元・副会長のCinema Days

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「ディス・イズ・マイ・ライフ」

2017-03-17 06:25:22 | 映画の感想(た行)
 (原題:THIS IS MY LIFE )92年作品。いろんなトラブルはあったけど信じ会える家族こそ何よりも掛け替えのないものだ・・・・というこの映画の主題に文句はなく、ハートウォーミングな良心作という評価もあるだろう。しかし、冷血漢(苦笑 ^^;)の私にとっては物足りない。この程度では“笑って楽しむ”ことはできても、観たあとすぐに忘れてしまうだろう。

 デパートの化粧品売り場で得意の話術を発揮し、多くの顧客を獲得する主人公ドティは離婚後、娘2人を女手ひとつで育てている。彼女の夢は漫談家として舞台に立つことで、娘たちもそれを応援しているが、別れた夫はドティの才能を理解してくれなかった。そして、チャンスがめぐってくる。エージェントにスカウトされたドティは、トーク・ショーとTV出演でめきめき頭角をあらわし始めたのだ。



 しかし、そうなると寂しくなるのは娘たち。特に長女のエリカは家庭をかえりみない母親からどんどん遠ざかっていくようになる。「恋人たちの予感」(89年)の脚本を執筆し、メリル・ストリープ主演の「心みだれて」の原作者でもあるノーラ・エフロンの初監督作品で、メグ・ウォリッツァーのベストセラー小説を脚色、カーリー・サイモンが音楽と主題歌を担当している。

 出演者が芸達者揃い。主演のジュリー・キャヴナーは「レナードの朝」(90年)などの名脇役だが、ここでは彼女の持つコメディエンヌとしての才能が大いに発揮されている。サマンサ・マシス扮するヒネたようで実は純情な長女は実に印象的だし、エージェント役のダン・エイクロイドはいつもの個人芸で大いに笑わせてくれる。

 しかし、善良な人々の予定調和的ドラマはしょせん絵空事。現実はそんなに甘いものではない。映画では別れた夫は冷淡で皮肉っぽい人物として、つまり悪者として描かれるが、ヒロインの方にも責任はあったに違いなく(だいたい少しばかり話術に長けているぐらいで芸能界にデビューできるわけがなく、こんな夢ばかり追っている妻を持った男の苦悩は察するに余りある)、そのへんをシビアーに突っ込まないと、真の観客の共感は得られないと思う。

 どうしても“良心作”のまま押し通すならば、ウソをウソとして納得させるだけのパワフルな演出力がもっと必要だが、監督第一作目のエフロン監督の力量ではあまり期待できない。結果として中途半端な印象の作品になったことは否めない。

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