元・副会長のCinema Days

映画の感想文を中心に、好き勝手なことを語っていきます。

「ヌードの夜」

2009-06-02 06:30:45 | 映画の感想(な行)
 93年作品。元エリート証券マンで、今は街の“何でも代行屋”にまで落ちぶれた村木(竹中直人)は、ある日地方から出てきたという女・名美(余貴美子)から東京見物のエスコートを依頼される。最初は気が乗らなかった村木だが、ちょっとした美人の名美と一緒にいるうち、まんざらでもない気になってくる。しかしその晩突然キャンセルされ、翌日荷物を取りにホテルの彼女の部屋に入ると、浴室には男の死体が。ヤクザ(根津甚八)にゆすられていた名美は、ヤクザを殺し、死体の始末を村木に押しつけて失踪したのである。必死になって名美を探す村木だが、殺されたヤクザの弟分の執拗な追跡が始まる。

 劇画家・脚本家としても知られる石井隆の、これが監督4作目だ。公開当時は評論家筋に高い評価を受けていた映画だが、ハッキリ言って少しも面白くない。まず暗い。とことん暗い。意味もなく暗い。こんな鬱陶しくなるような映画撮って何が楽しいのかと思う。

 別にすべての映画が明るくなくてはいけないとは思わないが、観客を無視したような暗さのための暗さみたいな、自己矛盾に限りなく落ち込んでいく一人よがりの暗さにはウンザリである。第一、ヒロインのキャラクターがいけない。あんな主体性がなくて受け身でメソメソして挙げ句の果ては殺人を犯すような女を思い入れたっぷりに描くこと自体、信じられない(大っ嫌いだ。こんな女)。

 技巧的にも見るべきものはない。シャワー室での殺人シーンは石井の前作「死んでもいい」の二番煎じである。ラストの死んだ者の魂が疾走する場面は監督デビュー作「天使のはらわた/赤い眩暈」の二次使用である。拳銃が頭にめりこむ幻覚シーンはテイヴィッド・クローネンバーグ監督の「ヴィデオドローム」のモノマネである。極端な長回しはストーリーをわからなくするだけで、ちっとも効果が上がらない。

 本来なら途中退場するタイプの映画だが、なぜかキネマ旬報のベストテンに入っているせいで、最後まで観てしまった。どうして評論家はこういう映画を褒めるのだろう。当時の彼らの文章を読んでも意味不明の単語が並んでいただけという記憶がある。肝心の“どこが面白いのか”が書かれていない。こうした一般ピープルと嗜好のかけ離れた連中が映画ジャーナリズムの一翼を担ってんだから、邦画を取り巻く状況は明るいものではない。

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