
(原題:Changing Lanes)2002年作品。マンハッタンの路上で出廷するために車を飛ばしていた若手弁護士と、子供の親権をめぐる裁判に遅れないよう、急いで車を走らせていた男とが接触事故を起こす。一方的に走り去ってしまった弁護士は、大事な資料が入ったファイルを落としてしまったことに気付く。このファイルを拾ったのはくだんの男であった。やがて二人の私怨を孕んだ駆け引きが始まる。
高速道路で接触事故を起こした二人の男が互いの人生を大きく変えてゆくというネタ自体はユニークだが、さほど秀逸なものではない。それがけっこう見応えのある映画に仕上がったのは演出とキャストの頑張りゆえだろう。
監督のロジャー・ミッチェルは「ノッティング・ヒルの恋人」ぐらいしか思い出さないが、ここではシャープでキレのいい画面展開を見せる。接写や移動撮影の多用も、平板な素材を正攻法で見せる意味でのケレンとして納得できよう。
主演のベン・アフレックとサミュエル・L・ジャクソンは好調で、せっぱ詰まった人間の浅ましさを上手く表現している。通常、不正の片棒を担ぐ弁護士のアフレックの方が一般庶民であるジャクソンより悪役に扱われるものだが、ここではジャクソンの小市民ぶりも容赦なく描かれている。ここは作者のバランス感覚だと思うし、だからこそラストの和解も絵空事にならない。
トニ・コレット、シドニー・ポラック、ウィリアム・ハートなど脇役の面子にも手抜かりがなく、味のある佳作と言えそうだ。デイヴィッド・アーノルドによるキレの良い音楽も効果的である。