元・副会長のCinema Days

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「コヴェナント 約束の救出」

2024-03-30 06:09:08 | 映画の感想(か行)
 (原題:GUY RITCHIE'S THE COVENANT)この映画がガイ・リッチー監督の手によるものだとは、にわかに信じがたかった。何しろ彼の身上はひたすらライトでアーバンでスマートに作品を仕立てることであり、結果的に出来不出来はあるにせよスタイルは一貫していたと思う。ところが本作はヘヴィで骨太なタッチで押しまくる戦場アクションなのだ。つまり、いつもの彼とは正反対のスタンスである。どういう事情があったのかは知らないが、芸の幅を広げたという意味でも評価に値する。

 アフガニスタン紛争真っ只中の2018年。米軍曹長ジョン・キンリーは、タリバンの武器弾薬の秘匿拠点を潰す任務に就いていた。彼をサポートするのは、優秀なアフガン人通訳アーメッドだ。あるときキンリーの部隊はタリバンの爆発物製造工場を突き止めるが、敵の逆襲に遭い、彼とアーメッドを除いて全滅してしまう。キンリーは瀕死の重傷を負っていたが、アーメッドに助けられ長い距離を移動して九死に一生を得る。無事に本国に帰還したキンリーだが、その後彼はアーメッドがタリバンに追われて絶体絶命の危機にあることを知り、彼を救うため身分を隠して再びアフガニスタンへ向かう。



 本作の雰囲気は西部劇に近いだろう。主人公は悪者どもに囲まれた中、必死の脱出を図る。一度は窮地を脱したかに見えたが、ピンチに陥った相棒を救うため再び戦いに身を投じる。そのプロセスと、ラストの戦いのシークエンスなど、無双なヒーローと駆けつける騎兵隊との構図に通じるものがある。ただし、この映画は純然たる娯楽作ではなく、戦争のリアルを追求する社会派ドラマでもあるのだ。

 リッチー監督が斯様な内容の映画を撮った本当の理由は分からないが、いつもの作風とは一線を画するスタイルに踏み切るだけの題材の重大さに惹かれたと理解したい。作劇はタイトでアクション場面はキレがある。サスペンスの醸成も万全だ。さらに観る者を慄然とさせるのは、ラストで示されるアフガン紛争で米軍に協力した現地人の多くが犠牲になったという事実である。キンリーとアーメッドのケースは、極めて幸運なものだったのだ。アフガンに米国が介入したこと自体の正当性まで問うており、これはかなり真摯なメッセージである。

 キンリー役のジェイク・ギレンホールは好演で、軍人としての苦悩を上手く醸し出していた。アーメッドに扮するダール・サリムのパフォーマンスも万全で、これを機に仕事が増えるかもしれない。エミリー・ビーチャムにジョニー・リー・ミラー、アレクサンダー・ルドウィグ、ボビー・スコフィールドといった他の面子も言うことなし。エド・ワイルドの撮影とクリス・ベンステッドの音楽も場を盛り上げる。

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