は初めてです。
正にお宝、掘り出し物です!
例えば表紙にもなっている「遠雷」を描いた背景について、画家は次のようにコメントしています。
=====
妻がブッラクベリーを摘んでいる姿を描こうと思って何枚もスケッチしたが、どこの誰でも良いような構図にしかならず困っていた。
気が付くと妻は草原に寝そべり、気持ちよさそうに眠っていた。
横にはブラックベリーがいっぱい入ったかごが置いてある。
遠くの雷鳴が聞こえた。
少し離れた草の中で休んでいた犬が顔を上げ、耳を澄ませた。
妻の顔の上の帽子は、バランスを考え描き足した。
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一枚の絵を鑑賞しただけでは読み取れない画家の構想や制作過程が見えてきて実に興味深いです。
こんなコメントが142作品分も読めるなんて贅沢すぎです。
ただまるで新発見のように書いていますが、20年以上も前の図録のことですから、美術好きの間では周知の事実だと思います。
もし他にもこんな贅沢な図録があることをご存知の方は、ぜひお教えください。
楽しみを広げるため、よろしくお願いいたします。
他にも作品についてのコメントが印象的だったものをいくつかご紹介します。
「マカの娘」 ~ 妻ベッツィを描いている。
「クエーカー教徒の帽子と涙のように素晴らしいリボン、そして上気した頬」というコメント。
「涙のように」という表現にしびれます。
「ブラックベリーの小枝」 ~ 見事な細密技法ほれぼれ
「乙女」 ~ シリ15歳
「奴隷収容所」 ~ 黒人女性
「そよ風」 ~ シリ
「膝をついて」 ~ ヘルガ
この4作品はすべて女性のヌードを描いている。
「画家が疲れても叱咤激励するくらい熱心なモデルでないと描き続ける意欲が湧かない」
というコメントがあり、ヘルガが長年にわたりモデルをつとめた理由を明快に述べている。
「ローデンコート」 ~ 雪道を歩くヘルガの後ろ姿
全身に力を込めて歩く姿に、画家を叱咤激励するモデルを感じる。
「エリクソン家」 ~ シリの父とストーブが見事な細密描写で描かれている
本当はシリと父をモデルにする約束だったがシリが出かけてしまったそう。
ヘルガとの違いが決定的になった作品ともいえる。
「鯨のあばら骨」 ~ 白い波頭と鯨の骨がとても印象的
本当は「家と風景」だけを描いた作品がとても多かったのですが、そういう古き良きアメリカの田舎風景に対して全く郷愁がわかなかったので何の感想もありません。
ワイエスはアメリカン・リアリズム絵画を代表する作家としてアメリカと日本で高く評価されていますが、ヨーロッパでは展覧会さえ開催されたことがないそう。
このように評価が真っ二つに分かれることこそ、モダンアートの証かもしれません。
ちなみに図録の最後のページに「おわび」と題された紙片が挟まっていました。
そこには「この度の阪神大震災の影響で兵庫県立美術館での開催は中止しました」と書かれていました。
そうですか、1995年ってあの年だったのですね。
神戸の街が燃えて6000人を超える方が亡くなった大震災。
今月6日に私も札幌で大きな地震と40時間の停電を経験しましたが、比較にならないくらい軽く済んだことは幸運でした。
本書とは、このタイミングで23年の時を超え「地震」というキーワードでつながりました。
偶然とはいえ不思議です。
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