(原題:FIREBRAND )正直、映画としてはあまり面白くはない。だが、取り上げた題材とキャストの奮闘、そして時代劇に相応しいエクステリアの創出はチェックする価値はある。観て損は無いレベルには仕上げられていると思う。2023年の第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門出品作だ。
16世紀前半の英国は、テューダー朝のヘンリー8世が統治していた。彼はこれまで5度の結婚を経験しているが、その5人の妻は処刑や追放などで不幸な末路をたどっていた。1543年に彼が6番目の妻として迎えたのが、イングランド北西端のカンブリア出身のキャサリン・パーだ。知的で面倒見の良い彼女は王の信頼を得ていたが、実は英国教会を設立したヘンリーとは異なる宗教観を持っていた。やがてキャサリンが異端者であるという報告が王の耳にも入り、彼女は窮地に追いやられる。

ヘンリー8世の妻を扱った映画は過去に何本か撮られていたが、最後の王妃であるキャサリンを主人公にした作品は、たぶんこれが初めてだ。宗教ネタを軸にしたエピソード自体は興味深いものがあるが、本作では効果的に描かれてはいない。単に史実を並べるだけで、各セクトの首魁は誰でどういう手管を繰り出してくるのかという、ドラマとしての動きが少ない。
また、キャサリンが結婚前に付き合っていた、トマス・シーモア男爵についての言及も無い。主に扱われるのが、中年になって著しく肥満し、さらに馬上槍試合で負った古傷の後遺症にも苦しむヘンリーの世話をするヒロインの姿だ。まあ、それは事実なのだが、大して盛り上がるようなネタでもない。カリン・アイヌーズの演出は平板で、メリハリを付けた作劇は最後まで見られなかった。
とはいえ、主演のアリシア・ヴィキャンデルと王に扮したジュード・ロウのパフォーマンスは見事だ。ノーブルで蠱惑的なヴィキャンデルも良いのだが、J・ロウの(かつての彼とは似ても似つかない)醜く太って扱いきれなくなったヘンリーの造型には驚かされた。この役者の引き出しの多さには感心する。エディ・マーサンやサム・ライリー、サイモン・ラッセル・ビールといった脇の面子も良好だ。また、エレーヌ・ルバールのカメラによる奥深い映像と、よく考えられた衣装や美術は見応えがある。
16世紀前半の英国は、テューダー朝のヘンリー8世が統治していた。彼はこれまで5度の結婚を経験しているが、その5人の妻は処刑や追放などで不幸な末路をたどっていた。1543年に彼が6番目の妻として迎えたのが、イングランド北西端のカンブリア出身のキャサリン・パーだ。知的で面倒見の良い彼女は王の信頼を得ていたが、実は英国教会を設立したヘンリーとは異なる宗教観を持っていた。やがてキャサリンが異端者であるという報告が王の耳にも入り、彼女は窮地に追いやられる。

ヘンリー8世の妻を扱った映画は過去に何本か撮られていたが、最後の王妃であるキャサリンを主人公にした作品は、たぶんこれが初めてだ。宗教ネタを軸にしたエピソード自体は興味深いものがあるが、本作では効果的に描かれてはいない。単に史実を並べるだけで、各セクトの首魁は誰でどういう手管を繰り出してくるのかという、ドラマとしての動きが少ない。
また、キャサリンが結婚前に付き合っていた、トマス・シーモア男爵についての言及も無い。主に扱われるのが、中年になって著しく肥満し、さらに馬上槍試合で負った古傷の後遺症にも苦しむヘンリーの世話をするヒロインの姿だ。まあ、それは事実なのだが、大して盛り上がるようなネタでもない。カリン・アイヌーズの演出は平板で、メリハリを付けた作劇は最後まで見られなかった。
とはいえ、主演のアリシア・ヴィキャンデルと王に扮したジュード・ロウのパフォーマンスは見事だ。ノーブルで蠱惑的なヴィキャンデルも良いのだが、J・ロウの(かつての彼とは似ても似つかない)醜く太って扱いきれなくなったヘンリーの造型には驚かされた。この役者の引き出しの多さには感心する。エディ・マーサンやサム・ライリー、サイモン・ラッセル・ビールといった脇の面子も良好だ。また、エレーヌ・ルバールのカメラによる奥深い映像と、よく考えられた衣装や美術は見応えがある。