
(原題:K-19 THE WIDOWMAKER )2002年作品。1961年に起こった旧ソ連時代の潜水艦事故の実話をハリウッドで映画化するとは、今更ながら冷戦時代は過去のものになったとの感慨を新たにする。ただし、内容自体は大したものではない。
そもそも艦長役のハリソン・フォードと副艦長のリーアム・ニーソンの役柄が反対だ。高圧的なエリート軍人ならばニーソンだろうし、人情派の上官ならフォードであろう。しかも、終盤になると両者の差異がハッキリしなくなる。他のキャラクターについても描写は通り一遍であり、誰一人として感情移入したくなるような登場人物がいない。
キャスリン・ビグローの演出はやたら大仰で深刻ぶってはいるが、肝心の“なぜ事故は起こったのか”についてほとんど描かれず、従ってサスペンスが全然盛り上がらない。もっと理詰めにプロットを運ばないと物語自体が絵空事になってしまう。
もしもこれが“実録もの”と銘打っていなければ、脚本の不備で企画段階からボツになっていただろう。セットも立派なのに、もったいない話である。良かったのはクラウス・バデルトの音楽ぐらいだ。